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幕末京都の御伽噺  作者: 鏑木桃音
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里芋の葉っぱ

幸徳井に使者を送ってから既に十日、梨の礫。

「どうして誰も来ないのー!」清子は畑を臨む部屋で外に向かって叫んだ。ここからは竹垣の入り口が見える。梅雨明け間近、勢いよく伸びだした里芋の葉っぱに大粒の雨が当たって、ぱらぱらと賑やかな音がしている。

良きかな、良きかな。今日も平和だ。三郎は、やる気が空回りしている清子を面白く見ている。

「きっと雨降りだからですよ。」

清子は、それもそうかと思い直す。


梅雨明け

「どうして誰も来ないのー!」清子は同じ場所で叫んでいる。ニイニイゼミが同じくらい元気に鳴いている。

「きっと暑いからですよ。」内陸性気候。

それもそうか・・・なんて思えない!

「どうせ秋になれば長雨が、冬になれば寒いからとか言うのでしょう。それは結局いつになっても誰も来ないということです!」

槐がぼそりと呟く。「嫌われておるだけじゃ。」

「やっぱり。やっぱりそう思う?」暑さに負けぎみの槐をのぞき込む。暑苦しい。槐はそっぽを向いた。

「でもでも好き嫌いで大局を見誤ってはいけないと思うの。林造さんじゃ埒が明かないわ、私が説得に行ってきます。」

三郎「暑いから駄目です。」

「では朝方」

「忙しいから駄目です。」

「槐と」

「駄目です。」三郎は寝たふりを決め込む。

ムムム。

清子は床でのびている槐を掴んでぷりぷりしながら部屋を出て行った。

「私がこのように困っているというのに、なんと白状な夫なんでしょう。こういうときは、一緒に幸徳井に様子見に行ってみましょうか、とか言ってくれてもいいではありませんか。」一人不平を言う。でもちゃんとわかっている。

「三郎さんは、陰陽師も、幸徳井もお好きではない。」寂しそうに言った。

夫は寝ている。その間に幸徳井に行って帰ってこられないだろうかと考える。

幸徳井までは1里半刻。往復で1刻。昼寝の間に行って帰ってくるのは無理。

でも・・・。

「ねぇ、槐。三郎さんが寝ている間に、幸徳井まで行って帰ってこられないかしら?」

「夫の寝ている間に浮気か?褒められたことではないな。」

「何てことを言うのです!私はただ、返事一つ寄越さないのはどういうつもりなのかと問い質したいだけよ。何かしら返事をすべきでしょう!」

「面倒臭い。」目が死んでいる。

その様子に、清子は横を向いてぼそっと呟いた。

「韋天将軍なら一瞬でしょうけど、十二天将には難しいお願いかしらね。」

「言ったな!」

次の瞬間清子は槐に抱えられて空を飛んでいた。正確には跳躍である。

里芋畑が一気に遠退き、緑の水田が広がり、町になった。

「さすが槐!韋天将軍も真っ青よ!」ちなみに韋駄天は光速を越える。


とんとんとん。「ご機嫌よう!」

戸口が開いて梅若が顔を出した「あっ。」

「御機嫌よう。真備はいる?」にこにこ。

「えーと、留守だけど。」戸惑う。

「居留守かしら?」酷い扱いが続いたので疑いもする。

「ほんとに留守です。今は亀山の本陣だと思う。」

亀山は反乱軍が落とした宿場町だと誰かが言っていた。

「誰か傭兵を連れて行ったのかしら?」心配になって聞いた。

「今回は一人で出かけました。出発したのは、ほら、姫様が熊を持って来た日の翌日だから。」

「長い間留守にしているのね。」

「ああ見えて大将は国民軍の大尉なんだ。」誇らしそうに言った。清子は大尉がどれくらいのものなのかピンとこない。しかし、ついこの前まで江戸城に住んでいた身の上である。動揺しないわけにいかない。

「真備は軍人さんなの・・・。」だから傭兵なのだ。

「僕たちのより良い明日のために戦ってくれているんだ。」

「手紙に返事がないのは当然ね。」

「あぁ、子供たちに帳簿付けの方法を教えてくれるっていうやつ?僕が、使いを送ったから届いていると思うんだけど。」

「真備は、余計なことをって怒るかしら?」それとも気にもしてないかしら。

「うーん、そんなことはないと思うけど、返事が来ないからどうかな。」

梅若の後ろから小さな女の子が顔を出した。「にぃに、お客さん?」

「あ、うん。ご宗家のお姫様だよ。」今は野良だけど。(いいえ、家はあります!)

清子はしゃがんでにっこり微笑む。

「私のおうちでみんなとお勉強をしたいのだけど、あなたも来ない?」

「お姫様の家?」

「そう、ここから南東に一里くらいのところにあるお化け屋敷よ。」思わせぶりに言った。

「あっ。」梅若はお化け屋敷に心当たりがあった。結構有名。

「お化け屋敷!?行きたい!」

「じゃぁ、お友達を誘ってみんなでおいで。」にっこり。


僕等は宗家を恨んでいる。でも僕等は、宗家に一体何を望んでいるのだろう。宗家が星の数ほどいる陰陽師に総ての財産を配って回ればいいのだろうか。そんなことでは僕等の生活はきっと何も変わらないのに。



梅若が送った手紙は真備に届いていた。

「懲りねぇな。」そう言って真備は手紙をしまった。

「真備、山県さんがお呼びだぞ。」

「はーい、今行きまーす。」

「何かいいことでもあったか?」

「何にもないですよ、黒田さん。」


すいません。投稿が遅れました。反乱軍に誰がいるかを考えていたら遅くなりました。

第二次禁門の変で西郷さんと大久保さんと桂さんは責任者として切腹です。維新三傑死滅。

桂さんがいないと村田蔵六さんは世に出ないと思うんですよね。第二次では薩摩主導で全国展開する予定がなかったので軍師は二人もいらないと思います伊地知さんでよし。伊藤博文さんと井上馨さんは切腹させられたかな。伊藤さんは大丈夫だと思う。うーん難しい。山県さんは第二次禁門の変に加わらないんじゃないかと思うのですがどうですか。こんなことを考えていると睡眠不足です。

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