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デコチョップとクロスアームブロックと朝食と

二階の自室へたどり着き、ドアを開けると中はまだ薄暗く、相変わらずコンはすやすやと寝息を立てて、眠っていた。




ただし、先程被せたはずのタオルケットは蹴とばされて、部屋の隅の方まで吹っ飛んでいたが。




一体、どんな寝相してやがる。




と、一人ツッコミを入れている場合ではない。




そうこうしている内にご飯が冷めてしまっては勿体ないのだから、早くこのケモミミ幼女を起こしてやらねば。




そう思い部屋へ入り、ベッドの横に立つ。




枕元に置いてあるリモコンを操作して、明かりをつけると乳白色の光が部屋を照らす。




尻尾だけはふりふりと動いているコンの傍で佇んでいると、急に明るくなったことで寝苦しさを感じたのか、寝返りをうち入口とは反対側の方に向き直るコン。




その際にちらっと覗く生足や、ふとももに惑わされない様、いかんいかんと頭を振って深呼吸して声をかける。




「はぁ…。ほら、コン起きろ…朝だぞ」




と、声を掛けてみても反応なし。




昨日寝た時間が遅かったから仕方ないと言えば仕方ないのだが…はてさて、どうしたものか。




俺はもう一度息を吐き、今度は肩に手を乗せて軽く揺すりながら声をかけた。




「ほら、起きろ!起きろって…ごはん冷めちまうぞ?」




と、言って揺すってやると今度は「んぅ…ん…んん~?」と、何やら唸って顔を顰しかめてはいるが、まだ起きない。




もう一押しだがさて…。




俺はどうするか、と思案していたがこれだけやっても起きないなら仕方ないと、意を決して最終手段にでることにした。




「ほら、起きろ~~~!朝飯、冷めちまうぞ~うりうり!」




と、ベッドの上に膝立ちになりコンのほっぺに両手を添えると、親指と人差し指で軽く摘まむ。




ぷにぷにの頬は、まるでつきたての餅の様な感触で、触ると絶妙な反発感がある。




ぷにゅりと指に吸い付く肌は柔らかく、何度も触りたくなる様な感触だった。




軽く引っ張り力を込めると本当に餅みたいに左右に伸びる。




二センチくらい伸びたり、縮めたりを繰り返しながら感触を楽しんでいると、ようやく寝坊助のケモミミ幼女は「う~ん…」と、唸りながら丸くて大きな目を開き視線が重なる。




「起きたか…?」




「あと二刻~…」




おい、今明らかに目が合ったじゃないか!?




二刻ったら四時間じゃねえか…流石に寝過ぎだ!




声を掛けるとまだ寝ぼけているのか、再び目をつむろうとしている。




こうなったら仕方ない。




この手は使いたくなかったが、起きないのだから仕方ない。




そう、仕方ないのだ。




「はぁ…ほら、起きろこの寝坊助幼女!」




と、額に向かって軽く手刀をかます。




ストンと子気味良い音がして、手には硬いボーリング玉の様な感触が伝わる。




流石に今のは効いたのか、コンは声にならない声を上げて悶えていた。




「っぁぁぁああ~…!」




ベッドの上をゴロゴロと左右に転がり、あっちに行ったりこっちに行ったりと往復していると、遂にはベッドから落下してしまった。




どすっ!と、鈍い音が鳴るとコンは叫ぶ。




「何するのじゃ!このたわけぇ!ワシは神じゃぞ!見習いじゃが…神じゃぞ!?呪うぞ?祟るぞ?…ふぇぇ…」




と、落ちた拍子にさらにおでこに追撃を食らったらしく、凄い剣幕でこちらを凝視しているコン。




目にはうっすらと涙を溜めて、額にクロスアームブロックよろしく腕を交差させて額に手を当てている。




自慢の尻尾や耳もブンブンと大きく揺れていて、どうやら相当痛かった様子だ。




手刀は手加減していたのだが…転がって落ちたのは自業自得だろ…。




と、心の中でツッコミを入れつつ、ようやく目覚めた寝坊助幼女に呆れつつ再び問いかける。




「すまんな、大丈夫か?」




と、問いかけるとコンは何とも理不尽な怒りをぶつけてきた。




「フーーッ!一度ならず二度三度と…よくもワシをいじめてくれたのぅ…!もっと優しく起こさぬか!」




いや、十分優しく起こして…その結果ダメだったのだが…。




「いや、優しく起こしても起きなかったお前が悪い!」




一度目が合って、それで尚二度寝に励もうとしたことはどうやら覚えているらしい。




歯を食いしばり、ばつが悪そうに眼を反らすコン。




「ぐぬぬぬ…おぬしぃ…覚えておれっ!」




と、心底悔しがっている様子だが、このまま漫才をしている訳にはいかない。




そもそも、朝食が冷めてしまうかもしれないから呼びに来たのだからさっさと来てもらわねば困る。




「ほら、起きたなら顔洗ってこいよ?母さんが朝食作ってくれてたから…冷めると勿体ないぞ?」




と、言うとコンはすぐに目をぱああっと、輝かせて言う。




「なんじゃ、それをはよ言わぬか!ふへへ…腹~へったのじゃ~…」




と、涎を垂らし手の甲でそれをずずずと拭うとコンはぴょんと軽やかにベッドから飛び降りると、俺の頭上を越えてドアの前に空中一回転を決めて軽やかに着地する。




「先に行っておるぞ?おぬしも早く来るがよい!とーこのご飯…楽しみじゃ~!」




と、階段を駆け下りて行ってしまった。




どたどたと階段を駆け下りる音がしたかと思えば、階下からはガラッと扉をスライドさせる音と、元気なコンの声が響いてきた。




「とーこ!ごはんなのじゃ!」




と、挨拶もそこそこに食欲優先のコン。




昨日あれだけ食べたのに、起きた途端にこれだ…。




ご飯の話をすると、痛みを忘れてしまったのかもうすっかり満面の笑みだった。




額はまだうっすらと赤く、ぶつけたあとが残っていたが、それも全く気にならないらし。




神様幼女の食欲恐るべし。




「はぁ…なんつー食欲なんだよ…」




と、悪態を吐きながらも、俺もその後を追ってリビングへと向かうのだった…。







そうこうしている内に、スマホの時刻を確認すると現在時刻は七時。




今現在リビング兼キッチンには俺とコンとばあちゃんと母さんの四人で食卓を囲い、朝食を摂っている所だ。




今日のメニューはご飯、スクランブルエッグ、豆腐とワカメの味噌汁、大根の浅漬けと日本人の一般家庭なら割とオーソドックスな軽めの朝食だ。




先程のコンとの朝のやり取りで、多少時間は経ってしまっていたが、その間に母さんが温め直してくれていたので、実質出来立ての様に各種お皿からは湯気が立ち込めていて、なんとも美味しそうな匂いが立ち込めていた。




「うぬ~…この、すくらんぶるえっぐ?とかいうやつも美味しいのぅ…ケチャップ?とかいうソースをかけると甘じょっぱくて実にうまいのじゃぁ~…とーこ、おかわりはあるか?もっと欲しいのじゃ!」




「ええ、あるわよ~…コンちゃんが一杯食べると思って、多めに作っておいてよかったわぁ~…ちょっと待っててね?今持ってくるわ…」




と、朝からエンジン全開で食べ進めているコン。




子供用のプラスチックのスプーンを使ってあぐあぐと器用に口に運んではいる。




だが時折スプーンの上からおかずが落下してテーブルを汚してしまっていたが、本人は全く気にした様子もなく、美味しそうに食事を続けていた。




ご丁寧に口の周りにはケチャップが付着しており、都度母さんが拭ってはいたが、口に大量のケチャップをまぶして食うもんだから、一口食べる毎にべとべとにしてしまっていたが。




「とーこは料理が上手なのじゃ!ハルの稲荷寿司も美味いが、とーこの作るご飯は優しい味じゃ~」




行儀よく椅子に座り、食卓についているコンだったが、ご飯を食べている時も尻尾や耳は激しく揺れ動いており、美味しい、美味しいという度にパタパタと興奮気味に揺れていた。




と、母さんの料理にべた惚れのコンなのだった。




まあ、確かに美味しいのは認めるがな。




スクランブルエッグも絶妙な塩加減で、これ自体をおかずにご飯が食べれるくらいには塩味が付いている。




そこにケチャップを足せば、店で食べるふわふわのオムレツの様な味になり、一度で二度美味しく食べられる我が家の人気朝食メニューだった。




味噌汁もお出汁をしっかりと取っていて、カツオと和風出汁の合わせ出汁だ。




具材にワカメと豆腐が入っていて、良いアクセントになっている。




つるんとした食感の豆腐と、シャキシャキと歯ごたえのあるワカメの食感がケチャップの酸味を良い感じに洗い流してくれて、最後まで飽きずに食べ進める事ができた。




また、大根の浅漬けも幅二センチくらいの厚めに切られており、嚙んでみるとガリッガリッと、子気味良い音を立てて口に塩気とお酢の酸味が広がり、食感も相まってよい箸休めになった。




ある程度食べ進めていると、ばあちゃんが声を掛けてくる。




「んで、そろそろいいんでないかい?昨日の話って何だったのさ?」




ずずずと味噌汁を啜りながらばあちゃんは尋ねてくる。




昨日の話とはいっても、まあ今日の予定を立てたくらいだから別にそこまでもったいぶる話でもないのだが。




俺は一度箸を止めて、コップに入った麦茶を一口飲んでから言う。




「今日の予定について話てただけだよ。後は仙狐水晶探索の目途が立ったくらい」




そういうと、ばあちゃんは「そうかい」と、言って漬物をがりがりと齧っている。




咀嚼も終わり、漬物をを嚥下したばあちゃんは、お茶を一杯飲み干すとコップに追加の麦茶を注ぎながら訪ねてきた。




「んで、今日はどうするんだい?」




俺は素直に今日のプランを話すことにした。




「今日は街に出てみようと思う。仙狐水晶を奪った犯人捜しはもちろんなんだけど、ついでにコンの服やら生活用品を買い揃えようと思って」




スクランブルエッグを口に運び、白米をかっこむ。




つやつやの白いお米は噛んでいくとじんわりと甘みが広がり、卵のしょっぱさも相まってそのうま味が引き立っていた。




「ふーん?ま、それならがんばりな。一応皆には後で連絡しておくから、何か分かったらまた連絡すればいいかい?」




と、ばあちゃんは昨日のことも覚えていた様だ。




「ああ、それで頼むよ。お昼は適当に外で食べてくるよ。夕飯は…後で時連絡する」




「そうかい」




と、短く返事をするとばあちゃんはご飯と味噌汁をかっこみ、朝食を平らげた。




「ごちそうさま!」




と、ばあちゃんが食べ終わると同時に俺も丁度食べ終える。




「ごちそうさま」




そう言って皿を持ってシンクに持って行き、表面の汚れを軽く水で流して漬けておく。




「コン、もう少しゆっくり食べててもいいぞ。樹と花奈に連絡入れるから…そうだな…大体10時頃くらいに待ち合わせて行こうか。それまでに準備しておくんだぞ?」




と、コンに声をかけると相変わらず美味しそうに食事を続けているコンは口に着いたケチャップをシャツの肩口でぐいっと拭って、目をぱちくりさせながら元気に返事をした。




「あい!なのじゃ!」




ぴょこんと、椅子から飛び上がる勢いでスプーンを持ったままの右手を上げてニコニコと上機嫌のコン。




「こら、もっとお行儀よ食べなさい。ご飯粒をとばすんじゃない!」




「うまうまなのじゃぁ~」




と、茶碗に口をつけてスプーンで白米をかっこむコン。




それじゃ行儀が悪いというより、恐らく固まっていれば問題ないだろうが、炊き立てのお米は粒だっており、どちらかというと纏まりが弱く、スプーンで掬ってもポロリと零れてしまうのだろう。




そういうもどかしさを感じて、コンなりに試行錯誤した結果、茶碗に直接口をつけてかっこむという手段にでてるのだろうが…。




ま、外じゃないしちょっと手助けしてやるか。




食事を楽しむことは悪い事ではない。




むしろ、美味しく食べてくれればそれでよいのだ。




食べやすくなれば、行儀や作法もその内身に着くだろう。




俺はそう思い、戸棚からラップを取り出し程よい長さで千切ると、そこへ炊飯器から白米をしゃもじで掬って乗せる。




軽く握って形を整え、三角形の綺麗なおにぎりの完成だ。




「ほらコン、これならどうだ?」




熱々だがある程度圧を掛けて固めてあるので、一口ずつ齧って食べれば零す心配もない。




問題はそれが上手にできるか、だが…。




まあ、そこはしっかりと教えて行けば問題ないだろう。




おにぎりをコンの前に持って行くと、コンはスプーンを置きそれを手にする。




「あちっ、あちっ…」




と、右手と左手を行き来させる様を見て苦笑しそうになるが、しばらくすると持てる熱さになってきたのか、両手で包み込む様にそれを持つとこちらを覗き込むコン。




「おむすびなのじゃ!食べてもよいのか?」




おっと、流石にこれは知っていたか。




「ああ、熱いからゆっくり食べろよ?」




「のじゃ!」




と、そのまま齧りつこうとしているコンを必死に止めて、ラップを剥がして渡す。




しかし、一度渡したものを取り上げられたのを不服に思ったのかコンは不貞腐れた様子で抗議してくる。




「なんじゃ!食べても良いと言ったではないか!?」




「そのまま食うやつがあるか!せめてラップは剥がせ!」




少し呆れてしまったが、知らないのなら仕方ない。




と、心の中で納得して説明してやる。




「らっぷ?」




「ああもう、その…薄い透明の膜みたいなやつだよ。それは手を汚さない様にするために巻いてあるの。それは食べられないから剥がして食べるんだぞ?」




コンは説明を聞いて、自分の手の中にあるおにぎりと、俺の顔を見比べると、言われた通りラップを少し剥がしておにぎりを齧る。




「んまっ!」




と、ようやく口にできたそれを美味しそうに頬張るコン。




「ったく…危なっかしいなこれは…」




と、言ってる間にコンはまどろっこしくなったのか、包んでいるラップを全て剥がし直接おにぎりを手掴みにしてパクパクと口に入れていった。




「んまいのじゃあ~…」




「だあああ!それじゃラップの意味がないだろうがっ!」




俺のツッコミにコンはきょとんとした様子でこちらの様子を伺いながら、不可解な物を見るような目で見つめてきた。




「何を言うておるのじゃ?食えぬから剥がして食えと言ったではないか…?」




まあ、後で手を洗えばそれいいか。




俺は半ば諦めつつ、がっくりと肩を落として言う。




「ふぅ…。もう、いいよそれで。美味かったか?」




「うむ、美味しかったぞ!ありがとなのじゃ!」




花丸満点笑顔とでもいうのだろうか。




コンは満面の笑みを浮かべてこちらに礼を言うと、残ったおかずや味噌汁に手を伸ばし、相変わらずお行儀は悪いが、直接口に皿を付けてかっこんでいった。




「どういたしまして…はぁ…。」




「ごちそうさま、なのじゃ!」




と、満足げにポンと腹を叩いて全部平らげたコンはしゅたっと椅子からジャンプすると、俺の正面へ着地した。




「して、そのしょっきんぐ…とやらにはどうやって行くのじゃ?」




と尋ねるコンに俺はもう一度ため息を吐いて、言った。




「まずは、手と口をそこで洗ってこい…話はそれからだ…」




と、洗い場を指さすとコンは「ん?」と、顔いっぱいにクエスチョンマークを浮かべていたが、母さんが手を引いて洗い場の方へと連れて行くのだった。




「ほら、コンちゃんお口が汚れているわ。ちゃんと洗って綺麗にしましょうね~?」




「ん?そうか?わかったのじゃ~!」




と、大人しく連行されていくコンを見送るのだった…。




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