第6話(累計 第53話) 模擬戦 二回戦め。今度は二人が相手!
「さて、次はどう来ますか?」
動けなくなったパワードスーツを搬送する間、僕は挑発気味に外部スピーカーで話しかけながら、対戦相手の個人情報を見る。
……ユウマくん、凄いねぇ。さては、ハッキングして情報を見たんだね。
残る3人の海兵隊のお兄さん。
僕が倒した人も含めて、全員が原隊でM3に乗っていて、機種転換訓練と熱帯雨林地域での稼働試験も兼ねて来たと情報にある。
……砂漠とかでの演習経験はあるけど、小隊長以外は実戦未経験。小隊長さんもパワードスーツでのCQCは未経験と……。こりゃ、良い当てウマにされちゃったのかもね。僕は逆に射撃戦は未経験だし。
何か言い争う様に上官に文句を言っているらしいお兄さん方。
僕に対して怒りの視線を向けてくるのは困った事だ。
「マモル。すまんが次は2対1でやってくれんか? さっきまで舐め腐っていたのに反動なのか、必ず倒せるシフトでくるって言い出してて、大尉でも止められないんだ」
「マモルくん、無理して勝負を受けなくても良いのよ? あんな馬鹿、後でわたしが闇討ちしておくから!」
「アリサはんのいう通りや! マモルはんはアホ相手にせんでええんで。ホンマやらウチが今から参戦してもええんやが、ウチの腕なら足手まといになりかねんわ」
教官が2対1の変則戦を苦し気に僕に言うと、アーシャちゃんとリナさんが怒った声で勝負を受けなくても良いと言ってくれる。
……アーシャちゃんの闇討ちは洒落にならんからね。本当に夜中に寝室に忍び込んでナイフを首元に押し付けるくらいの事はしそうだよ。
「大丈夫だよ、皆んな。銃で撃たれる訳じゃないから、なんとかなるよ」
「……分かった、マモル。くれぐれも無茶はするなよ。俺はお前らガキ共を無事に親元に返す責任があるんだからな」
まるでお父さんみたいに、心配そうな声で僕に声を掛けてくれるミストロット教官。
僕は、また指導者に恵まれたんだなと感動した。
……宗方先生、僕らは幸せ者ですね。貴方や教官のような素敵な指導者に教えてもらえるんですから。
「はい、教官。必ず勝って帰ってきますね!」
僕は通信を切ると、睨みつける様に頭部カメラを僕の機体に向けてくる2機のM4に視線を送る。
ユウマくん情報通りなら、元々バディを組んでいる二人なので、そこそこ連携はしかけてくるに違いない。
……敵とは大体、八メートルくらいの距離。三歩の間合いだね。じゃあ、頑張りますか!
「では、Start!」
教官の開始掛け声と共に踏み込んでくる二機。
しかし、先程の試合を見ているからか、無暗に模擬戦用の棍棒を振り回しては来ない。
前衛が突き技を行使、後衛が死角に回り込もうとしてくる。
……ふむ。ここまでは定石の動きだよね。だからこそ、動きは想定しやすいや。
僕は背後を取られないように、こまめに移動。
フェイント気味のステップを絡めて、前衛の得意な間合いより、やや内側に踏み込んで攻撃を捌く。
……棍棒を槍の様に振るうから、あまり間合いが近すぎると突く動作がしずらいんだよね。横薙ぎを使えば、まだマシなんだけどね。
「Shit! 〇〇〇」
何か放送禁止用語らしき声を出す前衛。
僕が一回も攻撃もせずに、のらりくらりと攻撃を捌くのが気に入らないらしい。
……お! ここは攻め時。
焦れたのか、前衛はランスチャージ気味に突っ込んできた。
また、後衛も僕を逃がさないと真後ろから棍棒を振り下ろす。
……残念。その攻撃は見切っているんだ。
僕は軽く左斜め後ろにステップバックしながら、棍棒を前衛敵機の足元に当たる様に下向きに凪いだ。
足元の注意がおろそかになっていた前衛M4は、僕が振るった棍棒に足を引っかけて見事に転ぶ。
「よいしょ!」
僕は機体を右回転、半身にして前衛の足元を凪いだ棍棒を後衛の振り下ろす棒に下から振り上げて当てた。
もちろん後衛の棒は、僕の攻撃によって弾かれて、僕には届かない。
「What?」
敵からすれば、後ろの動きを見切っている僕は不思議に見えたのかもしれない。
……サイドモニターで、背後の動きもちゃんと見てたんだけどね。
疑問符を放つ後衛機体。
しかし、ひっ転んだ前衛機体が、そのまま後衛機体にぶち当たった。
「ぎゃ!」
「ぐわ!」
衝突後、悲鳴をあげて転がる二機。
僕は、容赦なく倒れた二機の背中からバッテリーを引き抜いた。
「し、勝負あり! Winner Mamoru!」
教官の勝利宣言が闘技場内に響く。
アーシャちゃんやリナさん、ユウマくんが大喜びをしているのが、望遠にしたモニターに映った。
……反対に海兵隊のお兄さん方は悔しそうだね。そりゃ、僕みたいな学生に全員ボロ負けなんだもん。
「はぁはぁ。連携は悪くなかったですが、武器の使い方が分かっていないですよ? 杖術を覚えておくと良いですね。あ、教官。今の話を後で宜しくお伝えくださいませ」
「あ……。ああ、分かった。しかし、マモル。本当にお前は何モノだ? 本当にパワードスーツのオペレーターになって、まだ数カ月なのか?」
少し息を切らせた僕は、教官に敵の敗因を教えた。
それを聞き、驚きの声を出す教官。
確かに僕がパワードスーツに乗って、まだ百時間も経っていない。
そして実戦やそれに順ずる戦いも、これでやっと四戦目だ。
「僕、普通の高校生ですよ? ただ、少々武術とミリタリーをたしなんではいますけどね?」
……僕、確かにチートかも。ただ、生身じゃ爺ちゃんの道場で多人数戦は何回もやったからね。あと、杖術も基本は爺ちゃんに習ってるし。
杖を使った武道、杖道にある言葉、「突かば槍、払えば薙刀、持たば太刀」。
様は固定概念を捨てて、棒全体を武器として使え、変幻自在の攻撃こそが杖道の理念。
力任せの攻撃では、上手く扱えないのだ。
……僕が使う『切り落とし』は本来、刀での技なんだけどね。それに、僕のバージョンは本家、小野一刀流や北辰一刀流なんかのとは違って真正面から切り合わずに後ろ横から当てるんだ。
生身の僕には、真正面から剣をぶつけ合う度胸も膂力も無い。
剣の軌道に対し、横から武器を当てて軌道を逸らす方が楽だし、力も少なくて済む。
歩法を絡めれば、只の上段からの「唐竹」、上段切りは怖くない。
「マモルくん、すっごい! 流石はわたしの大好きなマモルくんなの!」
「ありがとね、アーシャちゃん。さあ、次も勝つよ!」
僕は、痛い程の視線を残る一機のM4から感じた。




