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幕末京都の御伽噺  作者: 鏑木桃音
103/154

悪夢

短いです。

主上の願いを叶えるためにやるべきことは、大きく分けて2つある。

1朝廷内の佐幕派の復活。

2佐幕派内部から公議公論体制に移行させる。

泰清はこの方針に従って、早速行動を開始する。


御常御殿

泰清は主上に言上する。

「主上。やはり、関白さんたちに戻ってきていただかないと、何も始まりません。きっと関白さんたちは、姉小路さんや東坊城さんの時のような刀傷沙汰を怖れておいでなのです。」

「そのとおりです。」

「いっそ、反幕派を閉門にしてはどうでしょうか。」

「それには理由が必要です、理由は何と?」

「・・・・・・不敬?」万能。

「不敬!」万能。

主上は、関白と中川宮に辞職を迫った公家たちに処分を下す。

山階宮 蟄居、正親町三条実愛 遠慮閉門、中御門経之・大原重徳 閉門、以下差控


「主上。岩倉村の岩倉具視様のところに薩摩藩士が頻繁に出入りしているそうでございますよ。」

「岩倉に薩摩藩士!」

主上は、守護職に岩倉具視の仮屋の監視を申し付けた。


「主上。反幕の火元は排除しましたが、小さな火種は其処彼処に(くすぶ)っています。朝臣が心得違いしないように、幕府は敵ではないと周知させる必要があります。徳川様と守護職様に朝臣の証、衣冠を贈るのはどうでしょうか。」

「衣冠!」

主上は、徳川慶喜に衣冠を二着と守護職に一着を下賜した。


泰清は手紙を文箱に入れて、自分の邸の警固役に渡す。守護職宛ての文である。

泰清の目指すところは、守護職の考えを公議公論容認へ転向させて幕政に復帰させることである。

泰清には政治権力がない、それが丁度いい。

徳川さんは・・・ちょっと苦手なので、いつかそのうち、また今度。

次の日、警固役が泰清の文箱を持って来た。中をあけると、守護職からの手紙と山茶花の花が一輪入っていた。素敵。

泰清と守護職は文通友達になった。


主上と泰清の努力の甲斐あり、二条関白と中川宮は出勤するようになった。


ある日、三条河原に立札が立った。

お師匠さんは、立札に何が書かれていたか教えて下さらなかった。お師匠さんが帰った後に、邸の警固役に聞きました。

「神を(かた)る化け狐、好物は黄金色の油揚げ、幕の手先にして天子を(だま)し宜しき(とき)を貪る。(いぶり)出して即刻駆除すべし。」


御常御殿内部のことは秘密なようで秘密でない。主上のまわりに反幕派がいる限り、泰清のしていることは外に漏れる。主上により処分を受けた公家宮は累計で62人、半数近くの堂上が朝廷を去った。追われた公家たちはすべて強固に繋がっている。得体の知れない者とも繋がっている。泰清の現在地はかなり危うい。

高札は警告だ。

私を疎ましく思っている人がどれくらいいれば立札が立つのでしょう。何人の警固がいれば安心できるのでしょう。

梅小路から帰って来いと使者がくる。

帰りたい。

関白さんたちは戻ってきた。主上はもう一人ではない。もう良いのでは?



日が暮れると、警固役交代のために潜戸が開く。その一瞬に事件は起きた。

向かいの邸から幾人かの侍が現れ(くぐり)戸から邸内に押し入り、内側に貫の木を掛けた。門外から他の警固役が門戸を叩く。邸内部には、泰清の都合で見張りがほとんどいない、式だらけだ。

そのほとんどいない見張りが門外の仲間に助けを求める。異変に気づいた式が急を知らせる。戦闘用の式は槐しかいない。そもそも清子には戦闘方法がわからない。だから戦闘用式をまともに扱えない。よくて清子の壁になるくらいだ。

警固役は皆やられた。行く手を阻む式が次々と紙片に変わっていく。

侍たちは殿中に踏み入り、興奮気味に何かを喚きながら近づいてくる。

「破邪顕正!」「乾坤一擲!」「神罰上等!」「唯我独尊!」

陰陽道の最高神官を殺しにきたのだ。自らを鼓舞しないわけにはいかない。

清子は青ざめて槐をみる。「どうしましょう。」

「ご心配遊ばしますな。」槐は落ち着き払って答える。

御本社での悪夢が蘇る。「それはそれでどうしましょう!」


この時処分した公家は22人です。

歴史に詳しい方はもう清子が何をするかわかっていることと思います。ですのでそろそろ歴史から乖離していきます。




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