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惑星サイダー  作者: あろ
地球と火星のお話
10/11

5.火星side③

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過去story


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男が連行された後。

ケレスとともに、現場にきた警察官に事情聴取されていた。


パラスは、運営スタッフに状況を伝えたときに

警察にも通報してくれていたようだ。


付近にいた人々は『何かあったのか?』

といった感じで様子を見に来る人もいれば、


大して気にも留めず素通りする人など様々だった。


「状況はわかったよ、だいぶ答えにくいことだったと思うが

 …話してくれてありがとう」


「…いえ」


聴取した警察官は、冷静に話を聞きつつも、

落ち込んでいる心境を理解してくれたようだった。


ベスタとパラスは邪魔にならないところで、

自分を見守っていてくれていたのがわかった。



「もう、…行っても大丈夫ですかね?」


付き添ってくれていたケレスは、

この場から離れても大丈夫か警察官に尋ねる。


「ああ、もう大丈夫だよ。

 親御さんにご連絡して、きてもらわなくて大丈夫かい?」


「連絡は、しないでほしいです…」


(これを機に過剰に心配して、外出制限されても困る…)



警察官が心配してくれているのは分かってはいたものの、

ここに親が来るのは何としても避けたかった。


すると、事情は知らないものの

何かあるのだろう、と悟ったケレスが警察官に話す。




「俺が、家まで付き添うんで大丈夫っす」



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聴取が終わり、ベスタ達のところへ戻る。


申し訳ない気持ちでいっぱいになりながらも、

2人に帰ることを告げた。



「気にしないで~俺らもちょうど観たいバンド

 終わって帰ろうかなって思ってたとこだし」


「…すみません」


ベスタはおそらく気を使ってそう言ってくれているのが

わかったので、さらに申し訳なくなる。


「謝んなよ。俺らがそうしたいだけなの、だよな?」


「ああ」


ベスタとパラスの言葉に救われながらも、

やはり自分のせいで…という気持ちは拭えずにいた。


それを見越してなのか、

ケレスは「大丈夫だ」と隣でフォローしてくれた。



「俺は火星と帰るから。じゃあ、またな」


「了解~、また」



ベスタ達と別れると、会場からでたタイミングで

横にいるケレスがそっと話し出す。


「…迷惑かけた、とか申し訳ない、なんて思ってるかもしれねぇけど、

 俺たちは自分の意志でそうしたいと思って行動してるだけだから」


「…」


「だから、甘えておけ。

 あと、自分を責めるんじゃねぇ」


「…っ」



優しい言葉に、また泣きそうになる。


すでに会場から出ているが、

路上でまた泣きだしたら迷惑かかるため、


何も言わず、ただひたすら涙をグッとこらえた。



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ケレスとは一緒にライブや遊びに行く間柄だったので、

どちらの家の場所くらいは知っていたし、


奇遇にも帰る方向も一緒だった。


今回のことに限らず、一緒に帰ることになるだろうとは思っていたが

まさかこんな感じで帰宅するとは思っていなかったので、


お互い無言で帰る方向へ歩いている状態だった。



(こんなことにならなければ、

 今日の感想とか言って盛り上がっていただろうな…)



なんでこんなことに…と思いながらも


先ほどのケレスの言葉もあり、

起きてしまったことを考えないようにしようとしていた。



「なぁ」


すると、ケレスが沈黙を打ち破るように話しかける。



「俺んち、くる?」


「…え?」


落ち込んでいるあまり目線が下向きだったのが、

一気に顔を上げ、ケレスの顔へ向ける。


「嫌か?」


「…いやとか、じゃない…ですけど」


「じゃあ決まりな」


「!!え、ちょっ、本当に…ですか…??」


「ああ、親御さんに連絡しておけよ」


強引な誘いに、かなり戸惑うものの

「わかりました…」と返事し、言われた通りに親に連絡した。




正直、このまま家に帰っても

一人で閉じこもりまた泣くことになっただろう。


(家族に心配されたくないしな…)


そうなるかもしれないと思い、

ケレスも言ってくれたのかもしれない。


そういったケレスなりの配慮に、

ありがたい気持ちと申し訳ない気持ちでいっぱいだった。



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とある、オートロック付きのマンションの一室。

ケレスの家に入ったのは、今回が初めてだった。



「お邪魔、します…」


「…誰もいねぇから、ゆっくりしな」


「え、そうなんですか…?」


「ああ、仕事でいねぇし」


実はケレスの家は母子家庭で、

母親が夜職(水商売)だという話を前に少し聞いていた。


なので、てっきり夕方くらいまではいるのかと思っていたが、

同伴等で家いないことの方がほとんどだと教えてくれた。



(色々、あるんだな…)



「今日も俺一人しかいないから、気にすんな」


「…寂しくないですか?」


リビングのソファで腰を掛けながら聞くと、

同じく横に座ったケレスは少し笑って答えた。



「だから、こうして呼んだんじゃん」



その言葉に普段だったら、笑い返したり

嬉しい気持ちになったりしたかもしれない。


でも今はただ「そう、ですか…」

と、俯きながら呟くことしか出来なかった。


そんな様子をみたケレスは

落ち着いたトーンで、静かに話しだす。




「すぐ、助けにいけなくてごめんな」


「!そんな、ケレス先輩が、きてくれなきゃ…俺…」


「俺も一緒についていけば、良かった」


「ちが、そんな…っ」



(こんなこと言わせたくなかったのに)



否定したいのに、言葉に詰まってしまう。



(謝ってほしくなかった)



先ほど抑えていた涙がこらえきれず、

ボロボロと頬に流れる。



「…っ、ぅう…」



ケレスは、火星の頬に伝う涙をそっと指で拭う。

あまりにも自然な行為に、驚きや不快なものはなかった。




それどころか今の自分にとって、

『救い』のように感じた。




震えながらも自分の両手を、まるで

すがるような気持ちで――ケレスの手の上に重ねて軽く握る。




ケレスは何も言わずに反対の手でゆっくりと

震えた身体を引き寄せて、抱きしめる。



「うぅ…っ……、ぅ……」



あふれだした涙は止まるはずもなく。


抱きしめられた腕の中で、優しい温もりも感じながら

うめき声を漏らし、ひたすら泣き続けた。




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