↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/212

60話 これは誰の趣味?

こんにちこんばんは。

エンプティの出番まで書けなかった仁科紫です。


それでは、良き暇つぶしを。

『午後の部、第2競技は障害物競走よ。

 実況はサルーラ・サラサーティ・フルフラリーと。』


『解説はヘパイストスファミリアのサブマス兼事務を担当しております、優香さんでお送り致します。』



 にこやかな笑みを浮かべる優香さんは、優しげな落ち着いた緑の瞳に黒い髪を下の方で一つにまとめた穏やかそうな女性だった。

 声も穏やかであり、聞いた人を和ませるようなそんな声だ。

 なんだか、ガイアさんと似たような雰囲気を……感じないですね。


 目や髪、印象は似ているのに何故だろうかと首をかしげ、アナウンスを聞くことにする。



『今回の障害物競走はこのフィールドで行うわよ。皆、スクリーンに注目なさい。』



 サルーラさんの声に従い、画面に大きく表示されたマップを見る。そこには計5つの障害があった。



『まず、1つ目。走り出すとすぐにいくつかの籠が用意されているわ。』


『それを手にし、更衣室へ。もちろん、カーテンで仕切られているだけではありますが、そこで着替えて頂きます。』


『本来はカーテンなんて要らないのだけど……何故かは分かるわよね?』


『ふふふ。今回はどんなコs……コホン。服装があるのか、楽しみですね。』



 コス……?とは何だろうかと空を見る。

 空はいい笑顔で私を見ると、ただ一言、大丈夫だよとだけ言ってスクリーンに向き直った。

 大丈夫って何がでしょう……?


 疑問に思っている間にも説明は進んでいく。

 二つ目の障害は網を潜るというものだった。これは定番だなと見ていると、何故かそこかしこで顔の青い人が見うけられる気がする。

 更に言うと、今回の競技での参加者は特に可愛らしい人や綺麗な人が多いように思えた。もちろん、元からそういう人は多いのだが、男性にしても中性的な人が多い……そんな印象だった。

 まあ、気のせいかもしれませんけどね。

 三つ目の障害は飴玉探しで、四つ目は乗り物に乗って移動。

 そして、最後の一つはランダムに渡されるお題のものを探して持ってくるというものらしい。

 もはや借り物競争な気がするが、障害と言えば確かに障害だろうか。なんでも、観客席にある場合は転移が出来るようになっているらしく、そちらで探すこともできるようだ。なお、全ての障害物で魔法を使うのは構わないらしい。

 どうやら、運も必要な競技のようですね。


 ふむふむと頷き、競技の開始を待つことにする。この競技は200メートル走と同じく、20人ずつ走り、最後だけ上位の12人で競い合うというものらしかった。



『それじゃあ、早速始めるわよ。よーい、ドンッ!』



 サルーラさんの声に合わせてピストルが鳴り響き、第一走者が走り出す。まずは何が入っているのかも不明な籠を取り、更衣室へと入る。

 すると、すぐさま出てきたのはメイド服を着た人だった。

 やや強気そうな目がキリリとしていてカッコよく、ミディアムの黒髪の下の方をクルリと内に巻いたその人はメイド服がよく似合っている。……って、さっきまでこんな人いましたっけ?



『一番に出てきたのは摩利支天ファミリアの黒子黒選手ね。男性のアバターであってもよく着こなしているわ。』


『強気な目がまた……コホン。ふふふ。よく似合っていますよね。さて、次は誰が出てくるんでしょうか。』



 なるほど。既視感があったと思えば、道理である。どうやら、あれは黒子の姿をしていた黒子黒さんの素顔らしかった。……あの、開催者さん?もしや、性別とか気にせずに配られるんですか?これ。



「そ、空。これは一体どういうシステムなんでしょう?」



 戸惑いから縋るように空に話しかける。きっと、空がいなければ私は少しばかりパニックになっていただろう。

 何せ、海が通っていたのは女子高。それも、小中高と続くエスカレーター式の女子高なのだ。正直、男性が女装するというのは受け付けがたいものがある。逆に女性が男装をするのなら理解出来るのだが。

 尚、完全に男性と接したことがないという訳では無いため、一定の距離さえあればそこは問題ない。

 護身術として習っていたテコンドーの教室には男性もいましたからね。……まあ、私にはその知識は残っていないようですが。記憶だけがあるとは珍しい事です。


 何処か必死な私に空はニコリと笑って口を開いた。



「大丈夫って言ったでしょ?これはそういう競技なんだよ。周りを見てご覧。この競技、これがあるから男性よりも女性が多いよね?」


「あ。本当ですね。」



 パッと見た感じ、女性が7割ほどを占めているだろうか。確かに、こういった競技だと分かっていれば自然とこうなるだろう。寧ろ、楽しみにしている人の方が多いようだ。



「ね?だから、普段は着れない服を着れると思って楽しみにしていればいいんだよ。」


「……はいです!楽しみにしていますね!」



 こうして話している間にも続々とカーテンは開かれ、中から人が出てくる。それは水着であったり、体にバニーガールであったり、もはや服と呼んでいいのか怪しい包帯をぐるぐる巻きにしたような姿だったりと様々だ。

 どうやら、カーテンから出るのに時間がかかるのは己の羞恥心と戦っているかららしい。

 なるほど。羞恥心は確かに強敵ですね。


 そうしてカーテンが開かれる間にも黒子黒さんは飴玉を探すコーナーにまで到達していた。



『黒子黒選手は飴玉を探せるかしら?』


『今回からの新ルールもありますからね。』



 何処かニヤリと妖しく笑う実況と解説の二人に嫌な予感がする。それはどうやら当たりのようだった。

 黒子黒さんが探し当てた飴玉を口に入れ、顔を上げたとき。



「ぐっ……!?」


『あら。今回は何かしら?』


『痺れ飴のようですね。10秒ほどそこで立ち止まって頂きます。』



 パチリパチリと体に雷がまとわりつくようなエフェクトは麻痺をしたという証のようだ。

 そして、今回の飴玉探しの飴は一筋縄では行かないことが確定してしまった。

 ……あっ。でも、普通に考えて私は耐性がありますからね。恐らく問題は無いでしょう。


 うんうんと頷いていると、そこに悲しいお知らせが入る。



『尚、今回の飴玉の効果は耐性に関わらず必ず発生するわよ。』


『摩利支天と言えば忍術や戦国武将といった人たちを愛する方々が所属するファミリアですからね。

 毒耐性も麻痺耐性も持っていたことでしょう。それを凌駕されるとは……どんな嫌がらせでしょうね。ふふふ。まあ、それはそれで……。』



 間違いなく、今この場の参加者の中で心の声は一致したことだろう。「それはそれで、何!?」と。

 あはは……。道理でガイアさんとは雰囲気が違うわけです。根っこの性質が全然違うじゃないですか。優香さんは確実にSです。ドSです。ドのつくサディストです!



「うわぁ。恐ろしい人が解説やってますね……。」


「あはは。気づいちゃったか。まあ、関わらなければ無害な人だよ。」



 サラッと肯定し、苦笑いを浮かべる空はある意味凄いと思った。私にそんな高性能なスルースキルはありませんけどね!?


 その後に続く障害もなかなかに酷いものばかりだった。



『あら。乗り物から振り落とされているわね。』


『ふふふ。この日のために用意されたロバなわけですが、やはりそれだけに凶暴ですね。

 バイクを選んでもいつ爆発するか気が気でないほどに不安定な爆弾バイク。バイク自体操縦が難しいだけに選ばなければならなかった人は不運なこと間違いないでしょう。』



 いや、何を選んでも不運でしかねぇだろと見ている人はまず間違いなく思ったに違いない。今この場にいる人たちはもはやどこか目が虚ろですらある。もしかしたら、先程顔が青くなっていた人達はこのことを知っていたのだろうかとぼんやりと思った。

 ……よし。後で神様には文句を言いましょう。それしかありません。


 心の中で決心していると、いよいよ第一走者が最終コーナーに入り、もう三組目が走り始めた後だった。

 今のところは黒子黒さんが1位を走っており、その後ろにはなかなかに際どい牛柄のビキニに短パンを履いたような女性が続く。

 抽選箱のようなものに黒子黒さんが手を突っ込み、一枚折り畳まれた紙を取り出す。手にしたお題の紙に何が書いてあったのかは本人にしか分からないが、それなりにとんでもないものだったらしい。

 困惑の表情を浮かべた黒子黒さんは少し考えたあと、転移を使って観客席に向かったようだ。


 その後も次々とお題を手にする走者達は揃って困った顔を浮かべながら何処かへと向かっていく。

 そして、黒子黒さんが戻ってきたのは六組目が走り出そうとした頃だった。



『ようやくゴールインのようね。』


『さて、お題はなんだったのでしょう?』



 ワクワクとした2人の様子とは正反対の疲れきった顔をした黒子黒さんはお題をゴールの横にあった台の上にのせる。そこには「丸くて美味しくて売られたもの」と書かれていた。当然ながら、この競技場では出店の類はない。これは確かに困るだろうなと思った。

 そして、黒子黒さんが取り出したのはゴマ団子だった。



『黒子黒選手が持ってきたのはゴマ団子のようね。これはお題道理なのかしら?説明をお願いするわ。』



 台の横に置かれたマイクの前に立った黒子黒さんが口を開く。何気にちゃんと声を聞くのは初めてではないだろうか。



「これはマスターにより売っていただいたマスター特性のゴマ団子となります。

 摩利支天ファミリアでも大変人気があり、毎回購入には競争となるため、なかなか手に入らないものです。」


『なるほど。丸くて美味しくて売られたものの条件には当てはまりますね。……仕方がありません。ゴールしていいですよ。』



 何処か残念そうな優香さんの声に従い、黒子黒さんには1位と書かれた旗が渡される。どうやら、1位から3位までゴールしてようやく観客へと戻れるようだった。

 その後、1位から3位まではゴールしたが、結局その後に続く4位から20位までの人達は途中で降参していた。恐らく、勝敗には関係ないからだろう。


 暫く待つと、いよいよ私たちの番になった。さて。まずはどんな衣装になるんでしょう?楽しみですね!

次回、エンプティの出番


それでは、これ以降も良き暇つぶしをお送りください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 眼帯と首枷・手枷・足枷・黒帯を付けた枷もりもりの拘束具もりもりのお姫様・・・・・・・・・・ 移動にはほとんど影響がないからこそ、アリか・・
[良い点] これは波乱万丈ですね♪お題によっては空ちゃんが暴れるのでは?もしくは、プティちゃんがカタマル(笑) [気になる点] 神様とメンバーチェンジとか出来ないの( ̄▽ ̄) [一言] さあ!いまこそ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。