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となりの優等生は恋を後回しにする  作者: 妙原奇天


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20/22

第20話 非常条文3.0と、同時多発の手順

 翌週の火曜、職員室前の小掲示が回路図みたいに更新された。

 〈非常条文3.0(同時多発)——試運用〉

 青—の配線が三方向へ伸び、交点に黄点が多数、角に緑四角が四つ、要所に赤■、全面に透過の丸が薄く重なる。

 如月が肩をすくめる。

 「標識の詩が、ついに配電盤」

 「停電しない詩が目標」


 成宮先生は短く言った。

 「今日の午後、三か所同時。駅前・市役所・学校内。同時多発で回す。第三者はそれぞれ配置済み」

 家の言葉が、いよいよ実戦配線される。


***


 配電図(非常条文3.0 簡易版)

 - 入口:透過の丸を先置き(指示ではなく存在の告知)

 - 一次対応:各現場で黄点=1(待つ=怒らない)

 - 分岐:青点検→良なら青—続行/不良なら緑四角・四拍で戻る

- 危険接近:赤■=下がる(罪ではない)を第三者と同時提示

- 記録:写真のない写真+白紙署名(顔は写らない/やったことだけ)


 紙の上で確認してから、僕らはそれぞれの持ち場へ散った。

 僕:駅前。白波:市役所。如月:学校内。

 青—が三本、同じ時刻で別方向に走り出す。


***


 駅前(僕)。

 視線=噴水。透過の丸(貼付)をベンチ背面に先置き。

 開始三分、揺れが来る。バス接近で歩行流が圧縮、ベビーカーと自転車が擦れそうになる。

 胸で黄。

 僕は地面に小さな緑四角を指で描く仕草。“一拍下がって四拍で戻る”を目で示す。

 自転車の人はブレーキ、ベビーカーは半歩退く。

 赤■は出さずに済んだ。黄→緑→青で速度のやさしさが戻る。

 白紙署名を掲示に重ねて、在るのログを残す。


 〈駅前ログ:黄→緑→青/透過=1/白紙=署名〉


***


 市役所(白波)。

 視線=整理券。透過の丸を案内板に重ねる。

 同時刻、窓口二番で書類違いが発生し、声の角が立つ。

 白波は青点検を相手側へ差し出し、横で保健師が黄=待つの紙を家の言葉で添える。

 相手の肩の高さが一センチ下がり、緑四角・四拍で窓口の左へ**“戻れる場所”**を一時移動。

 **赤■**はやはり不要。透過+家の言葉が角を削った。


 〈市役所ログ:青点検→緑で戻る→青/透過=1〉


***


 学校内(如月)。

 視線=階段の影。透過の丸(透明シート)を踊り場掲示に先置き。

 同時刻、配布プリントの行き先が混線。

 「白紙=未提出」の古い誤読が一瞬火花。

 如月は白紙署名+QRを重ね、“続行報告”へ飛べるようにする。

 緑四角・四拍の身振りで連絡袋を入れ替え、**青—**へ回収。

 **赤■**はやはり寝たまま。翻訳で済む類の揺れだった。


〈校内ログ:誤読→翻訳/緑→青/透過=1/白紙=署名〉



***


 同時多発は第二波を連れてくる。

 14:20、駅前で突発のサイレン、市役所で停電テスト、学校で雨脚の増加。

 外部拍が乱れ、熱が上がる危険。

 感情条文1.0を全現場で並行起動。


 - 駅前(僕):黄橙の付箋を手の甲へ。〈冷却=四拍×2/代理拍=噴水の水音〉

 - 市役所(白波):黄橙→〈代理拍=非常灯の緑〉

- 学校(如月):黄橙→〈代理拍=雨音〉


 三拠点で同時に呼吸が四拍に割れ、過剰拍が0.6→0.3まで落ちる。

 緑四角は角で待機したまま、出番はない。

 赤■は、今日も罪ではないの文字の横で静かに眠っていた。


***


 終盤テスト:介入の重ね

 16:00、市役所で高齢の方が転倒しかけ、駅前では子がベビーカーから身を乗り出し、学校では階段で後ろ向き歩きが発生。

 非常条文2.0の**“スイッチバック”を三現場同時に口の形だけで宣言。

 - 駅前:手首に最小接触→緑のベンチへ誘導→黄四拍で離脱。

- 市役所:肘へ最小接触→非常口の緑へ視線誘導**→四拍で解除。

- 学校:肩に最小接触→踊り場へ視線誘導→四拍で解除。


 第三者(警備員/職員/先生)が即時立会い。

 同時多発は同時多重で吸収された。

 青—は、黄の上に静かに戻る。


 総合ログ(抜粋)

 〈駅前:スイッチバック→緑・四拍/市役所:同/学校:同〉

 〈熱:0.6→0.3(全拠点)/赤=出番なし〉

〈記録:写真のない写真+白紙署名+透過=完了〉


***


 夜、地域センターで評価会。

 ホワイトボードに三現場の拍線—を重ねると、奇妙に整った譜面みたいに見えた。

 保健師さん:「“待つ=怒らない”が家でもロビーでも通った」

 警備員さん:「合図は合鍵じゃないのが良い。扉が残る」

 成宮先生は短くまとめる。

 「——非常条文3.0、暫定合格。“器を軽く/告知を重ねる”を明文化して、学校・家庭・路上へ横展開」

 白波が透過の丸**をボードの角に重ね、輪を小さく二重に描いた。

 延長も、終わりも、在るで運用できる。


 最後に白紙を一枚、中央へ。

 角にQR。

 リンク先は、“終わり方を先に決める”から始まった全手順の履歴——顔は写らない、やったことだけ。

 僕はその白紙の上に青い—を一本、細く引く。

 続行は過剰じゃない速度で。

 如月が小声で言う。

 「ラスト1話、詩で着地だな」

 「詩は標識。——終わりの欄=白紙で終わる」


 帰り道、交差点の黄が点滅する。

 四拍。

 白波が角丸付箋に二語。

 〈在る=続行〉

 僕は一語。

 〈了解〉


 生活は手順。恋は予定外。

 予定外は、同時にもやって来る。

 それでも、青—と黄点、緑四角、赤■、透過の丸、白紙を同時に運用すれば、揺れは吸収に変わる。

 紙は長生き。

 残るは第21話。

 終わりの欄は白紙のまま、在るを置いて、やったことだけで幕を下ろす準備はできている。

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