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キラメキDaughters(ドーターズ)  作者: 千賢光太郎
11話 「王様の言うことは絶対」は突き崩せるのか?
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乗っ取られた王様と戦う私と「俺」

お読みいただきありがとうございます。

語り手の明日谷大和君、一人称は「俺」で、人前だと「僕」

ナデシコに変身すると「私」です。

では急いでお楽しみください。

しまった!


俺たちの体は「誰か」に動かされ、ひざまずいた。王の顔がまた醜くなった。


「貴様、先ほどはよくも蹴ってってくれたな」


ぐお。腹部を思い切り蹴られる。痛みがキラーウイルスのようにあちこちに広がる。


「お前さえ来なければ、俺は一生楽しい生活でいられた。お前が俺を出ださなければ、追い出さなければな!」


いたい……。


「これくらいにして、あいつらとお菓子を食べに行くか」


こ奴がむくりと起き上がる。くう、みんなを食べられてたまるか。しかし、いいのか。邪悪はタケルを蹴飛ばし、元来た道に引き返そうとする。迷うな、声に出せ!


「おい、そこの傲慢な豚野郎」


カナセが大声で醜い王をののしる。


「お前は豚よりもひどい。豚だって友達や家族を思いやる、愛にあふれた生き物だ。ところがお前ときたらどうだ。自分しか考えない。王様の命令は絶対といえば、誰もが従う。お前の人生は従わせないと、誰もついてこない。ああ、哀れで情けない野郎だ。愛する、愛されるってことを知らないんだもんな、大和」


「貴様……」


悪魔がカナセに向かってくる。覚悟を決めろ。


「待て、こいつを殴る前にまずは僕を味わってみないか? もちろん、男としての僕じゃない。女としての私、キラナデシコをだ」

「お、おい、大和」


俺は指をさす。カナセが喧嘩腰にならなければ、俺は何もできないまま、最悪な結末を迎えただろう。


「お前を、男のお前をか?」

「僕が変身をしたら女の子になるんだぞ、さっき見ていなかったのか?」


淫欲野郎がにたりと微笑む。カナセ、タケルに目をやった。


「なら変身をしろ。しかし大きな力は封じる。限定的にナデシコとしての力を戻す。王様の命令は絶対!」

「輝け、私の希望――」


変身はできたが力は出ない。唾液を垂らし、犬のように近づいてくる。


「さ、踊りましょ。踊ったほうが盛り上がると思うし」


私はいつもアスナに合わせて踊っている。なのでどんな踊りをすればよいかわからない。そこで「彼」の出番。私の中にいる「彼」に踊ってもらう。


「見て、王様、私はダンス教室で大会に出場するために踊っているの。トルネイドファイアラッシュ!」


私は下着を気にせず、龍が渦を巻いて暴れ狂うように踊る。奴は口をぽかんと開けている。


「カナセ、手伝って」

「手伝えって何を」

「私に負けないダンスをして」


彼女の目を見る。微動だにしない表情を彼女は浮かべ、バク転を始めた。


「どうなっても知らないぞ」


何がどうなるのか、私にも知らない。でもこれでいい。つばを飲み込み、醜い影の手を握る。


「は、貴様」

「ほら、踊りましょ」


私ができる甘い声を出し、胸を奴の顔にはさめる。由良に愛良が時折やっていることだ。男なら必ず喜ぶ。


「踊った後はめちゃくちゃにしていいのよ」


ああ、なんてことを言うのだ、私は。でも、こうして油断を誘うしかない。あなたはこんな私を蔑む?


「僕もいいぞ」


カナセも暴君に抱き着いた。胸が全く膨らんでいないけれど、彼女なりに頑張っている。ありがとう。彼女は私の目を見てうなずく。


「がははははは、お前たちが油断を誘って私を追い出そうとしていることくらい、わかっているんだよ。二人ともとまれ、王様の命令は絶対!!」


体が動かない! みだら牛が私の服を脱がし、青い息を吐いて、臭い汗を出し、紫色の大きなものを握る。

私はとうとう奪われる。


「今よ、タケル、蹴れ」


私の言葉に暴君が後ろを向いて、タケルをにらむ。タケルは口をただ開けて、立っていた。


「タケル、貴様はそこで止まれ、王様の命令は」

「タケル、奴を蹴り飛ばせ、クマノ陛下の命令は絶対」

「貴様」


奴は私を殴る。


「おい、タケル、お前、自分の王様をも助けられない弱虫なのか。僕には見える。蹴れと言っている。お前のすぐ隣で囁いているのに、王様を蹴ったら自分の地位が追いやられるところ、自分の地位を気にしているのか、弱虫。明日谷大和もそこまでは弱くないぞ」


体は止められても、私とカナセの口は動く。タケルがもしだめなら、まだ油断する戦略はある。


「黙れ、みだらな屑ども、黙れ、お前たちはしゃべれない、王様の命令は絶対!!」


口をふさがれた。動けない、しゃべれない。八方ふさがりか――


「入れてやる、ぐううへへへへっへえええええ――!!」


タケルが王様の股間を蹴り飛ばした。


「あぎゅううううう……」

「体が動く、話もできる」

「カナセ、墓を開けて」

「おう」


紫の影が出る。カナセがすぐふたを開けた。


「……マナテ、バリアが取れたって? 僕が道を示すから今すぐ来い」


カナセは自分の胸に手を当て、目を閉じて大声で話す。双子の通信技術、すごい。


「紫の影よ、二度と取りつかせない、きらきら炎の舞」


私は絶対命令に対する怒りもこめ、炎を影に向ける。奴はちぢこまり、丸っこい玉になった。


「ナデシコ」

「アスナ、ココア、今すぐ浄化するよ」


アスナに合わせ、私たちは歌いだした。


「やだ、やだ、消えたくない、もっとわがまましたい――」


影は見えなくなった。はあ、お風呂に入りたい。カナセが私の肩を叩く。


「お前が手伝えと言ったとき、びっくりしたよ」

「あれに意味はないよ。私の中にいる彼がとっさに思い付いたんだって、とにかく油断をさせて、本当は彼が蹴るつもりだった。あいつ、自分の身を守るカンは冴えていた。タケルも封じられたら今頃、どうなっていたか」


私の中にいる彼は私であって、私ではない。彼はどんな言葉を発しているか私には聞こえない。でも、本能がとても働く。仮にタケルも封じられていたら、私はやられていたかもしれない。

お読みいただきありがとうございます。

もしこのとき、猛が蹴らなければ、成人コーナーに行くところでした。

次回は惑星プロキオンの後話とクイズの回答です。


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