二年前の
「そう。前にもそんな感じの妙な若い男がいたけど、気づいたらここに来なくなってね」
私より前にもこの世界に転生してきた人が…?
「え、まっておばちゃん。それはどういうこと?」
私の思ったことをラウルがすぐに聞いてくれた。単純に彼も気になったんだと思うけど、こういうときにぱっと行動に移せるのは彼の良いところだなと思う。
「その前に」
「十二」
おばあちゃんが何か言う前にリベリオがさっきの数字を答える。
「ふん、あんたはいつも生意気だね」
「おばちゃんこそ、お変わりなく過ごされているご様子で」
一触即発じゃないかと思う空気が流れている中、意味がわからずきょとんとしている私にラウルが説明をしてくれる。
「入り口で見た蝙蝠いるでしょ?あの大量の中に一羽だけ数字のプレートを着けてるやつがいるんだよ。それを当てられたら診察してもらえるってね」
おばちゃんとリベリオの方を見る。憎まれ口を叩いてはいるが、長年の付き合いだからこその掛け合いなんだと感じた。
「あんたらが若い娘を連れてくるなんて夢かと思ったよ」
「ちょっとおばちゃん、僕たちだってまだ若いんだからね?女の子一人ぐらい連れててもおかしくないでしょ」
薄く微笑みながら病院でよく見るキャスターつきの椅子に座る。
「職業柄、いても長続きしないだろ」
「あーん…まぁ」
「そればっかりはしょうがねぇんだよ」
二人して困ったような顔をする。まぁたしかにもし仮に好きになった人が、マフィアとして人を殺していますなんて言われたら、ちょっと色々と考えてしまう。
でもだからといって、彼ら自身のそのものを否定したくはないし、マフィアである彼らが完全な悪かと言われるとそうじゃない気がする。でも、私がもしレオーネではなくて、ブルーノの令嬢だったら彼らに殺されてしまうのだろうか。
「で、なんであんたたちはこの可愛い不思議ちゃんをウチに連れてきたんだい?」
「えっと、すごく単純なことではあるんですけど…夢を見るんです。それも何度も」
おばあちゃんは、なるほど、と一度頷いてからファイルの入っている棚を漁る。
この部屋は診察室というより、どちらかというと研究室の方が近いような見た目をしていた。
「私があったことのある不思議な男の子もそう言っていたよ」
「え?!あ、あの今その男の子はどこにいるんですか?」
「これ以上は」
と、ふるふると首を横に振った。きっとこれ以上は教えられないという意味だろう。
「おばちゃん、金はあるぜ」
リベリオがすっと封筒を出す。この国の通貨や日本円あたりの価値がどんなものかは理解していないけれど、パッと見ただけでも封筒がそこそこな厚さであることはわかった。
「悪いが、こればっかりは金の問題じゃないんだよ」
「どういうことだ」
「彼は死んだよ、二年前のモレッティとブルーノの抗争に巻き込まれて」
金の問題じゃないと聞いてまさかとは思ったが本当にそうだった。二年前のうち以外のファミリーの抗争がどんなものだったかはわからないけど、おそらく一般人であろう男の子が巻き込まれたということは大きいものだったんだと思う。
横に並んでいた二人を見ると、とても複雑そうな表情をしていた。
「なるほどね、まぁその男のことはこっちで勝手に調べるよ」
「そうだな。ばあちゃん、これは俺からの個人的な依頼だ。頼んでもいいか?」
さっき渡そうとしていたお金の封筒と同じくらいの大きさのものをおばちゃんに渡す。中身を見て一瞬驚いた表情をしていたが、すぐに納得したような顔をしてリベリオを見た。
「あんた本気かい?私は何があっても事実を伝えるよ」
「ああ、知ってるさ。だからこそあんたに頼んでる」
「よくわかってるじゃないか」
そういって封筒を引き出しにしまった。そして改めて私の方を見る。
「夢は私にゃどうにもできないよ。ただ、たくさん夢を見るのはおそらくその体質のせいだ。どうしてもと言うなら睡眠薬とかあげられるけど、あんたはどうしたい?」
「じゃあ念のためもらっておいてもいいですか?」
無言で頷いて奥からいくつか薬を持ってきてくれる。
「また何かあったらおいで。あんたなら数わかんなくても顔パスで通してやるよ」
「あ、ありがとうございます!」
しっかりとお礼をして席を立つ。
「リベリオ、これは時間がかかるからね」
「わかってますよ」
そう交わしておばちゃんの病院を後にした。
なんか変な怪しいおばあちゃんって覚えておいてもらえれば…




