惑星シリウス再訪、早速触ったよ、子熊ども
語り手は明日谷大和組んで、一人称は「俺」です。
人と話をするときは「僕」になります。
では今日もいい1日をお過ごしください。
いつもお読みいただき、誠に感謝です。
カナセが走ってきた。後ろからマナテも追いかけて来る。
「どうしたの、カナセ」
「恵麻さんから伝言。由良たちにアイドルとしての仕事が入った。惑星シリウスでイベントがあるから、今すぐゲストとして来てほしいって。怪物の大和と一緒にな」
怪物を大声でいう彼女。姉と妹の姿を見るや、
「大和、こいつら誰?」
「僕の姉と妹。姉ちゃん、美鈴、彼女はカナセ。そっが妹のマナテ」
「留奈です。大和は怪物なのね。よかったじゃない」
姉は俺の頭を撫でた。
「なんでだよ」
「男らしいって扱われているのよ。なよなよした男よりも、野心あふれる怪物こそ、オスとしての本能。あ、これは私の考えね」
次に美鈴が手を上げる。
「美鈴、やまにぃの妹だよ。ねえ、お前さ、やまにぃを馬鹿にしたでしょ」
美鈴が喧嘩腰で、カナセに食いつく。
「私の前で兄や姉を馬鹿にしたら、お仕置きしてあげるよ」
俺はつばを飲み込んだ。マナテがカナセの肩を叩く。
「お仕置きは私の仕事です」
マナテがカナセのわき腹をつねって、耳に息を吹きかけた。
「へえ、ドMなんだ。面白そう」
「美鈴、やめろ、そっちの世界へ行くな」
「そうよ、戻ってきなさい」
俺と姉が止めたものの、美鈴は言うことを聞かなかった。
「姉ちゃん、美鈴ってあんな子だっけ?」
「わからない、私も美鈴がどんな子か、一緒に暮らしていても、すべて知らないからさ。大和、いじられている子、男の子だよね?」
ああ、どう答えたらよいのだろう。
「体はオスだけと、女の子だよ」
「ただの女装じゃん」
確かにそうなんだよ、でも違う。
「あいつはここで『女の子』として生まれ、育っているんだ。だから」
「自分の体に違和感を持っていないの? おかしい子。漫画の世界ではともかく、現実に見ると、なんというか……」
姉の発言は常識だけど、俺は突っ込まなかった。
「ほらほら、みなさん、やめてください」
愛良が手を叩き、マナテはにこりと微笑んで、美鈴の手を握った。美鈴もにこりとマナテに微笑み返し、カナセの顔が青ざめる。
「カナセ、アイドル営業ってどういうこと?」
俺が尋ねると、顔色が一気に戻った。
「惑星シリウスのイチゴ村でお祭りがあるから、ゲストとして参加してほしいって。おい、留奈に美鈴、その姿で歩くと変な奴らに襲われるから、着替えろ。僕たちの衣装を貸してやるんだからな」
「お前さ、どうして上から目線で言うの?」
美鈴がカナセのわき腹を軽くつねった。
「美鈴ちゃんがマナテと重なって見える」
由良が俺の手を強く握る。
「美鈴、いいから」
姉が美鈴の肩に手を置く。
数分後、恵麻さんがやってきた。
「連れてきたのかい、由良」
「うん、見つかっちゃった」
恵麻さんがちらっと俺を見る。
「大和、どうする、この二人も連れていくかい? 惑星シリウスは一度、訪れただろ」
覚えている。イチゴの枝からぬめぬめとあちこちいじられたような、由良の胸やスカートなど、セクハラする小さな熊たちしかいなかった。姉と妹がワクワクした表情を浮かべ、俺を見る。
「じゃあ、みんなで行く」
恵麻さんはうなずき、魔法を唱えた。美鈴が「おおおお」声を漏らし、姉は「すごすごすご」飛び跳ねている。世界が白く輝き、目を閉じた。
目を開けると、青空が一面に広がり、俺らを囲う青々とした木、コーヒーの香り、祭りの音に誘われて、由良が俺の手を握り、たったかたーと走っていく。
「あ、勇者様一行に怪物」
髭を生やし、背中に白い羽が生えている子熊。奴は由良には笑顔で、俺には舌打ちする。
「相変わらずだな、お前」
「お前もな、あの時より怪物になったんじゃないか」
くくっと微笑む熊。
「あの時なんて、もう覚えていないよ」
イチゴはおいしかったけれど、それ以外は思い出したくもない。子熊が手を叩く。
「自分の歴史を忘れる。良きも悪きも都合に合わせ、何事もなかったかのようにふるまう。それが怪物だ」
熊が「けけけ」と低い声を出し、微笑む。
「こら、そういうこと言わないの」
由良が怒る。愛良達も追いついた。
「これはすみません、勇者様。さ、みなさんがお待ち」
「きゃああ」
美鈴の声だ。後ろを振り返ると、数匹の子熊が美鈴たちを襲う。スカートをめくり、胸や腕、わきの下などに降れる。
「美鈴たちから離れろ」
俺は声を震わせながら、子熊たちを叩いた。
「あ、怪物の分際で俺たちを殴るとは」
子熊たちがかぎ爪を俺たちに見せる。
「あんたたちこそ、ぬいぐるみの分際で」
美鈴は低い声を出して、熊たちを踏みつける。
「弟や妹に危害を加えるな!」
姉も蹴っ飛ばした。声や足は震えていた。
「みなさん、もし大和さんたちを傷つけたら、私たち姉妹が盛大なお仕置きをしますからね」
マナテが蛇のような目をして、熊たちをにらむと、熊たちは光の速さで頭を下げる。
「ありがとう、マナちゃん」
美鈴が明るい声で、彼女に抱き着く。
「いえいえ、皆様をお守りするのが私の役目。美鈴ちゃん、強いですね」
「私は強くないよ、マナちゃん」
カナセがぱちぱちと目を開け、姉の手を強く握る。
「……怖かった」
「それって子熊?」
「マナテに決まっているだろ」
カナセは姉から視線を逸らし、美鈴と一緒に微笑む妹へ目を向ける。
「私は怖くないの、カナセ君。カナ君でいい?」
「いいよ。留奈さんは、安心できる」
姉は軽くなずき、カナセの頭を撫でた。
「子供っぽくてかわいい。カナ君は昔の大和にそっくり」
「僕をそいつと一緒にするな。あ、ごめんなさい。留奈さんの前で言って」
カナセは姉に頭を下げた。
「勇者様、怪物、こちらにお越しください。今からあなたがたがやるべきことを伝えます」
眼鏡をかけ、蝶ネクタイを結んでいる桃色の熊が現れ、打ち合わせを行った。
「みなさん、私はいろいろ尋ねたうえでボケます。なるべく突っ込んでくださいね。本番前まであと少しなので、今すぐキラメキドーターズに姿を変えてください」
俺は姉と妹を見る。二人は俺をじいっと見る。
「大和君、変身だよ」
「う、うん、でも」
「留奈さんと美鈴ちゃんを気にしているのですね。いずれ気づかれるので、早いうちに真実をさらした方がよろしいかと」
ココアが俺の手を握る。姉と妹の目が光る。カナセは声を出して笑う。マナテは姉の頬をつねる。覚悟を決めるか。
「輝け、私の希望――」
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
本来ならこの回で質問攻めにあうはずだったのですが、
マナカナと留奈美鈴らの絡み、第1話で出会った熊たちとの再会で、
話を終えてしまいました。
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今も明日もあなたに良いことが訪れるよう、祈っておきます。




