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このエピソードは序章の完結編です。
ラーメン屋のあつい雰囲気に似合わず、ドアを開けると純喫茶のような風鈴の音が鼓膜に響いた。新客さんはいちいちその音に反応しているようだが、常連らしき客はその音は気にせずひたすらラーメンをすすっていた。というか風鈴の音がラーメンのすする音に負けている、ということだけなのだろうか。
ドアを開けると中央にカウンター席があるその店の、中央は空いていた。その1つ右側の席に頼人の姿があった。
「やあ、頼人」圭吾はなれなれしく頼人に挨拶した。頼人はういっす、と頭を下げた。僕はどう挨拶すればよいのかわからず、もたもたしていた。
僕の代わりに圭吾が、ちゃっかり頼人の右側の席に座りながら、あごで僕のほうをしゃくり、「噂の卓也だ」とだけいった。
「タクヤ? どんな字書くんすか?」頼人は不思議そうな顔をして僕を見つめる。頼人は、僕より少し高いくらいのやせ細った男だった。
そんなこと気にすんな、一転、冷酷な声で圭吾は吐き捨てた。しかし直後、やはり頼人はかわいいなあ、という風に目を細めた。
店長が不思議そうな顔をして頼人と怪しき二人組を見つめていたので、僕は圭吾の右側に座って、店長に「塩ラーメンをニンニクマシマシ!」とだけ叫んだ。
「あいよおお!」年配の店長の気迫のこもった声で叫ばれると、実家のような安心感を体に覚えた。
僕はカウンター席の楕円形の椅子から危うく転げ落ちかけるところだった。横着して座った状態で僕に敷かれているスマホをズボンの後ろのポケットから取り出そうとして、手を前に倒し、自分で自分を倒しかけたのである。
(こんなよわっちい男でどうすんだ)
と自分を叱り、僕はひっそり泣きながらスマホをいじりだした。SNSを開くと1件の投稿がちょうど新着に流れてきたところだった。
そのあまりに予想外の投稿内容に、僕は圭吾の右肩をたたいた。




