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今朝は昨日の曇天とは打って変わって晴天が広がった、なんて新聞の小さな天気予報欄みたいなことを言っても誰も何も反応しないだろうし、街中でこんな言葉を叫んだら誰しもが僕を敵だと思い、警察に引き渡すか、近くの病院を紹介するか何かしらの行動は起こす。
圭吾は、僕の言葉を聞くと、クスリとも笑わず再び車窓を見やった。結露がかかっていたのできゅっきゅとこすった。小気味いい音が響く。
二人とも自分の車を持てるほどお金に余裕がないし、いざとなったら、毎朝5キロのランニングをしているから、移動手段に困ることはなかった。だから、自分の車を持とうとも思っていなかった。
それでも、頼人や自分たちの家から十五キロも離れた山に向かうのには、さすがにバスという文明の利器に頼らざるを得ない状況だった。
近くのバス停までを家で歩き、そこからのおよそ十二キロをバスを乗り継いで向かった。八時四十五分に、家の近くのカフェに着いた。待ち合わせ場所だった。
そこで僕はココアを、圭吾は微糖のアイスコーヒーを頼んだ。
九時にはカフェを出て、小走りでバス停まで向かった。おそらく、僕たちは9時22分発のバスを待つ余裕さえあった。
十時三分に有沢公園前で降りて近くの小学校まで歩き、十時二十四分発のバスに乗って、下台の市役所と駅との無料のシャトルバスに乗った。
そしてこの辺りでは乗り入れるバスの多い、いわばターミナルバス停である駅(ちょっと有名)でタクシーを呼び止め、二千円のところで降りた。
山の近くまで着いていたが、上り坂までタクシーで登ることはできなかった。少し混んでいたのを、なぜだろうと不思議に思っているうちに答えにたどり着いた。
護衛で忘れていただけで、今日は祝日だった。
印は、登山客の足跡で今にもかき消されそうになっていた。結構深いところに埋めたので、スコップで掘り返すのがまた一苦労かと思われたが、頼人の護衛中、小雨が降っていたらしく土は固くはなかった。
そして、死体の首筋の部分にあたったとき、青い着慣れたズボンに隠された、お尻が震えた。
スマホが、振動した。
「なんだろ?」
確認してみると、頼人からのこの一言。
『奴らまだあきらめてないです。というわけで今日も護衛よろしくお願いします』
また、あの地獄のような日々が始まる――。
うつむいてはいたが、自然とタフな笑みがこぼれていた。




