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第5話(累計 第52話) 模擬戦開始! 僕、プロと戦う。

 海兵隊のお兄さん方からお声を掛けられた二日後。

 僕はパワードスーツM3に乗って一人、闘技場に立つ。


「教官。これ、どこまでやっちゃって良いんですか?」


「そ、そうだなぁ。大尉曰く、若手の奴らが天狗になってっから、その高い鼻を叩き折ってやってくれっていう感じの話をしてきたんだ。だから、手加減無しで良いぞ。機体も少々壊しても構わん。怪我も骨折までなら許す。ただ、殺人技は使うなよ。間違ってもバックドロップは禁止だ!」


「はいです。しかし、教官。よく『天狗の鼻を折る』って日本語を知ってましたね?」


「まあ、言いたいことは分かるからな。因みに英語だと天狗になるは『become big-headed』だ」


「大きな頭って意味なのね。わたし、ことわざ関係は日本語も英語も詳しくないから勉強になるわ」


「そんな事より、心配やないんか、アリサはん。マモルはんが、強そうな兄ちゃん達に囲まれてはるで?」


「マモル殿なら大丈夫でござろう。射撃戦ならいざ知らずでござる」


 皆、観客モードで気楽に話しているのが通信機越しに聞こえてくる。

 僕としては、殺し合いじゃないのと射撃をしなくても良いのは気楽だ。


 ……プロのお兄さん相手だから、僕は負けても当たり前だもんね。でも、指揮官の大尉さん。何処で僕の腕前を聞いてきたんだか? ここでは、まだ数回しかパワードスーツには乗っていないのに?


「マモル、向こうは小隊単位。四人らしい。小隊長以外はスーツでの実戦は無いが、訓練校では優秀な成績だったそうだ。連戦になるが、大丈夫か?」


「そうですねぇ。手の内がどんどんバレるのは嫌ですが、流石に四人で同時に掛かられたら僕、死にますからね。なんとかします。因みに向こうの大尉さんは、何処で僕の情報を知ったのでしょうか?」


 僕は苦笑しながら教官に、四人相手のOKを出す。

 例え負けても、僕のプライドは傷つくものじゃない。

 ただの学生がプロに勝つこと自体が普通じゃないのだから。


 ……そういえば、僕が倒せたヤーコフってどのくらいパワードスーツに乗っていたんだろうかな? 弱いイメージはなかったけど。


「それは(それがし)が説明するでござる、マモル殿。米軍内部の会員制動画サイトにマモル殿とヤーコフの戦いがアップされているのでござる。

日本自衛隊の機体が録画した映像らしいでござる。おそらく、そこから情報を仕入れたのでは無いかと思われるでござろう? 

因みに、この基地回戦からも動画が見れるので、既に某は個人的に保存済み。後から皆で一緒に見るでござる」


「ユウマくん、いつのまに軍の回戦をハッキングしたの? 後でわたしにもコピー頂戴ね!」


「ウチにも見せてぇなぁ。マモルはんの初陣、ゆっくり観察したいねん」


 ユウマくんの爆弾発言で皆が大騒ぎ。

 まあ、ユウマくんの情報収集能力の凄さは今に始まった話じゃない。

 僕としては今までも大助かりしているから、気にしないでおこう。


 ……グレーな情報入手手段っぽいのは、今更だものね。


「お、オマエらなぁ……。まあ、他の情報ならいざ知らず、本人達の映像なら……。ん? ユウマ、お前! まさか、他の情報を勝手に盗み見したんじゃないよな?」


「某、情報を勝手に流布はしないでござる。そこは安心するでござるよ、教官殿?」


「そうね、ユウマくんなら悪用しないとわたしも保証するわ、教官。わたしの個人情報も何処まで知っているか分からないけど、悪用された事は一度も無いし」


 ……ユウマくん、それ盗み見たって自白してるじゃん。でもユウマくんは、アーシャちゃんに信用されているんだね。僕も信用しているよ。


「ん、これは文字情報。え、戦うお兄さん達の個人情報だ。ユウマくん、ありがとね」


 僕の乗る機体宛にメールが送られてきた。

 そこには対戦相手の情報が掲載されていた。

 僕は「ありがと」とだけ、情報元の端末にメールを送る。


「これだけ『おぜん立て』してもらったら負けられないや! さあ、本気で行くよ」


 僕は機体の各部をチェック、軽くラジオ体操をさせて対戦相手の到着を待った。


  ◆ ◇ ◆ ◇


「Hum!」


「お願いしますね」


 何か不満げな感じの先鋒、プラプラと模擬専用の棍棒を振り回す。

 機体を破損させないように緩衝材で覆われた鉄の棒、パワードスーツ同士の戦闘なら致命傷にはならないだろうけれども、対人なら十分凶器だ。


「お互い、遺恨を残さず戦う事。火器及び致命傷になりうる攻撃は禁止。では、お互いに礼を!」


 教官が僕に向けて日本語で、そして相手には英語で試合の説明をしてくれる。


 ……さて、お兄さんはどう攻めてくるかな? ユウマくん情報だと猪突タイプらしいけど。


 しぶしぶと機体の頭を下げた敵機。

 日本の武道を知ってるらしいのは好印象だ。


「Start!」


 教官の初めの声で試合が開始された。


「Humm!!」


 一気に踏み込んで、振りかぶった模擬戦用棍棒を無造作に振り下ろしてくるM4。

 子供相手だと舐め腐った攻撃だ。


 ……では、痛い目にあってもらいましょうか!


 僕は、自分の機体が持つ棒を外方向に回転させ横から敵の棒に当てる。

 すると、敵の振るった棒が僕の機体を狙った軌道からずれて地面にぶち当たった。


 ……後は、このまま接近して!


 空振りで体勢が前のめりになり、更に硬い地面を叩いた反動で機体が硬直する。

 その隙を狙って、僕は一気に密着体制まで踏み込んで、棍棒を放り投げての背負い投げ。


 ドスンと地面に背中を強打したM4。

 引き手を離さず投げたのでそこまで衝撃を受けてはいないはずだが、完全に沈黙している。


「勝負あり! Winner Mamoru」


「ふぅぅ。『切り落とし』成功。M4とM3じゃ、機体パワーが大きく変わらないのが助かるよ」


 M4の方が軽量化されていて動きが早くなる可能性があるけれども、所詮は誤差範囲。

 その差を生かせないのでは、あまり意味はない。

 また機体が軽いという事は投げやすいという事だ。


「マモルくん、さっすがー!」


 観客席では、アーシャちゃんが大きく手を振っているのが、モニターに映った。


「まずは一勝!」


 僕は手を振り返す代わりに、指を一本立てた右機械腕を大きく上にあげた。

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