19話 行動方針は確定
こんにちこんばんは。
流れが無理やりすぎる気がしないでもない仁科紫です。
明日の更新でしばらくお休みさせて頂きます。ご理解頂けますと幸いです…。
それでは、良き暇つぶしを。
その後、いくつかのお話をした後、アキトとデュランは帰って行った。閉まっていく扉を見て、気持ちを切り替える。
さて。それでは、神様に問い詰めるとしましょうか。そろそろ誤魔化しがきかないところまで来ていると思うんですよねぇ。私。それに、問い詰める材料もそれなりに集まってきちゃったので。仕方がありませんよね?
「神様。オハナシ、しましょう?」
「……う、うん。」
ふふふ。何やら顔が引き攣っていますが、知ったことでは無いのです。今まであれだけ秘密があっても聞かないでいた訳ですし。それは神様を信頼していたからなんですけどねぇ?
ふふふっと笑いながら神様の方を見る。そこには困ったように眉を下げる神様が居た。
…こーいう顔をされると、困るんですが…仕方がありません。さっさと答えていただきましょう。
Q1.どうして神様は個人ランキング1位なのか?また、それはどうやって決まるものなのか?
「年に4回あるバトルロイヤルでの総合結果で決まるよ。
僕は一度参加した大会で優勝してしまってね。その後の大会への参加も余儀なくされたんだ。」
「どうして参加しなければならなかったんですか?」
「えっと…あの大会の優勝者は次の大会のシード権みたいなのが渡されるんだよね。
僕は運営側の人間だけど、ちょっとした事故で参加する羽目になったんだ。そしたら優勝しちゃってね。あれには参ったよ。分かっていたから参加しなかったのに…。
…っと、何はともあれ、運営側がそういう権限を無視して参加しないというのもまずいだろうということで、それ以来参加した結果、今に至るって感じかな。」
「ふむふむ。なるほどです。事故というものが気になりますが、一応、納得という事にしましょう。」
「き、厳しい…。」
Q2.何故『ノーフェイス』と呼ばれるのか?
「これは…まあ、これのせいかなぁ。」
そう言って神様が取り出したのは黒いマントだった。一見、何の変哲もないごく普通のものだったが、これがどうしたのだろうか?
「それは…?」
「これは『崩壊の黒衣』さ。僕の作った作品の中でもかなりの自信作だよ。これをつけると、諸々のパラメーターが上昇するだけじゃなく、着用した個人を認識できなくなるんだ。」
「…ハイ?個人を認識できない…?それ、強すぎませんか?」
あまりにも信じられない効果に思わず聞き返すと、神様は苦笑した。
「いや、この個人っていうのは個人情報と言うべきかな。
その場にいれば認識できるけど、それが誰だかは分からない。そう考えてくれたらいいよ。」
「なるほど。だから、今まで顔が分からなかったですね。
それで『ノーフェイス』と呼ばれるようになったと。」
「そういうこと。」
Q3.ファミリアとは?
「プティはギルドと言ったらイメージ出来るかな?」
「ゲーム等で聞く組合のようなものですよね。同じ目的を持つものが集まるというイメージがあるのです。」
「うん。そんな感じ。でも、ファミリアはどちらかと言えばアイドルのファンクラブや宗教団体のようなものなんだよね。
そして、一度ファミリアに入ると抜け出すのは難しい。」
「ファンクラブ…?宗教団体…?えっと、どういう意味でしょう?私の想定とは大きくかけ離れている予感がするのですが…。」
「あー…まあ、初めて聞くと困惑するよね。」
神様の説明によると、ファミリアとはこちらの世界ではなく、あちらの世界の制度なのだとか。そして、あちらの世界とはもうひとつの世界のことを指し、そこでは神が全てらしい。……うん。意味わからんですね。
「神様ランキング…?ですか?」
「うん。あそこでは神の代弁者としてファミリア同士が対決することである程度の平和を維持しているんだ。」
「へぇ。ファミリアを作ることは出来るんですか?」
「ああ、出来るよ。でも、新規は生き残るのも厳しい世界だ。僕は勧めないよ。
それに新しいファミリアが活動するには条件を満たす必要がある。」
その条件について尋ねると、神様は渋い顔をした。
「この話はプティにまだ早いよ?」
「そうかもしれませんが、遅いよりは良いじゃないですか。」
「……仕方がないね。」
答えを得るのに成功した私に、神様は以下のことを教えてくれた。
まず、二つの世界には名前があり、それぞれセカンドワールドとメモリアルワールドと名付けられている。ファミリアに所属するにはセカンドワールドという世界に行く必要がある。
そして、セカンドワールドに入る条件はセカンドワールドを知るものからの試練を達成することである。
新規のファミリアが神様ランキングに参加するには現在最下位である800位のファミリアに決闘を申し込み、勝つ必要がある。
要は、私が神様ランキングに参加するには神様から試練を貰い、神様ランキング800位のファミリアに決闘を申し込んで勝利する必要があるのです。
どうせなら参加したいですしねぇ。案外なんとかなる…
…と、そこまで考えるに至ったもののかなり深刻な問題があることがわかった。
あれ?これ、神様から試練を貰うのが一番難しいのでは…?
ハッとして神様の方を見る。神様は何処か悩んだように険しい表情で考え込んでいた。
ジーッと見つめていると、顔を上げた神様と視線が合う。
「「あっ…。」」
気まずい空気が辺りを支配するが、神様は瞬時に切り替えて笑顔を作っていた。顔は引き攣っていたが。
「プティは…参加、したい?」
「それは…勿論、ですが…。」
神様の問いに私は歯切れ悪くそう言ったきり、俯いて口篭るしかなかった。
正直なところ、参加したいのは参加したいんですよ?勿論。神様の威光を知らしめることが出来るのですから!
…ですが、それで神様に嫌われると言うなら話は別です。当然じゃないですか。どれだけ神様のすばらしさを宣伝すべく活動しようにも同意なきそれはただの迷惑でしかないのです。
ならば、私は神様と一緒に過ごす安穏とした日々を享受しましょう。それがただの停滞であっても、それこそが神様にとって望むものであるならば私は喜んで受け入れます。
だから、私は参加しないとこの場で言うべきなのでしょう。
そうして結論が出て顔を上げるまで神様は私を待っていてくれていたようだ。顔を上げた私に神様は穏やかに笑いかけ、口を開く。
「プティ。君は君の好きなようにしていいんだよ。」
その声はただただ優しく、慈愛に満ち溢れたものだった。そして、私を戸惑わせるには十分な言葉でもあった。
「えっ…。」
「僕のことは気にしなくていいって言っているんだよ。
君が、君のしたいがままにこの世界を生きて欲しい。
それが僕の君への願いだから。」
穏やかに、それ以上に覚悟の伝わるその目に私は更に戸惑うしかない。
これ以上は耐えられないと動揺のあまり神様に向かって声を荒らげてしまう。
「なんで……なんでそんな事言うんですか…!
神様は嫌なんですよね?嫌じゃなかったら、あんな…困った顔なんてしないじゃありませんか。私は神様を困らせたいわけじゃないんです。それは私の望むところではないんですよ。
だから…神様。私は、神様が嫌なら本当にそれでいいんです。」
ニコリと笑顔を作る。いつも通り、従順でいい子の振りをして。決して見通されないように。
そう。確かに私は思った。思ってしまったんですよ。神様の為に…いえ、神様と共に頂点を目指す日々はどれ程楽しいものなのだろうか、と。
それでも、私は神様が望むならばその気持ちなんて忘れてしまえる。今までそうしてきたように。
だから笑うのだ。傷ついた顔は神様を困らせるだけなのだから。
そう、思ったのに。
「嘘はダメだよ。プティ。僕は君の本心が知りたい。君が本当に望んでいるのなら、僕は神の真似事だってしてみせよう。それは妥協でもなんでもないんだ。プティ。僕の本心だからね。
それに、言っただろう?僕に依存して良いんだって。こういう時も遠慮せず、頼ってくれたらいいんだ。」
優しく包み込むような、それでいて力強い言葉。それは先程から変わりはしない。むしろ、力強さが増しているようにも感じてしまう自分が居た。
逃げられない…そう思うほどに。
あぁ…。神様。貴方はなんて罪作りなお方なんでしょうか。
逃げようと、恐ろしい結末から目をそらそうと必死な私にそんな都合のいい言葉を注ぎ込むんですから。
……これでは、遊びではなく本当に崇拝するしかありませんね。
独り言ちる。崇拝対象となる神様…アルベルト・テオズ、その人に向かって真剣な顔で答えた。
「神様。」
「なんだい?」
「私は、神様と神様ランキングに参加したいです。」
「うん。いいよ。参加するだけでいいのかな?」
あっさりと頷いた神様はそう尋ねてきた。
それもそうだろう。参加するのは何処まで目指すのかといった目標があるからなのだから。
ふむ。と、少し考えてから神様に笑いかける。
「どうせなら、1位を目指したいですね!」
「へぇ。大きく出たね。」
「いえ、まあ別に、1位になれなくてもいいのです。ですが…」
「ですが?」
反復して問われる言葉の続きに、からかうチャンスとばかりに考えていた言葉を告げる。
「神様は我が創造主ですからね!皆様に知らしめないといけません。さあ、1位を目指しますよーっ!」
「いや、どっち!?ていうか、なんで知らしめる必要があるの!?」
ニヤリと笑った私にいつも通りの調子でツッコミを入れてくれた神様。その姿に更に笑みを深くした。
…心の奥底に感じた一抹の寂しさには蓋をして。
きっと、知らない方が良いこともあるのですよ。
とにかく今は、神様ランキングに向けて頑張りますよーっ!
次回、掲示板回
それでは、これ以降も良き暇つぶしをお送りください。




