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魔弾の錬金術師は復讐に生きる ~亡き最愛の妻は吸血鬼だった~  作者: 結城 からく


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第17話 錬金術師は街を発つ

 私は夜明けと共に街を出発した。

 乗合馬車の横を通り過ぎて、何食わぬ顔で街道を進んでいく。


 目深に被った外套には、血臭がこびり付いていた。

 擦って落とそうと試みたが、染み付いて取れずにいる。

 赤黒い汚れもしっかりと目立っていた。

 あまり汚れ過ぎると不審がられる恐れがあるので、どこかで着替えるべきだろう。


 私は地図を片手に歩く。

 こまめに方角を確認するも、大きなずれはない。

 複雑な地形ではないため、よほどのことがない限りは見間違えることはないはずだ。


 次の目的地はナリア公国であった。

 その中央地である公都が行き先だった。


 店長からの情報提供によると、傭兵達はそこに遺骨を運んでいるらしい。

 公都まではここから徒歩で数十日はかかる。

 馬車でもそれなりの手間だろう。


 いくら傭兵達が急いでいたとしても、まだ到着していないはずだ。

 なんとかして彼らに追いつきたいところだった。


(何か移動手段が欲しいところだな)


 さすがに徒歩では追いつけない。

 どこかで馬が調達できると話が変わってくる。

 道次第ではかなりの時間短縮になるだろう。


 街中で馬を手に入れられれば良かったが、資金に乏しい現状だと盗むしかない。

 そうなると衛兵に捕まる可能性が発生してしまう。

 店長の死もいずれ露呈するだろう。

 それまでに街を出ておきたかったのである。

 何にしても牢獄に放り込まれるような事態は避けたいので、このように徒歩を選んだ。


(どこか街とは違う地点で馬が確保できるといいのだが……)


 考えながら私は背後を一瞥する。

 追っ手はいない。

 やや寂れた街道が続くだけだ。


 それから私は無言で移動を続けた。

 何事なく時間が過ぎて、やがて夜が訪れる。

 視覚的な不利がなく、疲労もない私は足を止めずに進み続けた。


 これだけでも傭兵達との距離が縮まっているはずだ。

 彼らは休息を挟みながら行動しているに違いない。

 長い旅路なのだから、無理な行程は選ばないと思われた。


 私は歩きながら散弾銃の動作を確かめる。

 銃口を切り詰めた改造版だ。

 各部品の不調の有無を点検し、それが済むと装填済みの弾を外してポケットに収めた。


「…………」


 沈黙。

 少し考えた末、先ほどとは異なる弾を装填した。


 生物を燃やす魔弾だ。

 至近距離で絶大な威力を発揮してくれる。

 基本的には温存するが、強力な敵が現れた際は躊躇いなく使うつもりだった。


 私は右手に拳銃、左手にナイフを握って、夜闇の中を迷わず突き進んでいく。

 太陽が隠れた影響か、五感が冴え渡っていた。

 草むらを揺らす虫の気配も感じ取れるようになる。

 目を凝らせば、遥か遠くまで見通すことができた。


「ん?」


 進行方向から右方に逸れた先から、悲鳴と笑い声が聞こえた。

 私は足を止めて注目する。


 かなり遠くで、いくつかの人影が動いているのが見えた。

 大勢の人間が数人の男女を追いかけているようだ。

 只ならぬ状況であるのはすぐに分かった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 前話での負傷はもう治っているのかな? 本能に抗って吸血を避けているせいで主人公の自己治癒能力に影響が出はしないかと心配だが、 今の所、疲労も無く夜中の強行軍をしてるぐらいだから大丈夫…
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