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絵の少女とぬいぐるみ  作者: マフィン
コンテスト
32/34

ノースフェイスちゃん

 ノースフェイスちゃんは友花莉の頭を撫でていた。久しぶりに見たその笑顔。だが、今は見たくなかった。

 「私に構ってる暇なんてないでしょ?早く、みんなが待ってるよ。」友花莉は声を上擦らせながら訴えた。

 「そうね、だから早く行こうよ。」ノースフェスちゃんは友花莉の体を優しくゆすっていた。

 「なんで?私には関係ないでしょ。」友花莉は子供が駄々をこねているかのように、ノースフェイスちゃんを拒絶した。

 「どうしたの?私はグランプリのお祝いをしたいのよ。」

「だったら、私抜きでやってよ。」

「なんで?主役がいないのに?」友花莉は、さすがの可愛くてなんでも許せちゃうノースフェイスちゃんが相手でも、嫌気がさしてしまった。 

「言いたいことは分かる。あなたのおかげでグランプリが取れたって言いたいんでしょ?」

「ええ、」

「でもそれは違う。。あなたの実力よ。あなたの人間性の力。ノースフェイスちゃんの力なの。」ノースフェイスちゃんは一瞬首を傾げた。

「だから、そう言ってるわよ?」友花莉はだんだんと怒りが込み上げてきた。

「私はあなたじゃないの。だから・・・。」

「いいえ。」ノースフェイスちゃんは、友花莉の言葉に被せるように、否定の言葉を発した。

「え?」

「私はあなたじゃないの。」

「いいえ。私はあなただし。あなたは私なの。」

「何を言ってるの?」友花莉は怒りのあまり自分が混乱していると思った。

「まだ気が付かないの?私は、あなたが作り出したの。」友花莉は言葉の意味を丁寧に精査し、理解した。

「そうよ。多分、あなたは私の漫画のキャラクターだとは思っていた。でも、だからってそれが私っていうのは違うと思うけど。」ノースフェイスちゃんは首を横に振り続けた。

「どういうこと?」ノースフェイスちゃんは、笑顔でこちらを見つめていた。

「思い出してみて。今までのことを。」友花莉は。頭の中にノースフェイスちゃんと出会ってからのことを思い返した。だが、どの記憶にもノースフェイスちゃんはいた。

「いや、思い出しても、あなたはずっとそばにいてくれてたわよ。」

「だったら、私と一緒にやったことは?」

「そんなのいっぱいあるじゃない。授業も一緒に受けてたし。」その時ふと思い出した。

「宮城と喧嘩した時。あの時先生を呼んでくれたじゃない。」

「いいえ。あれは、宮城くんよ。」

「え?」

「あの後、宮城くんは教室に戻ったけど、自分のせいで倒れてる友花莉をみて、合わせる顔がなかったのかもね。」

「それで先生を呼んだ。」確かによくよく考えたら、その後保健室にノースフェイスちゃんはいなかった。裁判所に出廷したときも、ノースフェイスちゃんを自分と勘違いしてたわけじゃなくて、私自身だった。

「じゃあ、ミスコンの準備も?」

「そう、あの忙しい時に忙しい自分を助けるためだったのかもしれないね。」

「私、あんなに美味しいカップケーキ作れるんだぁ。」

「それだけじゃないわよ。私ができることは、あなたにもできるんだから。ノースフェイスちゃんの力は、廣坂友莉花の力でもあるのよ。」じゃあ、私はあの時、漫画制作にスパートをかけながら、カップケーキを作って、人の相談を聞いて、可愛らしい装飾を施していた。この前の女子生徒も勘違いではなかった。クラスメイト達も。最初からずっとノースフェイスちゃんは、自分のことを指していた。

「中には廣坂無双モードって言っている人もいたらしいわよ。人格が変わるから。」だから、みんながノースフェイスちゃんを求めた時は、私の無双モード、私の本気を求めていた。クラスメイト達は最初からずっと信じ続けてくれていた。

「これで、理解できた?」友花莉は大きく頷くと、さっきとは違う涙を流した。

「私、ずっとノースフェイスちゃんが羨ましかった。嫉妬までしてた。でも、それは全部自分だった。自分が持ってた。自分を信じていなかっただけだった。」ふとゴッド姉の言葉を思い出した。もしかしたら、気づいていたか同じ体験をしていたのかもしれない。

「そう、だから、グランプリを獲ったのも・・・。」

「私だった。」

 「やっと分かってくれた。じゃあ、早くお祝いしに行こうよ。」だが、友花莉はノースフェイスちゃんに着いて行かなかった。

「まだ、何かある?」

「あっちに行ったら、もうノースフェイスちゃんには会えないの?」すると微笑みながら、ノースフェイスちゃんは、友花莉を抱きしめた。

「大丈夫、私はいつでも友花莉のそばにいるから。だって、私はあなたなんだから。」友花莉は黙ってノースフェイスちゃんを抱きしめた。しっかりと抱きしめている感覚がある。ノースフェイスちゃんの良い匂いもした。

「それに多分、もう友花莉は大丈夫よ。なんて言ったて無敵のノースフェイスちゃんの力を持ってるんだから。」友花莉はノースフェイスちゃんの胸に顔を埋めながら、首を横に大きく振った。それを優しい眼差しで見ると、ノースフェイスちゃんは友花莉の頭を一撫でした。

「分かった、じゃあ、友花莉がもう大丈夫って思うまで、私は・・・。」

「うん、分かった。大丈夫って思うまでね。約束ね。」友花莉は涙を拭きながら、念を押した。

「じゃあ、戻ろうか。」友花莉が大きくうなずと、二人は体育館へと向かった。その瞬間、目の前に人が現れた。

「いた。探したよ。何してるのよ。」ぶつかりそうになった相手は大久保だった。「もしかして泣いてたの?」恐らく今の友花莉は、かつてないくらいひどい状態だったと思う。目は腫れ、鼻も真っ赤に染まり、鼻の辺りは鼻水の跡で、少し白くなっているであろう。友花莉は少し恥ずかしくなった。

「ごめんなさい・・・。」どう考えてもこの泣き方は嬉し泣きではない。「ノースフェイスちゃんって名前で違う人だと思っちゃって。でもよくよく考えたら、私のことですよね。」少し笑って見せた。

「あー、ごめんごめん。なんかみんなの間では廣坂のことノースフェイスちゃんで通ってたみたいだから、私もその方がインパクトがあると思ってそれで、登録しちゃった。」全てはいつも大久保のせいである。「みんな待ってるから。」そう言いながら大久保は体育館とは違う方向へと向かった。

「え?先生。どこへ?」

「どこって教室だけど?」

「体育館は?」

「もう会なら終わったよ。明日みんなの前でスピーチしてもらうってよ。」その事を友花莉はすっかり忘れていた。

「先生、明日休んでも良いですか?」

「は?ダメに決まってんだろ。」大久保は本気にせずただ笑っていた。

そして教室へ帰ると、クラスメイトが拍手で迎えてくれた。みんな嬉しそうだった。

 「さすがノー・・・。」

 「いいよ。そう呼んでも。」友花莉はこれほど嬉しいあだ名はなかった。最高に可愛い子と同じ名前で呼ばれるなんて。

 「さすが、ノースフェイスちゃん。」教室中が再び拍手に包まれた。でもこれは友花莉だけのものではない。クラス全員で掴んだ勝利だ。手伝ってくれた女子達、偵察に行ってくれた男子達。まぁ彼らはただサボっていただけかも知れなかったが。だからこそ。みんなこんなに喜んでくれていたのかもしれない。

 「よし、せっかくだからみんなで乾杯するか。」大久保はどこからともなく二リットルのコーラを両手に一つずつ取り出した。

「よっ!さすが、大久保っち。」一人の男子が明らかに調子に乗っていた。多分、偵察に行ってくれていた男子だ。というより、そろそろみんなの顔と名前くらいは覚えなければとさすがの友花莉も思っていた。

「ちょっと。私は先生ですよ。それに私も、ノースフェイスちゃんみたいなあだ名がいいなぁ。」

「じゃあ、コーラ先生。」

「なんじゃそりゃ。」そんなことを言っている間に、有能な文化祭担当の生徒がみんなに紙コップを配り、もう一人がコーラを一人ずつ注ぎ始めた。

「あれ?足りそう?」

「大丈夫です先生。もう一本あるんで。」

「さすが。」そして、あっという間に全員が紙コップを持っていた。

「あれ?」友花莉はある違和感を感じていた。

「それじゃあ、文化祭担当、乾杯の音頭を。」あいついない・・・。

「今日はみなさんお疲れ様でした。そして、廣坂さんおめでとうございます。」今日何回目の拍手だろうか?

「まだ文化祭は明日もありますので、最後まで楽しみましょう。乾杯。」クラス全員がボリューム最大で乾杯という言葉を言うと、急に大久保の顔が青白くなった。

「みんな、この事は他のクラスの子には黙ってて。先生が怒られるから。」だが、時すでに遅く、今の乾杯の音頭が廊下中に響き渡り、後日ちゃんと大久保は学年主任に怒られたという。


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