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キラメキDaughters(ドーターズ)  作者: 千賢光太郎
10話 大和君と二人でデートごっこ(語り:愛良ちゃん)
41/55

真の友、不思議な犬と猫、陽気な姉と食われた彼

おはようございます、語りは須田愛良ちゃんです。一人称はすべて「私」です。

では、ごゆるりとお楽しみください。

挿絵(By みてみん)


「英子」


「song your heart」とロゴが付いた薄青の長そで、ぬるい風を受け流すシルクのスカート。私の友達、小野田英子が一人で立っていた。


「二人とも、デートしているの?」

「「いや、これは……」」


英子がため息をはいた。


「大和なんかと付き合ったら、愛良の今後が心配だけど」

「なんでだよ」


大和君が食ってかかる。


「大和と愛良は性格が似すぎている。どっちかが落ち込んだらもう片方も落ち込む。私は小学校からあんたたち二人を見ているからわかる。私はこれから友達と遊ぶから、このあたりで。あ、そうだ、愛良、由良お姉ちゃんにここで会ったよ」


「由良?」


大和君がつぶやいた。


「愛良には大和なんかより、大二郎みたいな子がお似合いよ」


英子が私たちに手を振る。大和君の唇がムズムズ揺れる。


「愛良ちゃん、よく小野田と友達になれるな」


「英子は私の良いところも悪い部分も遠慮なく言うよ。英子が言ったんだ。私は頭の回転が速いけれど、普段はぼーっとしているんだって。だから英子に似合うのは頭の回転は遅くても、ぐいぐい引っ張ってくれる大二郎君が合うんじゃないかって」


大和君は頬の筋肉をきゅっと引き締める。私は余計なことを言ってしまった。


「英子の奴、僕については何か言ってなかった?」

「大和君が暗くなっても、明るくふるまえる女の子が合うって。私は大和君と一緒に明るいときは明るいけれど、暗いときは暗い。だからやめた方がいいって」


大和君は顔を上げた。ゆら……と聞こえた。


「今、由良って言わなかった?」

「言ったよ、どうして」

「私の姉が由良って名前なの」


大和君は口を大きく開け、ゆっくり閉じる。姉、由良は2つ上の高校1年生で遊び人だ。私もよく姉と一緒にあっちこっちのゲームセンターで遊び、コインゲームでは姉と一緒に手伝い、ダンシングやホッケーでは姉と戦って、負けると悔しい。――どうでもいい話だったね、今の。


「わんわん」

「こら、私の胸をかまないの」

「由良、どうしてここに」


大和君が指をさした。


「あなた、誰……愛良じゃん。もしかしてこの子、彼氏?」


姉だ。黄金色の犬を抱いている。


「お姉ちゃん、どうしてここに」

「どうしてって、友達と待ち合わせしていたんだけど、友達が急に倒れたから、帰ろうとしたの。そしたら英子ちゃんを見かけて、その後愛良を見て……ねえ君、なんで私を呼び捨てにしたの? それに名前は、愛良の彼氏君」


大和君は頭を下げた。


「ごめんなさい、僕は明日谷大和です。知り合いにあまりにもそっくりだったのでつい」

「知り合いは名前も一緒なんだ」


にゃ~ん。後ろを振り向くと、銀色の猫が私たちを見る。


「この猫、バスに乗る前の公園にもいた。どうしてここに?」

「ついてきたんじゃないの? この犬も私の後を追いかけてきたのよ」


大和君は猫に近づくと、猫はすたすた逃げた。犬も猫の後を追いかける。


「誰かが飼っているんだろうね」


足元から煙が出て、もうもうと濃くなった。どこからか、紫色の影が伸びる、大和君に近づき――


バクッ


影が大和君を食べてしまった。私と姉はただ立ち尽くす。大和君はいない。周りの人は「初めからいないでしょ」ツッコミを入れるように、平然と歩く。


「あ、愛良、今の」

「や、大和君が」


私は姉に抱き着いた。姉はしっかり私を抱きしめる。どうしよう、どうしよう、どうしたらいいの。どうし


――気をしっかり保ってください、愛良。


心の中から声が聞こえる。この声に私は何度か助けられた。


「「こっちだよ」」


私と姉が後ろを向くと、12歳程度の女の子が二人、手を振る。右側は髪の毛が黄金色で大きなたれ目、八重歯が生え、髪の毛を右方向に、赤いリボンで束ねている。左側は髪の毛が銀色で長さや形は右側の子と同じ、左側に青いリボンで束ねている。釣り目ね。二人とも色違いのワンピースを着て、手をつないで立っている。


「「こっちだよ」」


二人は走り出した。後姿に驚いた。しっぽが生えている。黄金色の子は犬、銀髪の子は猫。私たちは追いかける。


「しっぽってまさか、あの犬か猫じゃないよね」


姉があたりを振り向きながら言う。誰も私や姉、あの子たちを見ようとしない。


「一体、何が起きているの?」

「この世界にやってきてしまったクスミを浄化する」


銀髪の子が私たちに振り向かないで、穏やかな口調で言った。


「大和はね、もう一つの世界にいるクスミを消すために呼ばれたんだよ☆」


黄金色の少女は明るい声で出し、手を上げて止まった。目の前にはお化け屋敷。ひゃああああああ。


「ここ、入らないとダメ?」


私が尋ねると、少女たちはうなずいた。


「お化けは怖いけれど、もっと怖いのはクスミ。浄化を手伝ってほしいの」

「ご主人は今、大和を影から手助けしている」


少女は私たちにチケットを渡した。


「愛良の彼氏を救いに行くよ」

「わ、わかっているよ。お、お姉ちゃん」


私たちは入り口前に立つ。


「チケットをお支払いください」


優しい女性の声が聞こえ、私と姉はチケットを払う。


「だ、誰もいない」


ぎい。ドアが開く。お化けは怖いけれど、大和君が死んでしまうかもしれないのはもっと嫌だ。姉もいる。だから怖くない……やっぱり怖い。


カチャリ__……――バタン!

お読みいただきありがとうございます。次回はお化け屋敷の中を探索します。お化け屋敷は怖いですよねえ「わーっ」されるのが嫌です。

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