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惑星サイダー  作者: あろ
地球と火星のお話
18/18

7.心の奥に押し込んだ愛②



「俺さ、昔付き合ってた元カノたちとトラブル多かったの、知ってるよな…」


「…はい」


「あれ、付き合ってなくても…そういうこと多かったんだ」




一番最初にケレスと出会った時の事を思い出す。


あの時も俺の事を女の子だと勘違いしていて、

冷たい態度をとっていたな、…と。



「中には、ストーカーしてくるやつもいて」


「それは、つまり…」



「ああ、ストーカーされていた。


 俺に対してならまだしも、火星の事も全部知られていた」



そんなことがあった事に驚くが、

でもあの当時そんな気配すらなかったような気もして



色々な感情でごちゃごちゃになる。




「つきまとい位ならまだ良かったんだけど、その女は妄想癖も強くて。


 …ある時から脅迫、じみたこともするようになった」



「それって…」



「火星と付き合い始めて、半年過ぎたあたり…だな」





ちょうどケレスと別れたのは、その時だ。






「え…?じゃあ…その時から、


 …ずっと脅迫されていたってことですか?」


「ああ。最初は俺にだけだったから、無視していた。

 でもそれじゃ、相手にされないし、意味ないと向こうも分かったんだろうな。





 …標的を俺じゃなくて、火星に変えてきた」





「え…」






衝撃の事実に、言葉を失う。






「毎日、手紙やら電話やらで火星のことどうなってもいいのか?と、脅されてた。

 本当はその時点で周りに頼ればよかったのに…




 マジで、どうかしてたよな」



「…っ」



「俺自身、もう…どうすればいいのか分からなくなっちまった。


 でも火星に危害が加わるのは、どうしても避けたかった…」





(いつも、ケレス先輩のそばにいたのに)






どうして気付かなかったのだろうか?




これが本当の事なのだとしたら、

なんて自分は今までのうのうと生きてきたのだろう。




「なんで…?なんで、その時、言ってくれなかったんですか」


「そうだよな…相談すべきだった…よな」




気付かなかった自分のことは棚に上げて、

ケレスを責めるように言ってしまったことに心が痛む。




(先輩は、言ってくれなかったんじゃない…)




きっと、言えなかったんだ。



―――俺が未熟だから。






「ごめんなさい…」






ケレスと再会して始めて、謝罪の言葉を口にした。





「火星は何も悪くない、何も…。


 結局、火星を傷つけたことに変わりない」





(あの時も、今も、俺の事を…)





『大事にする』




あの時の記憶が蘇り、

心の奥底で閉まっていた感情が溢れ出す。




「俺にわざと嫌われるようなことして遠ざけて、


 俺の事をずっと守ってくれていたんですね…」




昔と何も変わらなかった、はずなのに。

いつからこんなに、おかしくなってしまったのだろう。




━━━━━━━━━━━━━━━━━



「…信じて、くれるのか?」



ケレスは、話したものの

信用してもらえないと思ったのだろう。



「正直…今は、信じる信じない以前に


 色々と困惑しています…」


「そう、だよな…」




さっきの話を聞いて、ああ言ったものの、

自分にとってあまりにも衝撃的すぎた内容だった。





「あの、先輩…

 

 今は、そのストーカーはもう…大丈夫なのですか」



でもその代わり、ふと気になったことを聞いてみた。



「ああ。俺の異変を感じた母親が、

 色々と周りの援助も借りながら手を打ってくれた」


「そうだったんですか…」



実際に今のところ、俺に被害はないがリアルタイムで

ケレスにも被害がないことや、危うい状況ではない


という事実に、少し安堵した。




「状況が落ち着いたのもあって、それで…今になった」


「…」



聞けば聞くほどケレスの気持ちや

置かれていた状況は、痛いほどわかった。





自分だけではなく、第三者によって彼自身も傷ついたのだ。





「また…改めて、会う機会をくれませんか」




ケレスは自責の念を感じつつ、タイミングを見て

こうして俺に話に来てくれた。




だからこそ、自分の気持ちの整理をしたうえで、

再度ケレスと話す機会が必要だと思ったのだ。




「俺は、いいけど…いいのか?」


「はい…。もう一度…先輩と話したいです。





 でも、少し時間をください」



ケレスは少し驚いたような表情をしたが、

すぐにまた表情が曇った。




「…わかった。連絡先、変わってないけど

 もしわからなかったらベスタにでも聞いて」


「…はい」


「聞いてくれて…ありがとな」




ケレスはそう告げると、軽音部の部室を後にした。




━━━━━━━━━━━━━━━━━



ケレスが立ち去ったのを確認すると、

緊張していた糸がプツンと切れたようにその場に座り込む。




「ほぼ強制的に、聞かされたんだけどな…」




そうボソッと呟くと同時に、先ほどの事や過去の事を思い出してしまい、

誰もいない部室でまた静かに、涙を流したのだった。



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