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59話 お祭りは全力で

こんにちこんばんは。

棒倒しを書こうとしていまいちよく知らないことに気づいた仁科紫です。


それでは、良き暇つぶしを。

 午前の部の点数発表も終わったところで午後の部が始まった。今回参加するのは神様であり、既に会場へと転移している。



『午後の部、第1競技は棒倒しです!』


『初っ端からかなりハードな競技だね。毎回退場者が続出することでも有名かな。』


『見ていてハラハラするレベルですからね。今回はどうなるのか!楽しみですね!』



 ワクワクと目を輝かせるラパンさんの様子からして見ていて楽しい競技なのだろう。昼休憩を挟んで冷めた観客の熱が再び点火したかのように歓声が沸き起こる。



「そう言えば、棒倒しって昔はメジャーな運動会の競技なんでしたっけ?」


「そうだね。最近は随分と珍しくなって来ているけど。」



 何故だろうかと首を傾げると、危ないからだと返ってきた言葉にますます分からなくなった。

 しかし、競技が始まって直ぐに理解する。確かに、これは危険だ。寧ろ、何故現実で競技の一つとされていたのかを聞きたくなるほどに。



『おおっと!?ルアン選手の風魔法が赤組の棒に直撃!大きく揺れますが、それをお鮭だよ選手が土魔法によって固定!カバーして事なきを得ました!』


『最早敵も味方も関係ない押し合いに魔法の投げ合い。いっそ清々しいほどに混沌としているね。』



 デュランさんの言葉も尤もな程に傍から見ても混沌としていた。

 二本の棒に群がる人々や離れたところから魔法を投げまくる人々。赤も白も関係ないように見えるほどにはごちゃ混ぜになっている。はっきり言って敵か味方か分かっている人が居るのかも怪しいと思った。



「えっと、これが第1回戦なんでしたっけ?」


「うん。この競技も3回戦あるからね。」


「そう言えば、何故か800位から上と下で分けられていますよね。数からすると微妙だと思うんですが、どうしてでしょう?」



 常々思っていたことを口に出す。普通、1000人を3回に分ければ300人ほどを1回の人数にすれば良いはずなのに、何故かわざわざランキング外とランキング内を分けて行われるのだ。

 やはり割り振られるというポイントが原因なのだろうが、それにしたって不思議な感覚だと思った。



「結局、この体育祭は神様ランキングのランキングを決めるイベントだっていうのと、その強さを見せつける意味もあるんだよ。」


「強さを……ですか?」


「そうそう。上位になればなるほどおかしな結末を迎えやすい。それは普通では起こりにくいこと。だからこそ、それを見に来ては畏怖するんだ。

 アイツらはありえない奴らで、逆らってはいけない存在なんだって。」



 淡々とした空の言葉に反論する余地さえなく、ただ黙って聞く。私は、そういう存在が存在することを知っていたから。



「何処の人の子も同じね……。」



 ポツリと聞こえたガイアさんの声にハッとしてそちらを向いたが、ガイアさんはいつもの顔で競技を見ているだけだった。……気の所為、だったんでしょうか……?


 やがて赤組の棒が倒れ、今回は白組の勝利となった。

 尚、棒倒しの得点は倒すのにかかった時間や、15分が経った頃の棒の角度によるらしい。今回はかかった時間が13分49秒。白組が90度、赤組が75度ほどだったとアナウンスが入る。



「まあ、この棒倒しで退場者を出したら減点っていうルールもあるから、そこまで無茶をする人は居ないんじゃないかな。」


「それもそうですね。」



 空と2人でそんな話をしていると、いよいよ神様の出場する2回戦が始まるようだ。スタートラインに並ぶメンツは今までの競技の中で見たことのある人が多いように感じる。やはり、参加者は実力重視になるからだろう。



『いよいよ第2回戦ですね!』


『注目はやはりカオスファミリアのアルベルト選手かな。』


『今日の数々の試合においてのダークホースとも言うべき存在ですからね!今回も活躍が楽しみです!』



 そして、時間になり、開始のピストルが鳴った。

 一斉に走り出す人々に神様はどうするのかと見ると、後ろの方で走っていく人々をただ見ていた。

 何故だろうかとフィールドを観察する。すると、開始と同時に走った結果、辺りでは転けて更に踏まれている人々がいた。確かにあの場で走り出すのは危険だろう。


 粗方人が居なくなったところで神様が動く。

 走り出した神様はまず白組の棒へと向かった。既に何十人もの人々が群がるそこへ入るのかと思いきや、神様は白い棒の頂点に止まった。

 そして、その場を混沌へと陥れる技の名を告げた。



「〈創造する夢(ナイトメア)〉」


『なんと!?白の棒が大量に増えました!?これは一体どういう事態なのでしょうか!?白い棒に群がっていた人々も困惑している様子です!』


『いや、ちょっと待って。白組と赤組で動きがおかしい。

 白組はある程度の統率がされているようだけど、赤組にはそれが無い。まるで、白組には本物が見えているみたいじゃないか!』


『まさか、幻影魔法の効果が赤組にだけ反映されていると……?』


『そうだとも言えるし、そうじゃないとも言える。

 何せ、同じ白組のはずであっても向かっていく方向が違うんだ。つまり、それぞれに見えている幻覚が違うんだよ。』


『そんな魔法が存在するんですか!?』


『分からない。でも、とにかく彼は凄まじい身体能力だけでなく、魔法の技巧も持ち合わせているというのは事実だろうね。』



 信じられないと呟くデュランさんの言葉にやはり神様も常識からはかけ離れているなと実感する。

 神様って何気に自分は普通だと言わんばかりに私はおかしいと言いますけど、神様も十分おかしいんですよ。


 うんうんと頷いていると、隣では何やら腹立たしげに神様を見ている2人がいた。



「何あれ。直ぐに倒せるくせに少しでも時間を稼ごうとかふざけてんの?」


「我らが父はこの勝負をなんとお考えか。

 これは祭り事。神聖な祭事に全力を出さないとは有り得ない。」



 2人とも視点は違えど、神様が手抜きであるらしい事に怒っているようだった。でも、十分凄いと思うんですよね。あれ以上は……ちょっと想像がつかないというか。



「神様が全力を出したらどうなるんですか?」


「例えば、一瞬で棒を倒すどころかひっくり返すことも出来るよ。」


「一秒も要らない。あんな回りくどいことは不要。」



 2人のムスッとした態度に事実なのかと疑問に思うよりも納得の方が先に勝ってしまった。普通に想像出来てしまうあたり、やはり神様は神様だなと思う。


 そんな会話をしている間にも競技は進み、今は神様が赤い棒の上部を何度も蹴っている所だった。



『凄まじい蹴りにつぐ蹴りにより、どんどん傾いていく赤組の棒!このまま倒されてしまうのでしょうか!?』


『凄まじい威力の蹴りだね。一撃一撃に込められている魔力量もそうだけど、地面に着地してすぐにまた蹴りを放つのもかなりの技術がいる。

 しかも、狙っているのが一点だけってところも凄いな。なかなか出来ることじゃないよ。』



 感心したようにそう言うデュランさんに内心で同意しながらも隣で静かな怒りを燻らせる2人をどう宥めようかと見ていた。このままでは神様が帰ってきた瞬間にお説教が始まりそうだ。……でも、玉入れの事を教えられていなかったですしね。援護する必要性も感じません。私は今回は傍観者に徹するとしましょうか。


 そうして途中、魔法で地面に棒を固定されたり蹴りを体を張ることで邪魔されたりといった妨害を受けつつもそう時間がかかることなく棒は倒れた。

 沸き起こる歓声に包まれながらも、神様が転移で戻ってくる。そして、すぐさま2人に囲まれ、文句をグチグチと言われることとなった。



「神様。ボクはあの戦い方を認めないよ。」


「人の子の言う通り。あれはない。

 祭りならば全力を出す。これが当然。祭りをなんだと思っている?」


「えっ。いや、こんな所で権能なんて使ったら不味いからね!?」



 2人から責められ、神様は驚いたようだがすぐさま結界を張り、言い返す。冷静に結界を張ったあたり、2人から何かを言われるのは想定内だったのかもしれない。

 意外と冷静な神様にまあ、これなら大丈夫かと放置し、最後の試合を見ることにした。



『さあ!いよいよやって参りました!第3試合!これまでの結果は2対0と白組が優勢となっております!』


『まあ、点数に加算したとしても、今のところは白組の圧勝だね。ただ、赤組がより早く棒を倒すことが出来ればまだまだ勝機はあるよ。』


『アルベルト選手よりも早くとはなかなかに厳しそうですが、何せランキング上位陣の戦いです!何があってもおかしくないのは間違いないでしょう!』



 実況を聞きながらふとした疑問を神様に尋ねる。既にお説教は済んでいたが、2人からはそっぽを向かれ、神様は疲れたように項垂れていた。



「神様。そういえば、この大会の勝敗って勝った数ではなく、足したポイントで決まるんですね。珍しい気がします。」


「ああ。そうだね。実は、初めは勝ち負けの数で勝敗は決めていたんだよ。」


「そうなんですか!?」



 思いもよらない言葉に驚き、神様を見る。本当だと頷いた神様は今に至るまでの事情を話してくれた。

 どうやら、当初は本当に勝った回数で勝敗を決めていたらしく、そこで文句が出たそうなのだ。その理由が今の状況の時である。この場合、3回に分けていることで最後まで競技が行われない可能性があるのだ。

 つまり、開催する側にとって全くと言っていいほどに旨みがないし、面白みにかける。

 そのため、今のように点数制で逆転する可能性が生まれるように仕組みを作り直したのだとか。



「その辺は考えが及ばなかった当初の責任者が悪いよね。」


「うっ。ま、まあ、そういう事で、今の制度に変わったんだ。納得ができたかな?」


「はいです!」



 何故かダメージを受けているらしい神様はやはり放置するとして、目の前で繰り広げられ始めた試合に目を移した。

 そこではやはりと言うべきか、魔王と名高いディボルトさんの独壇場となっていた。



『ディボルト選手!空から強襲し、棒を引っこ抜きました!?そのまま宙に捨て、それを受けに向かう白組!しかし、間に合いません!棒は地面に着き、決着です……!』


『驚いた。まさか、この手法をとってくるとはね。空を飛べるからこそ出来る芸当だけど、正直ルール上はグレーゾーンだからさ。次回では禁止となりそうだね。』


『確かに今回のこれは大人気ないとも言えますから……。ゲームバランス上、次からは使えないか、条件が厳しくされそうですね。』



 こうして最短時間で着いた決着により、棒倒しの総合結果は分からないものとなった。

 さあ、次は障害物競走ですね。楽しみです!

次回、障害物競走


それでは、これ以降も良き暇つぶしをお送りください。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 手抜きは良くないからどんどんイッタレ(笑) [気になる点] もしかして最初の頃誰かさんが棒を壊してたりして♪ 例えばハレンチオネエサンがいいとこ見せるぞー!って張り切り過ぎて(笑) [一言…
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