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魔弾の錬金術師は復讐に生きる ~亡き最愛の妻は吸血鬼だった~  作者: 結城 からく


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第35話 錬金術師は名乗る

「くそ、待ちやがれっ!」


 後ろから怒声が聞こえてきた。

 対する私は足早に移動する。


 通行人が何事かと見てくるが、止めようとする者はいない。

 余計な問題には首を突っ込まない主義なのだろう。

 治安の悪い街だから、そういった指針でなければ生きていけないのだと思われる。


(この辺りでいいか)


 私は目に付いた路地に飛び込んで、そのまま直進した。

 寝転ぶ浮浪者やごみを飛び越えて加速していく。


 明かりがないので常人は歩きづらいだろうが、吸血鬼の私にとっては見通しの良い場所だった。

 追跡してくる傭兵達を確かめつつ、適度な距離感を保って移動する。


 そのうち私は行き止まりに突き当たった。

 振り返るとそこには傭兵達がいる。

 既に銃を抜いており、それぞれ銃口を渡しに向けていた。


「はは、それ以上は逃げられないぜ」


「顔を見せやがれ。ローンをどこへやった」


 ローンとは私が絞め殺した傭兵の名だ。

 彼らの帯びる殺気からして、既に彼が死んだものと考えているらしい。

 返答次第では今にも発砲してきそうだった。


 私はゆっくりと手を動かすと、フードを脱いで素顔を晒した。

 それを目にした傭兵達は顔を驚愕の色に染める。


「なっ」


「お、お前は……ッ!?」


 彼らの銃口が僅かに下がっていた。

 射線から私の身体は外れている。

 驚きと動揺のあまり気付いていないようだった。


「憶えているのだな。自分達が殺した男の顔を」


 私は呟く。

 傭兵達は無言で息を呑んだ。

 一人などは恐怖で後ずさり始めている。

 彼らには私がどういう風に見えているのか。


「――妻の遺骨を返せ。それは私のものだ」


 私はそう告げると同時に疾走した。

 傭兵達は慌てて銃を持ち上げて、引き金に指をかけて発砲する。


 彼らの一連の動きは、私には妙に遅く見えていた。

 迫る弾丸の軌道まで認識できている。


(吸血鬼の特性が強まったのか?)


 私は奇妙に思いながらも横へ跳び、軽々と銃撃を回避する。

 勢い余って壁に張り付くと、そこから壁を蹴り進んで傭兵の側面へと回り込んだ。


 彼らは闇雲に銃を乱射している。

 私の軌跡を追うように視線を動かしているが、明らかに追いつけていない。

 見当違いの箇所に弾丸を放っていた。


(私が速すぎるようだ)


 とにかく好都合なことには違いない。

 壁を蹴って傭兵達に跳びかかると、一人の頭に拳銃を押し付けて発砲する。

 傭兵の頭部が弾けて吹き飛んだ。

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