6.火星side④
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過去story
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あれから散々に泣きじゃくった後、
気づいたときにはすでに夜の時間帯だった。
そしてあの時泣き疲れたのか、
いつのまにか寝てしまっていたようだった。
「起きたか?」
ケレスは、起きたのを確認すると
続けて「泊っていけよ」と言った。
一瞬帰ることも考えたが、目も腫れた状態で
家に帰ったら、ますます家族が心配するだろう。
散々迷惑かけて悪いと思いつつも、
ケレスの言葉に甘えることにした。
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寝ているときに夕飯を軽く作ってくれたようで
一緒に食べることにした。
その時から今日の話題はださないように、
お互いにたわいのない話をした。
お風呂も沸かしてくれたようで、
「ゆっくり休んで来い」とケレスは言った。
何もかもが至れり尽くせりで、
申し訳ない気持ちもあったが
ケレスの配慮に救われた気持ちの方が大きかった。
寝るときも客用の布団を自分のベット横に引き、
ずっとそばにいてくれた。
「…ケレス先輩」
「…なんだ?」
「…俺、ケレス先輩がいてくれて良かったです」
あの時も、今も、いてくれなかったらと思うと
正直自分がどうなっていたかわからないし、
さらに最悪の状況になっていたんじゃないか、
と思うと今でも怖い。
「ありがとうございます…」
だから謝罪ではなく、感謝を告げる。
「…ああ」
ケレスの返答を聞き終えた後、
―――ゆっくりと、瞳を閉じた。
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その後連休が終わり、いつもの学園生活に戻った。
あの日以来、少しずつ元気を取り戻したが
完全にトラウマ化して1人で行動はできなくなった。
そしてあの事件をきっかけに、
朝と放課後はケレスと一緒に行動を共にするようになった。
ケレスに迷惑かかっているのは重々承知の上だったが、
一緒にいると心地よく、救われた気がした。
「ケレス先輩~、今日もいいですか?」
「いいけど、お前、親御さんとか大丈夫なの?」
そういうこともあってか、次第にケレスの家に
遊びにいくことや泊まる機会も増えていった。
「そういうと思って事前に話つけておきました!
これ菓子折りです!」
「いや、そういうことじゃねぇけど…まあいいや」
特に両親は過保護なわけではないので
あの日泊まるといった時も追及はしてこなかった。
流石に回数は増えていたので、
「あちらの家に迷惑かかってるのでは?」と母親には言われたが
ケレスの家庭事情を少しだけ話したら
ある程度察してくれたようだった。
(本当はご飯作ってくれたりするから、
材料費のお金だけでも渡したいけど…)
以前渡そうとしたら「2人分だから倍になるわけじゃねぇし、
そもそも1人分作るの逆に大変だから、ちょうどいい」
と言われ、受け取ってもらえなかった。
(ほんと、優しいよなあ…)
しみじみとケレスの優しさを感じつつ、
それに甘えながら日々過ごしていた。
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そうして、ケレスの家に泊まりにいったある日――。
食後、2人でソファに座り雑談をしていた。
「…火星、眠そうだな」
「ん…そんなこと、ないですよ」
お風呂も入り、お腹も満たされ、幸福感が最大級に
上がっていたのもあり、正直なところ少しウトウトしていた。
「寝るなら、布団引くから待ってろ」
「…まだ、大丈夫です…!」
ケレスはそう言い立ち上がろうとしたので、
行ってほしくない!と思い、グイッとケレスの腕を引っ張った。
「っと、あぶねえ…だろ」
「だって…」
もう少し話したかった、と言おうとすると
ケレスが少しバランスを崩しながら座ったせいか
距離が近いことに気づく。
お互いに見つめ合い、沈黙が流れる。
(ち、近い)
元々美形な部類に入るケレスの顔が
至近距離にあり、咄嗟に頬が赤くなる。
するとその赤く染まった頬に手を置かれ、
さっきよりも更に距離が近くなり
気づけば、引き寄せられるように
―――唇に触れたような感覚を覚えた。
「…!!」
「……嫌か?」
途端に、ケレスにキスされたのだとわかり、
さらに頬が熱くなるのが自分でも感じる。
「……い、いやじゃ、ない…です…」
先ほどあった眠気なんて吹っ飛び、
心臓がバクバクしているのがわかる。
でも、不思議と嫌悪感がなかった。
いや、むしろ一瞬の出来事で
―――本当にキスされたのかもわからなかった。
熱い視線と甘い雰囲気に、理解が追い付かず動揺する。
その様子を見ながらも、ケレスは再び軽く口付けをした。
「…んっ」
(俺、ケレス先輩のこと…)
今まで自覚していなかったものの
二度目のキスをされたことにより、
自分のこの気持ちが―――恋心だとわかった。
「大事にする」
真っすぐなケレスの言葉に、ドクンと胸の高鳴る。
そして胸の奥から熱い感情が、こみ上げてくるのがわかった。
これまで感じたことない気持ちに心は揺らぎながらも、
これが『好き』というものなのだと、深く嚙みしめていた。
目頭が熱くなりながら、目の前にいるケレスへ
そっと抱き着き「…はい」と返事をしたのだった。
この時から、俺と先輩の関係性は
【先輩・後輩】ではなく、【恋人】へ変わった。
今思い返すと、この時が一番幸せだったかもしれない。
―――でも結局、その『幸せ』は長くは続かず、
そして、その『幸せ』にしてくれた当の本人によって
壊されることになるとは、この時には思いもしなかった。
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