第十九話 魔法=イメージ?
ひたすら投げる練習をした。死ぬほど、何度も何度も。だが、意外とコツをつかめてきたので、次は魔法の使い方を教わることになった。投げナイフを戻すやり方がマスト、それ以外はおまけというアンバランスである。
よく、異世界ファンタジーで言うのは魔法はイメージの強さで術者の扱える魔法の幅が違うということだ。つまり、妄想癖だらけの僕にはお宝という証がつくのではないだろうか。……という建前はさておき、今度の先生は水色の髪をした魔法使いルマ先生だ。
同じ背丈のため、同級生と間違えてしまうが僕より十個年上らしい。レディが年齢を明かしてきたときはちょっとビビったけどね。
杖を構えながらルマは言う。
「創作者さんはまず魔法を使ってこなかった。だから、魔法を感じるところから始めよっか。」
よくあるやつだと、ワクワクしながらどう感じるんだろ?と想像する。
パターン一。手をつないで魔力の流れを感じる。これスピリチュアルな感じで現実にもあるみたいだけど僕には全く見えたことはない。残念な話である。
パターンニ。実際に魔法を使われているところを見て感覚で覚えるタイプ。これは、ちょっと具体性がないから、取得に時間がかかりそうだ。
パターン三。微弱な攻撃、あるいは回復魔法を受けてみる。たしか、ポーションを飲んだときにふわっと身体が浮いた気がする。そんな感じで身体的に感じることができるかも知れない。
さて、この世界の人はどのようにしてまだ使えぬ子供に魔法を教えるのだろうか。
「じゃあまずこれに触れてみて。」
そういったのは杖だった。あの、ふにゃふにゃした面白い形をした杖。たいていの魔法使いは使っていそうな……武器である。
「はい。」
言われたとおりに手を伸ばしてみる。すると、バチンと静電気がはじけるような音がした。めちゃビビるし、ヒリヒリする。
「……?」
「それが"魔法"だよ?」
なるほど、この痛みが魔法。……うん?ということはルマは雷魔法でも使っているのか?つまりパターン三を選択したのか。あるいは類似のやり方か。嘘だろ。あれって創作の中だけだと思ってた。再現度高いな。
「……それで、これを出すにはどうしたらいいんですか?」
そう。問題はそこだ。感じ取れても、イメージできたとしても根本的にどうするのかを異世界人である僕は理解しがたい。五感に六感目が加わる違和感は、十数年生きた僕にはきつい話である。年齢を増すほどそれはさらに難しくなるのだ。
ルマは顎に手を当ててあっさりいう。
「普通にイメージしたら出るよ?」
いやいや、そんなすぐ出たら苦労しませんって。ステータス画面も、自分の魔力残量もあまり分かっていない。そのなかで何も考えずに魔法を放ち、無事で済むわけがないのだ。
「そんなに簡単なんですか?」
「やってみないとわかんないと思うな。」
そんな投げやり教育知らないんだけど。そう思いながらイメージすることにした。何も分からない。だけどまぁ、いいか。
とりあえず、基礎中の基礎。炎を出してみたい。
熱くてメラメラ燃える炎。キッチンのコンロに揺れる、最近はIHに侵略されて数を減らしているあいつ。暖炉についていたら何となくあったまる炎。
火というか炎というか、イメージはどちらがつよいかをよくわからずひたすら案を足し始めた。そして、手っ取り早いのを思い出す。
花火だ。
よく、手持ち花火にチャッカマンで火を灯してみんなに受け渡してたっけ。そんなバケツリレーみたいのが今はひどく懐かしい。
そう思って手のひらを当ててみたその時だった。じわじわと体温が上がっていく感覚がする。そして手のひらには……。
ボウっと小さな音を出して火の玉が現れたではないか。近くにいたみんなが一応拍手してくれる。いやいや、ガチで妄想癖ここで役に立つのか?
僕はその後好奇心に駆られていろんな魔法を試した。
みんな大好き水で雲を作ってみたり、風で小さなトルネードを作ってみたり、雷を鳴らして静電気でピリピリとしたり。それはもう、おもちゃを手に入れて楽しむ子どもに戻った気分だった。まぁ実際、僕はまだ子どもなのだけど。
そんな魔法で遊ぶ時間をかれこれ数十分以上続けた。
そして、そろそろ投げナイフを操る魔法実践のときが来た。僕は意外と魔力はあるらしい。だからこの数十分、魔力切れを起こさなかった。それは、よかった。
ルマはナイフを手にしていう。
「魔法の使い方、とても上手。だから、今度は魔法を操るんじゃなくてこのナイフを動かすイメージ。わかる?」
まぁ、なんとなく分かる。僕はコクリと頷いた。やってみてだめなら聞くだけの話である。投げナイフの時に痛いほど理解した。
試しに手を伸ばしてナイフを動かしてみる。意外と、重いのかちょっと浮き上がる程度だった。難しい。ルマは、少しでも動かせたことに感嘆しているようだが、そんなのは生ぬるいのではないだろうか。僕は続けて、操作を続けた。
結果。少しだけ投げれるほど上達しました。すげぇ、僕できるんだ。運動音痴で体力がなくても、魔力は有り余ってるみたいだ。これはかなりお得である。
基礎的知識を覚えたところで、レオンが満足そうに頷く。
「これでもう、足手まといじゃないな?」
ええと、一つ聞きたい。皆さんは足手まといだと思って生活していたのだろうかと。




