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プライオリティ  作者: ハヤシ
シーズン2
34/73

エピローグ 共鳴

<サギー>


 トウア社会の『反シベリカ』の空気はもう変えられない。


 ならば、逆にそれを利用することにし、私たちはトウア人とシベリカ人を反目させる工作に舵を切っている。


 ルイが一般のシベリカ少年に刺された事件――ええ、もちろんこの私も関与していたわ。


 でも、私には公安が張りついていた。なので一番目をかけていた工作員に任せることにしたの。

 そう――『彼女』は若いけれど、最上級の優秀な工作員。


 あのトウア中央駅爆破事件で爆破物を仕掛けたのも『彼女』。

 まさか年端もいかない少女が爆弾を仕掛けたとは誰も想像しないでしょう。


 またマハートの件では、暗殺をしくじった五人を始末したわ。


 そんな『彼女』は仲間と共に例の少年を上手く操り、ルイを襲わせることに成功した。


 ただ、ルイを刺したのは素人の一般人。命までは奪えなかった。それが残念でならない。


 できればルイは始末しておきたかった。だから私の中ではこの工作は失敗なの。


 けれど『彼女』を実行犯にするわけにはいかなかった。万が一、治安局に捕まったり、公安に目をつけられるようなリスクは冒したくない。

『彼女』はとっておきの存在。もっと大きな仕事に使うべきだと私は判断した。


 本当はもっとトウア軍や治安部隊の力を削いでおきたかった。でももう、そうも言ってられなくなったの。


 もう世論操作は捨て、トウア人とシベリカ人が対立するように仕向けていく工作を行うことになった。


 でも、これは実に簡単な工作よ。

 憎しみに捉われやすい人間を操るのは実に容易い……。


 これからは時間との勝負。

 シベリカ側としては、トウア軍や治安部隊が力をつける前に早く事を推し進めていかなくては。


 ところで先日、中学校爆破事件で十数人の子どもたちが亡くなったのだけど、トウア社会は大勢の子どもが亡くなるとショックのようね。


 いつも不思議に思う。


 自分の子どもの死を悲しむのなら分かる。けど『赤の他人である子どもの死』に、なぜあれほど大騒ぎするのか分からない。


 医療施設が整えられてない私の故郷では子どもの死など当たり前。地方の田舎ではたくさんの子どもの死を目にする。


 子どもだけではない。炭鉱では百人単位の死者が出ることがある。


 シベリカでは『人の死』はそこいらに転がっている。

 それでもシベリカは人口が膨れ上がり、人口増加に歯止めがかからない。


 人間という種はたくましい。


 もちろん、自分にとって大切な人の死は身が引き裂かれるほど悲しい。

 自分には関係のない人々の死には不感症だからこそ、大切な人の死だけは悼む。


 ――私も『あの人』のことが忘れられない。


 そう、私との未来の暮らしのために、トウアへ出稼ぎに行った『あの人』――外国人労働者としてこき使われ、病気になり、ボロアパートの狭い部屋で独り苦しみながら亡くなった。


 彼は裕福なトウア社会にいながら、貧しかったがため治療を受けられなかった。誰も助けてくれなかった。


 なのにトウア人は、自分たちは人権意識に篤い上等な人間だと思い込んでいる。


 ――だからこそ、私は許せない。


 トウア国は外国人労働者を利用し、今の富を築いてきた。トウア人がやりたがらない仕事を外国人に押しつけ、搾取してきた。


 もちろん、トウア人全てを恨むのはお門違いだということは分かっている。

 でも、たいした努力もしてないくせに裕福な社会の中でヌクヌク暮らしながら善人ぶっている様を見せつけられると何だか虫唾が走る。


 けれど、やっとトウア人の化けの皮が剥がれてきた。トウア社会では今、シベリカ人への嫌がらせや差別が横行している。人権とやらはどこに行ってしまったのかしら?

 なので今では、多くの一般シベリカ人たちもトウア人を憎悪し始めた。


 ええ、私たち工作員はそれを待っていたのよ。


 今、トウア各地に住む一般シベリカ人たちを一致団結させる工作が密かに行われている。


 トウアの公安は人員不足で、たくさんいるシベリカ人の監視は難しい。特に地方にいるシベリカ人たちへの監視体制はほとんど整っていない。


 この機を逃してはならない。

 ――シベリカ人よ、立ち上がれ。共に戦おう。


 今まで、私たち工作員が長い年月をかけてトウア社会に施した絶対平和教育や世論操作は無駄にはならなかったはず。トウア軍や治安部隊の予算を削らせたことには相当、寄与した。


 本当は軍と治安部隊をもっと弱体化させるはずだったけど、そこは予定が狂ってしまった。それだけは悔やまれる。


 ただ、トウアがこれから軍や治安部隊を強化しようと予算を増額し、人員を増やし、装備を整え、その増やした人員を訓練し教育し使えるようになるまで、どんなに急いでも3年以上はかかるはず。


 この空白の時間に、勝負をかけたい。


 戦いの準備は着々と進んでいる。もう私が指揮をしなくても下の者が動いてくれている。

 セイヤとルイは、どこまで私たちの作戦を読めるかしら?


 トウア社会はトウア人とシベリカ人の対立による憎悪の根がどんどん育っている。花が咲く日も近い。


 そういえば、シベリカを擁護するアサト・サハー氏は、また国粋主義者たちに暴行を受けて、ニュースになっていたっけ。


 シベリカ寄りのトウア人は社会的にどんどん粛清される空気にある。


 そのサハー氏だけど……笑っちゃうわね。なぜか彼はトウア人を裕福な強者に見立て「トウアは弱者に分け与えるべき」と考えている。


 ――不遜ね。


 実は、彼のほうがシベリカを下に見ている。シベリカがトウアを飲み込むなど想像すらしていない。自分たちのほうがシベリカより上だと思い込んでいる所以ね。


 だからシベリカは彼に近づき、利用しようと支援するようになった。


 サハー氏はシベリカ系企業から支援を受けている手前、シベリカを擁護する立場を崩せない。

 彼はこれからもシベリカの味方であり続けるわ。


 結局、人間皆、自分が一番かわいいのよ。


 サハーも何とか自分を正当化し、上手く善人を演じざるを得ない。いえ、彼自身は善人を演じている自覚はないかもしれない。

 だからこそタチが悪い。


 正義を装いながら、実は自分の利益を優先してしまう――人間は、自分が優位に立ちたがり、他者を差別したがる生き物――真の正義など存在しない。


 ルイやセイヤはそれが分かっている。

 彼らは自身に巣くう『欲』と『悪』を自覚している。


 リサも成長したようね。ルイが襲われて、血で赤く染まった手を私に向けた時、彼女、いい眼をしていたわ。


 私はサハーのような連中は嫌いだけど、ルイやセイヤ、リサのことは嫌いではないのよ。彼らには何か共鳴するものを感じるの。


 ――これから、面白くなってくるわね。


 ルイの拉致監禁に関わったあの船舶会社は結局つぶれたけれど、それまでに大いに仕事をした。シベリカから相当数の機関銃や小銃、手榴弾などの武器、弾薬を運んでくれた。


 ええ、トウアにいるシベリカ人たちを蜂起させるの。そして、そのバックにはシベリカ軍がつく。その時、トウア国はどう動くかしら。


 今現在、トウアには約210万人のシベリカ人がいる。もしこの中の1%が武器を持って暴動を起こせば、トウアは治安悪化どころか内紛状態になる。


 それに乗じて私たち工作員はトウア軍が動く前にトウア政府の機能を無効化させる。

 混乱するトウアは内紛を収拾することができないでしょうね。


 そんな中、トウアに住む一般シベリカ人が被害にあい、シベリカ本国からは『自国民を守る』という名目を掲げてシベリカ軍がトウア国に侵攻する。


 トウアは、ジハーナやアリアと同じ運命をたどるの。


 ――その時、憎しみで黒く塗りつぶされた私の心は真っ白に浄化される……。


   ・・・

<リサ>


 ルイの傷害事件からまもなく、またマスメディアは大騒ぎをしていた。


 中等学校のある教室に仕掛けられた爆弾によって、そのクラスの大半の子どもたちが死亡した。現場は惨状を極め、その教室内には肉片が飛び散り、黒コゲの、あるいは皮膚が焼け爛れて四肢がバラバラになった子どもの死体で埋め尽くされたという。


 この爆破事件については、私たち特命チームは捜査に呼ばれず、警察捜査隊が動いている。


 以前、そのクラスではシベリカ人生徒への虐めがあって、そのシベリカ人の子が自殺したらしい。

 その子は、ルイを襲って傷害事件を起こし、半年間の少年院送りとなった少年の弟でもあった。

 なので警察捜査隊はその関連性も調べているようだ。


 だけど使用された爆弾は、あのトウア地下鉄中央駅爆破事件と同じタイプのもので、地下鉄駅爆破事件と中学校爆破事件は同一犯人による可能性が出てきた。


 そのことで、シベリカ工作員らの組織的犯行の疑いがあると一部マスコミが報道し、シベリカ人への嫌悪感がより広がった。

 たくさんの子どもが犠牲になったことがトウア人にショックを与えた。あちこちで「シベリカ人はトウアから出ていけ」という声が聞かれるようになり、シベリカ人に対する過激な嫌がらせも増加していた。


 ――こうして憎しみは連鎖し、膨らんでいく。



「サギーが関わっているのかな……」


 この中等学校爆破事件のことでつぶやいた私に、セイヤはこう応えた。


「公安の話だと、サギーに動きはなかったとのことだ。あまりに動きがないのでサギーの監視を打ち切る方向にいくかもしれない。公安のほうも人手不足だからな」


 そう、とにかく今は圧倒的に治安部隊の人員が足りない。それなりの予算がつき、治安部隊が強化されるまで、何とか持ちこたえなくては。



 それからの私は射撃訓練に没頭した。

 ちょっと前まで人権にうるさい連中は射撃訓練を「殺人訓練」と揶揄していたけどね……。


 ――殺人訓練、上等。


 射撃訓練では、あちこちでパタパタと起き上がる人型の的の眉間や心臓を、あるいは走行中のジープに乗った人型の的を撃っている。


 的中すると怒りが鎮まり、憎しみが和らぐ。銃を持っていると気分が落ち着く。


 ――心の中では、私の手はすでに赤い血で染まっていた。


 黒光りする銃は私のお守りとなった。


 お守りといえば……

『発電所立てこもり事件』でセイヤが「お守り」と称して身に着けさせた発信機つきの碧いペンダントはクローゼットの奥深くに眠っているっけ。


 でも今の私が頼りにするお守りはこの『人を殺す道具』だ。


 碧いペンダントをお守りだと呑気に思える時代ではなくなった……。


 戦いを拒否すれば平和が手に入るというのは幻想だ。

 今、それをつくづく身に染みて思う。


 だからなのか……何の覚悟もないくせに単にキレイごとを唱えて善人面している連中よりも……なりふりかまわず戦っているように思えるサギーのほうに共感を覚えるようになってしまった。


 昔、教師だったサギーは『絶対平和主義』を押しつけてきたけど、それは工作の一環だったに過ぎず、サギーも『たいした覚悟もなく善人面した人』が嫌いなのかもしれない。


 ルイが襲われ、私が血に染まった手をサギーに見せた時、サギーは微笑んだ。


 あの時、なぜかサギーに共鳴するものを感じた……。


 サギーも、私のことを認めてくれた気がした。覚悟を見せた私を『対等』と見なした。


 そう、サギーと私は手を血で汚す覚悟を持った者同士。『悪』になる覚悟を持った者同士。


 ――私はやっと、サギーの『本当の敵』になれたんだ。


   ・・・

<アントン> 


 まさか、このオレがルイやセイヤと組んで仕事をすることになるとはな。

 人生、何が起こるか分からないな。


 そんなオレにあちこちからいろいろ誘いがある。

 実はルイ・アイーダと敵対する勢力からもあった。ルイの弱みをオレから引き出そうという魂胆だろう。


 でも、ルイに弱みなんてないぜ。


 ちなみにセイヤにも嫁のリサにもこれといった弱みがない。あるならオレが利用しているって。


 ああ、でも……ルイは単にトウアのために動いているわけじゃないことは確かだな。

 あいつは『シベリカ国からアリア国を完全独立させる』という大そうな夢を見ている。

 それがルイの本当の目的だ。


 ところで平和主義者たちは呑気だよな。あいつら、今のトウアの状況を見ても、未だに「話し合いで解決せよ。そのためには武器を捨てよ。相手の警戒心を解け。さすれば平和が訪れる」なんて主張している。


 理想を掲げるのは自由だけど、それを人に押しつけるなっつーの。オレはイヤだぜ。理想と心中するのは。

 力を捨てて丸腰になったら、あっという間に『オレ様の富と権利』がなくなっちまう。


 その点、不戦のジハーナ人は偉いな。理想と心中したんだもんな。それだけは尊敬するよ。

 お人よしもそこまでいけば『聖人』だ。


 けど、オレは欲深い普通の弱い人間だ。聖人にはなれない。なりたくもない。

 

 対等な立場による話し合いで解決に導きたいなら、相手と同じ力を持つしかない。

 できれば相手より強い力を持ったほうが有利な交渉ができる。この世は基本、弱肉強食だ。


 交渉するのに、何枚かのカードを持っているとする。

 その中でもやはり『武力』というカードは切り札になる。そのカードがあるかないかで相手の態度が違ってくるからだ。


 もし武力がなければ、相手はこちらを見下し、心置きなく攻めることができる。


 反対に「戦うのは不利、あまりにリスクが高い。相当痛い目にあう」と相手が思った時、戦うのを避けて「話し合いで解決したいので、譲れるところは譲る。落としどころを見つけたい」となるのかもしれない。少なくとも攻めることを躊躇する。


 要するに、戦いを避けるには武力を持ったほうがいいという考え方もできるということだ。


 不戦を貫いたがために、やっと手にした富と権利を奪われるくらいなら、オレは戦うほうを選ぶぜ。


 もちろん、戦ったからといって、自分の権利を勝ち取れるかどうかは分からない。


 負けた場合、もっと酷い目にあうかもしれない。多くの代償を払うことになる。

 だから戦わずに黙って耐えるのもありだ。あるいは逃げてもいい。逃げ場所があるんならな。


 つまり、戦うのも戦わないのも、どっちもそれ相当の覚悟がいるってことだ。

 戦わなくても、それなりのリスクがある。


 あの時も――親父と徹底的に戦ったからこそ、オレは虐待から解放された。

 セイヤも戦うことを選び、オレを痛めつけたから、オレの虐めから解放された。


 オレとセイヤは『悪』という点では、けっこう似たところもある。

 そしてプライドもない。


 オレもあいつも、自分を守るために卑怯な手を使ってでも戦い、相手を完膚なきまで痛めつけるという方法を選んだ。平和を愛する善人から見たら野蛮な行為に思えるだろうよ。


 もちろん、相手を痛めつける行為は、復讐心を生み、憎しみが連鎖し、泥沼化していく場合もある。

 オレやあいつのとった行動は『憎しみを生む、平和を乱す悪』だ。


 だからなのか、あいつと共鳴するものを感じるんだよな。


 そして実は……あいつに対してオレは怖れも抱いている。


 そう、セイヤが謝罪に来た時――頭を地面にすりつけて詫びを入れるあいつに、オレは「靴を舐めろ」と言ったんだ。


 するとあいつは躊躇することなくオレの靴を舐め回した。


 その姿があまりにも不気味で、オレは靴を舐めているあいつの顔を蹴り上げた。


 さすがに怒るかと思ったら、あいつは媚びるような笑顔を向けて、再度、頭を地にすりつけた。

 唾を吐きかけても、挑発に乗らず、謝罪を繰り返した。


 オレの皮靴はあいつの唾液でヌメヌメと光っていた。あいつは舌全体を使ってオレの靴を舐め回していたんだ。

 ゾッとした。


 ――こいつは目的のためなら何でもする。こいつに刃向ったら、こいつを裏切ったら、何をされるか分からない……。


 セイヤは己が最優先するもののためなら、ほかのモノは切り捨て犠牲にできるヤツだ。


 棍棒で殴られ続けられた時よりも、入院中に脅された時よりも、媚びた笑顔で謝罪を繰り返すあいつの姿が一番不気味で恐ろしかった。


 ああ、そうだ、あいつは謝罪を装って、実は俺を恫喝していたんだ。とても効果的なやり方で。


 ――あいつが舐め回した靴はあまりに気持ち悪くて捨てた。


   ・・・

<セイヤ>


 ――シベリカは次に何を仕掛けてくる?


 特命チーム専用室で書類仕事を片づけ、手持ち無沙汰になったオレはまた考え込んでしまった。


 シーンとした部屋の中で、窓を打つ雨の音が微かに聞こえる。窓へ目をやると、灰色の雲が重く垂れ込めていた。ここんとこずっと青く晴れ渡った空を見ていない。


 隣の席は長い時間、空っぽだった。リサは射撃訓練で席を外していた。

 彼女の射撃の腕は、今では完全にオレを越えた。射撃に関してはもうリサに太刀打ちできない。

 戦闘においてもリサは頼もしくなった。


 でも本当は……そんな能力を開花させてほしくない。


 オレの口からついため息が漏れる。


 そこへ先輩がトイレから戻ってきた。

「心配ごとか?」


「ええ、まあ……」

 オレは応える。

「治安悪化に歯止めがかからないし、この先どうなっちゃうんでしょうね」


 そう、今のトウア社会の空気は危険だ。

 憎悪は簡単に育つ。そこにキレイ事が入り込む余地はない。


「確かにこの頃、トウア人とシベリカ人の諍いが絶えないよな。おかげでパトロール隊や警察捜査隊は大忙しだ。とても手が足りないらしいぜ。ま、オレらにできるのは、これ以上治安を悪化させないことくらいだよな。不安は憎悪を煽るからな」


 先輩はそう言うとデスクワークに戻っていった。

 それでもオレの気持ちは重く、不安に苛まれたままだった。


 家族と仲間の暮らしを守りたい――オレの欲はただそれだけなのに、それは途轍もなく難しいことのように思えた。


 オレたちが営んでいる暮らしは世界に較べたら豊かだ。

 つまり、オレたちの暮らしは『富』『既得権益』と置き換えることもできる。


『暮らし』=『富』を奪われるのは嫌だ。

 それを守るためならオレは何でもするだろう。 


 ただ、同じように……シベリカ中央政府も『富』を求め、己の国が豊かになるために何でもするのだろう。


 そういうことでは、シベリカとオレは似たもの同士かもしれない……。


 いつの間にか、オレは西へ顔を向けていた。トウア国の西の海を隔てた先には大国シベリカが構えている。


 雨が激しく降っていた。窓の外の風景が蜃気楼のように揺らぐ。


 ――本当の戦いはこれからだ。

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