真の友、不思議な犬と猫、陽気な姉と食われた彼
おはようございます、語りは須田愛良ちゃんです。一人称はすべて「私」です。
では、ごゆるりとお楽しみください。
「英子」
「song your heart」とロゴが付いた薄青の長そで、ぬるい風を受け流すシルクのスカート。私の友達、小野田英子が一人で立っていた。
「二人とも、デートしているの?」
「「いや、これは……」」
英子がため息をはいた。
「大和なんかと付き合ったら、愛良の今後が心配だけど」
「なんでだよ」
大和君が食ってかかる。
「大和と愛良は性格が似すぎている。どっちかが落ち込んだらもう片方も落ち込む。私は小学校からあんたたち二人を見ているからわかる。私はこれから友達と遊ぶから、このあたりで。あ、そうだ、愛良、由良お姉ちゃんにここで会ったよ」
「由良?」
大和君がつぶやいた。
「愛良には大和なんかより、大二郎みたいな子がお似合いよ」
英子が私たちに手を振る。大和君の唇がムズムズ揺れる。
「愛良ちゃん、よく小野田と友達になれるな」
「英子は私の良いところも悪い部分も遠慮なく言うよ。英子が言ったんだ。私は頭の回転が速いけれど、普段はぼーっとしているんだって。だから英子に似合うのは頭の回転は遅くても、ぐいぐい引っ張ってくれる大二郎君が合うんじゃないかって」
大和君は頬の筋肉をきゅっと引き締める。私は余計なことを言ってしまった。
「英子の奴、僕については何か言ってなかった?」
「大和君が暗くなっても、明るくふるまえる女の子が合うって。私は大和君と一緒に明るいときは明るいけれど、暗いときは暗い。だからやめた方がいいって」
大和君は顔を上げた。ゆら……と聞こえた。
「今、由良って言わなかった?」
「言ったよ、どうして」
「私の姉が由良って名前なの」
大和君は口を大きく開け、ゆっくり閉じる。姉、由良は2つ上の高校1年生で遊び人だ。私もよく姉と一緒にあっちこっちのゲームセンターで遊び、コインゲームでは姉と一緒に手伝い、ダンシングやホッケーでは姉と戦って、負けると悔しい。――どうでもいい話だったね、今の。
「わんわん」
「こら、私の胸をかまないの」
「由良、どうしてここに」
大和君が指をさした。
「あなた、誰……愛良じゃん。もしかしてこの子、彼氏?」
姉だ。黄金色の犬を抱いている。
「お姉ちゃん、どうしてここに」
「どうしてって、友達と待ち合わせしていたんだけど、友達が急に倒れたから、帰ろうとしたの。そしたら英子ちゃんを見かけて、その後愛良を見て……ねえ君、なんで私を呼び捨てにしたの? それに名前は、愛良の彼氏君」
大和君は頭を下げた。
「ごめんなさい、僕は明日谷大和です。知り合いにあまりにもそっくりだったのでつい」
「知り合いは名前も一緒なんだ」
にゃ~ん。後ろを振り向くと、銀色の猫が私たちを見る。
「この猫、バスに乗る前の公園にもいた。どうしてここに?」
「ついてきたんじゃないの? この犬も私の後を追いかけてきたのよ」
大和君は猫に近づくと、猫はすたすた逃げた。犬も猫の後を追いかける。
「誰かが飼っているんだろうね」
足元から煙が出て、もうもうと濃くなった。どこからか、紫色の影が伸びる、大和君に近づき――
バクッ
影が大和君を食べてしまった。私と姉はただ立ち尽くす。大和君はいない。周りの人は「初めからいないでしょ」ツッコミを入れるように、平然と歩く。
「あ、愛良、今の」
「や、大和君が」
私は姉に抱き着いた。姉はしっかり私を抱きしめる。どうしよう、どうしよう、どうしたらいいの。どうし
――気をしっかり保ってください、愛良。
心の中から声が聞こえる。この声に私は何度か助けられた。
「「こっちだよ」」
私と姉が後ろを向くと、12歳程度の女の子が二人、手を振る。右側は髪の毛が黄金色で大きなたれ目、八重歯が生え、髪の毛を右方向に、赤いリボンで束ねている。左側は髪の毛が銀色で長さや形は右側の子と同じ、左側に青いリボンで束ねている。釣り目ね。二人とも色違いのワンピースを着て、手をつないで立っている。
「「こっちだよ」」
二人は走り出した。後姿に驚いた。しっぽが生えている。黄金色の子は犬、銀髪の子は猫。私たちは追いかける。
「しっぽってまさか、あの犬か猫じゃないよね」
姉があたりを振り向きながら言う。誰も私や姉、あの子たちを見ようとしない。
「一体、何が起きているの?」
「この世界にやってきてしまったクスミを浄化する」
銀髪の子が私たちに振り向かないで、穏やかな口調で言った。
「大和はね、もう一つの世界にいるクスミを消すために呼ばれたんだよ☆」
黄金色の少女は明るい声で出し、手を上げて止まった。目の前にはお化け屋敷。ひゃああああああ。
「ここ、入らないとダメ?」
私が尋ねると、少女たちはうなずいた。
「お化けは怖いけれど、もっと怖いのはクスミ。浄化を手伝ってほしいの」
「ご主人は今、大和を影から手助けしている」
少女は私たちにチケットを渡した。
「愛良の彼氏を救いに行くよ」
「わ、わかっているよ。お、お姉ちゃん」
私たちは入り口前に立つ。
「チケットをお支払いください」
優しい女性の声が聞こえ、私と姉はチケットを払う。
「だ、誰もいない」
ぎい。ドアが開く。お化けは怖いけれど、大和君が死んでしまうかもしれないのはもっと嫌だ。姉もいる。だから怖くない……やっぱり怖い。
カチャリ__……――バタン!
お読みいただきありがとうございます。次回はお化け屋敷の中を探索します。お化け屋敷は怖いですよねえ「わーっ」されるのが嫌です。