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第五話 これは夢でした……というオチならよかったのに。

異世界転移から一日が過ぎた。しぶしぶ、目を覚ます。

 チュンチュンという鳥の声ではなく、冒険者たちの武器の擦れるカランという音やガタガタと激しい足音で目が覚めた。ああ、自室じゃないのがショックである。思った以上に硬いベッドにペラペラの布団。クッションという概念がなく、着ていたジャージを枕代わりにした。無事、首が終わったのは言うまでもない。


「創作者。起きろ。」

「はーい。」


 さて。今日から僕の創作したストーリーが進むわけだが……一番の難点がある。それは、僕が楽しめないということだ。確かに書いたり考えたりする段階までは楽しい。いやむしろご褒美。だが、それ以上がつまらなくなる可能性がある。予想通りのシナリオ、予想通りのセリフ。それを見つくした僕には彼らの反応があまり期待できなかった。まあ、それ以外なら土下座してもいいかも。


 とりあえず、呼ばれたからジャージを身にまとって出た。


 廊下にはすでにみんながいた。腕を組んでこちらを見下ろすレオン。眠そうに大きな欠伸を見せるケイル。じーっとこちらを観察しているアンナ。杖をいじるルマ。見事に行動がかぶっていない。


「それで、今日は何するか考えたのか?」

「あ、はい。一応。」


 レオンは腕を組んだままこくりとうなずいた。廊下で話すのもなんだと言われてそのままレオンの泊まる部屋へ向かう。……なんと、その場でかけというらしい。みんなが見て、ちゃんと書いているという証明をするみたいだ。なんか現実的すぎて怖いんだけど。もっとキラキラしてていいと思うよ?……と思いつつ、席に座った。


「まずは一日一個のノルマのやつ。」

「はい……。」


 僕はサラサラっとあることを書いた。あえて伏せておく。そのほうが面白いから。


「はい。書きました。」

「よし……で、俺等はこれからどうするかだが。まずは創作者……いやリヒト。ギルド登録に行くぞ。」

「わかりました。」


 ギルド登録って面倒くさいのだろうか。そんな疑問をよそにみんな立ち上がる。

 ふと、ルマが声かけてきた。


「あの、創作者さん……お洋服、それでいいの?」


 そう言われて視線をジャージに移す。確かにそれはそうだ。僕は二日連続この服を着ている。衛生的にも気分的にも最悪だ。


「お金がないんです……。」


 何度目かの正直を言うと、ケイルが頭を掻いた。


「確かにな。よし、じゃあ今日のプランは決まったな。創作者さんの冒険ライフスタイルを固めるぞ。」


 いや、だからなんでそんなに現実的に考えれるんだ。と思いながら僕は小さく頷く。

 実際、その話は願ったり叶ったりだ。服もそうだがなんとなくこのノートをしまえるバックぐらいは欲しい。それに、異世界のお店を直で見てみたいという願いも強かった。だって、改めて考えればここは僕が考えた世界なのだから。


 ふと、アンナが首を傾げる。

「その服けっこうよさそうよね。なんていうやつなの?」

「ジャージです。確かに見慣れないかもですね。」

「じゃーじ……?」

 そして、安心した。異世界の服を指摘する異世界人は定番中の定番。うんうんと頷いているとアンナは言う。


「いいわね。動きやすそうだわ。」

「あー……ありがとうございます。」

「褒めてないわよ。」


 服に対して金以外の面で見てる人を初めて見たかもしれない。まぁ確かにジャージは革命的なのだが。




 街に出ると、昨日よりも人波が増えているような感じがした。ケイルいわく、「朝は夜任務の人が帰ってくるから混んでみるんだぜ。」とのこと。みんな社畜のように朝から夜まで働いているようだ。どこでも大人は大変なようで……。まぁ、僕もそろそろそういう立場にならないといけないのだけれど。

 今は何をしているって?まず先に服だと言われ、朝からやっている服屋を探している。

「服屋と言ったらあそこだよね。」

 アンナが人差し指をピンと立てて自慢げにいった。でも

 正直に言いたい。僕は服には興味がない。それより、先ほどレオンからさらっと聞いたこの世界の仕組みは少しだけうらやましいものがある。

 一つ、朝帰りと夜帰りに合わせてやってる店とやってない店の区間が違うらしい。実質、二十四時間営業のコンビニが十二時間に分裂して各地に点在してるみたいな感じだ。何を言っているのだろうか。

 二つ、昼間はだいたいセールをやっているみたいで冒険者はそこまではご飯を食べているのだとか。やはり、どこでも金欠なようだ。


 だが、セールの時間が決まっていると顧客はなんだかうれしい気持ちになる。僕もなんとなくうれしい。残りのお金でまた別のものを買えるのだから。


 しばらく朝の心地よい風に当てられ歩いていると、お目当ての服屋にやってきた。異世界の文字は見えないが入り口に掲げられている大きなTシャツが服屋だと主張している。布の香りが辺りに漂っていた。


「よし。きたわね。……ねぇ、創作者。一応聞くけど服は好き?」


 いきなり地雷を踏むような質問をしないでほしい。

「いえ……あまり興味はないです。」

「やっぱり。そのジャージ、機能性は良さそうだけどダサいもん。」


 おいおい……僕ら日陰者のありがたいものを馬鹿にするんじゃない。いや、まぁこの世界にはないから仕方ないか。


「てことで今から私たちがあんたの服を選んであげる。」

「いいんですか?」


 少し引き気味に僕が答えると、「あたり前よ。」とアンナはニコッと微笑んで僕の肩に手を置いた。隣にいたケイルもニカッと笑って言う。


「あんた、思ったよりもイケメンだぜ?」

「……は?」


 生涯十七年。彼女は一度もできたことがない僕に目の前の人は"イケメン"と言った。それは、たぶん間違っているだろう。

遅れてすみませんでした!!

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