17話 来客は嵐の前触れ
こんにちこんばんは。
色々あって間に合わなかった仁科紫です。
短いですし、見直しもできてませんので、誤字がある気がします。
それでは、良き暇つぶしを。
イベントから数日経ったある日のこと。
今日も今日とて神様と店番をしていた午後3時。ちょうどおやつの時間だと紅茶の用意に向かい、神様は居なかった。
今日のおやつは何でしょう?
そう思いながら待っていると、ドアベルの音が店内に響いた。
珍しいですね?
どんな人だろうかとそちらを見ると、そこにはうっすらと記憶に残っている人物が居た。
「邪魔するぜぇ。」
「邪魔するなら帰れなのです。」
「うわっ。酷くね!?嬢ちゃん!」
個人的には定番の流れといえる言葉を返しただけだったのだが、どうやら通じなかったらしい。
むぅ。冗談だったんですけどね。あ。でも、本当に私と神様の邪魔をするなら帰って欲しいですが。私の敵と言っても過言ではありませんし?
「なんか、酷いこと考えられてる気がする…。」
「ふふふ。気のせいですよ。
それより、何用ですか?事と次第によっては追い出しますよ?」
ニコニコと笑顔を作りながらもその青年を警戒する。
そこに居たのは数日前にイベントで出会った金髪赤目の青年だった。
あの時、確かに彼は神様に対して動きに見覚えがあると言っていました。なので、用はきっと神様にあるのでしょうが…もしも、神様に害を及ぼすというのなら私は神様のためにどんな事でもしてのけますよ!
気合いを込めて青年を見る。青年は頬をかき、何やら困った様子だった。
「いや…そこまで警戒しなくていいんだぜ?」
「無理です。敵かどうか分からないので。」
「あー…。それもそうか。」
あっさりとそう頷いた青年は店内を見回し、再度私に視線を戻した。
「なあ。この間の人は居ねぇのか?」
「この間の人…?」
誰のことを指しているのかと首を傾げていると、青年は焦れったそうに頭をかいた。
「ほら、アンタが神様とか呼んでたやつ。」
「ああ。神様ですか。神様なら店の奥にいますので、少々お待ち下さい。」
「それなら待たせてもらうぜ。」
そう言って青年は物珍しそうに店内を見回し始めた。
ふむ。神様に用事という事でしたが…一体何用なのでしょうか…?
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「それで、何用かな?」
場所を店から1階にあった応接室へと移動し、話し出した。
こんな所もあったんですねぇ。把握不足でした。
部屋を見回しつつ、神様の用意したティーカップとホールのチョコタルトをカットし、皿に盛り付けて2人の話を聞く。
「ちょっと確かめてぇ事があってな。」
「へぇ?その為だけにわざわざ居場所まで特定して来たんだ?
アポロンのマスターはよっぽど暇みたいだね?」
神様の言葉にアポロンのマスターさんは眉を顰めた。
どうやら、神様から歓迎されていないことが丸わかりの態度を取られているのが気に入らないようですね。もぐもぐ…。
……ん?私ですか?神様の嫌味っぽい声をバックミュージックにうまうまとチョコレートタルトを食べていますが何か?
今日も今日とて神様が作ったスイーツは最っ高なのです!チョコレートはビターとミルクの二層になっているようで、噛めば噛むほどに混ざり合うそれらが絶妙に美味なのですよ!
なお、タルト生地は私の食感が怪しいので…まあ、硬いのは分かります。多分、サックサクなんでしょうね。
むしゃむしゃと食べていると、アポロンのマスターさんが何を聞きたかったのかが耳に入ってきた。
「アンタ、『ノーフェイス』だったりしないかなーってな。」
「『ノーフェイス』…?いや、知らないが。」
「へぇ。んじゃあ、なんで剣なんか使ったんだ?」
「剣…?…ああ。あの時の武器の話か。僕は剣を使うからだけど?」
どうしてそんなことを聞くのかとばかりに神様がごく自然に答える。それにアポロンのマスターさんは首を傾げた。
……と言いますか、『ノーフェイス』ってなんの事ですかね?神様の様子的に何かを知っているようではありますが。
だって、神様の武器は刀のはずですから。あの時、剣を使っているのを見て不思議で仕方がなかったんですよねぇ。
余計なことは口にするまいと黙ってもう1切れを口に運ぶ。
なおも続く会話に耳を傾けた。
「いーや。おかしいね。あの動き、刀を使うものの動きだったんだが?何より、『ノーフェイス』と動きがそっくり過ぎたんだよ。誤魔化すならその辺も注意するんだったな。」
「……僕が真似をしていただけだとは思わないのかい?」
僅かな沈黙の後、神様が出した問いに青年はカラカラと笑って答えた。
「それはないだろ。たまたま録画していた過去の映像を見てようやく確信を得たくらいだ。
むしろ、意識して隠そうとしているのがチラホラと散見できる動きだったんだよなぁ?」
「チッ。ブラフか。」
「せーかい。引っかかってくれて嬉しいよ。『ノーフェイス』。」
ニヤリと笑う青年に神様は普段の温和な雰囲気を消して睨みつけた。
む…?さっきから気になっていたのですが、『ノーフェイス』とはなんの事でしょう…?
まあ、何はともあれ、神様にとってよろしくない状況のようです。ちょっと間に入って聞いてみるとしますか。
「質問なんですが、『ノーフェイス』とはなんですか?」
「ん?知らねぇの?プレイヤーランキング1位のことなんだが、顔見せもしねぇもんだから、正体不明の顔のないやつって意味で『ノーフェイス』って呼ばれるようになったんだ。
つっても、ここ一年の話だけどな。それよりも前は今の2位がずっと1位を独占してたからな。」
淡々としたもの言いに頷いていると、引っかかることがあった。
「もし神様がその『ノーフェイス』だったとして、神様は運営側の方ですよね?そんな人が1位になっても意味がない気がします。」
「へぇ。そうなのか。
…ん?運営側…?…えっ。はぁ!?」
「プティ…。それは言ってはいけない言葉だよ…。」
「えっ!?そうだったんですか!?」
神様に助け舟を出そうとしたが、どうやら失敗だったらしい。
うーん。……あ。流石に、運営側というのは不味かったですかね?ふむ。…うん。今度から気をつけましょう。
「それは…そうだな。俺も気になるから聞いていいか?」
「…話す必要は無いだろう。
それより、君は聞きに来ただけじゃないんだろう?とっとと用件を話しなよ。」
不機嫌な様子で話す神様に「おーこわっ。」と青年がおどけると、少しの沈黙の後、口を開いた。
「まあ、バレてるかぁ。せっかくだし、勧誘でもしようかなーって思ったんだけどな。」
「もちろん、お断りするよ?」
「だろうなぁ。運営側…。そうか。運営側か…。」
そう呟いた後、青年は神様に声をかけて店を出ていった。
なんだったんでしょうね?彼。
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そして、その数日後。
「んーっ!やっぱうめぇな!」
「ですよね!この甘さが丁度いいのです!」
私たちは神様の手作りチーズケーキを食べていた。…何故か、アポロンのマスターだというアキトと共に。
去っていった次の日もまたこの人形屋に来たんですよねぇ。そして、こうしておやつを食べる仲になってしまったんですよ。不思議なものです。
「君、いつまでここに来る気…?」
「んー…気が向くまでだな!」
こうして何故かアレスのマスターであるアキトが神様の人形屋に入り浸るようになったのだった。
つまり、神様との2人きりの時間が減るという…良い迷惑ですね!
次回、次は誰が来るでしょーか。
それでは、これ以降も良き暇つぶしをお送りください。
〜2021/11/22 11:20 神様がの人形屋→神様の人形屋に訂正しました〜
やっぱり、急ぐといいことはないですね。




