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1話 人選ミスぅ!?


 アルフレド・フォン・クロイツは、自室のベッドの上でシーツを被り、頭を抱えて震えていた。


(初陣の時の王子やパン屋のおっちゃんの最期の表情が、目に焼き付いて離れない……)


「若様。当主様が書斎まで来るようにとお呼びです」

「ああ。分かった。すぐに行くよ」


 使用人の声に、なんとかいつも通りの声で返事をして、身だしなみを整えてから父の書斎に来た。父の隣には、30代くらいの哀しそうな目をした金髪の女性が立っていた。


(アメジストみたいな、あの目が……。俺が戦場で殺した、王子とそっくりだ)


「新しい側室を紹介しよう。亡国元王妃のセリンだ」


 彼の父、バルドリック・フォン・クロイツ公爵。

アルフレドは、父と容姿が髪の色以外瓜二つであることを嫌悪していた。


「つまらないんだよ……。15とはいえ、我が跡取りが初陣のトラウマを抱えている事が。相応しくない」


 バルドリックは立ち上がる。戯れにセリンの腰に腕を回し、彼女の頬に手を添えて言った。


「セリン。お前にはザヒル王子がいたな。この子と同い年くらいの」

「はい、あの子は15歳でした」

「そうか。ザヒルを戦場で殺したのは、アルフレドだ」

「ひっ……!?」


 アルフレドはセリンの自分を直視する視線に耐えられなかったが、なんとか平静を装った。


「戦争中は15歳で成人だったが。今はもう、成人年齢は18歳に戻ったからな。お前も成人したら、クラリスが嫁いで来る前に練習してもいいぞ?クロイツ家の血を引いていれば、どちらでも構わんからな」


 ビクリと震えたセリンを見て片方の口角を上げると、バルドリックは彼女を解放し、座り直した。


「ちちうえ……?」

「ははっ、半分ジョークだ。そんな顔をするな。彼女にはスペアを産んでもらわねばならんからな。後継確保の術を後でかける予定だ」

「…それは、セリン妃に代償が掛かるのでは?」


 窓辺の席に座るバルドリックの金髪が日に当たって輝いている。春の日差しのように微笑んでいるが、彼の灰青色の目は、ただただ冷たい。アルフレドは震えそうになる体を必死に抑えつけた。


「一部感覚消失程度だ。心配するな」

「俺、部屋に戻ります。失礼します」


 胃が絞られるような思いをしながらも、なんとか自室に辿り着く。そして、魔力紙に書かれた防音の魔法陣を作動させた。


(もう、これで泣いても大丈夫……)


「誰かっ……。だれか、たすけてくれ……」


 その場で蹲り、泣きじゃくるアルフレドの前に、複数の淡い光の粒と共にリーマンの魂が現れ、彼の中に入った。


「いやいや、人選ミスぅ!?」

「僕、ぽやんとしてて可愛いとかいじられてた、平凡な24歳リーマンですよ!?」



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