17 クルーディア
一同はクルーディアへと到着。ちょっと無茶させた分、お馬さんを労ってやりたい。
着いた町の灯りは、電気や蛍光灯とは違い、魔石やランタンなどでぼんやりと光っている。漆喰壁で造られた家々の中からゆらりと見られる。これも正しくファンタジーを感じる瞬間ではないだろうか。
何というかロマンチックな明かりって言えばいいのかな?
物思いにふけていると声をかけられる。アイシアからだ。
「じゃあ私達はここだから……」
馬車からすたっと軽く飛び降り、ジャリっと砂をこする音を鳴らすアイシアに対し、ゆっくり降りるリュッカ。
「すいませんけど、ホスキンさんをお願いします。宿屋に予約入ってた筈なんで……」
そのホスキンは荷馬車から身体を少し乗り出すと心配そうな顔する。
「大丈夫かい? ギルドにはやはり一緒に……」
「大丈夫です、ホスキンさん。確認をするだけですから。それより怪我の方が心配ですから安静にしてて下さいね」
リュッカが優しく諭すと、分かったよとまだ少し心配そうだが、身体を引っ込めた。
「じゃあ、とりあえずここでお別れだね」
「うん。今日は本当に助けてくれてありがとう。次に会うのは王都かな?」
「どうだろ? もしかしたらまたこの町で会うかもね」
「そうかも」
軽く笑いあった。そろそろ行くよと声がかかる。
「じゃあまたね」
「うん。またねー」
「ありがとうー」
馬車は別れを惜しむようにゆっくりと走った。
――宿屋にホスキンを送り、大丈夫なのを確認するとこちらも下宿先へと向かった。何でも道具屋の人の所に一晩泊めてもらえるそう。少しでも旅費を安くするためであろう。
薬瓶の看板のある建物の扉を開ける。チリンチリンと鈴の音がする。その部屋の中は暗いが、奥の方には小さな明かりが灯っている。ゴソゴソと物音と共に揺らめく影がある。
「あー……すみませんね。そろそろ店じまいなんですよ」
ちょっと掠れたような声が聞こえた。
「私だよ、バトソンだよ」
そう答えるとのそっとその影が起き上がり、姿を見せてこちらを確認する。
「ん……? おおっ、やっと来たか。えらく遅かったじゃねえか」
ハンチング帽を被った老け気味の肥えたおじさんが出てきた。中々立派な下っ腹である。
「すまないねぇ、少しトラブルがあってねぇ。今着いたところさ」
「まあ、事情は後で聞くさ。それより――」
ちらっとこちらを見たので、ぺこりと軽くお辞儀をする。
「その子がリリアちゃんかい! いやぁ〜小っちゃい頃に見たきりだったが、えれぇ〜ベッピンさんになったなぁ。ハハハハハ……」
中々豪快そうな人である。道具屋のおじさんとかもう少し落ち着いたイメージがあったのだが、軽く裏切られた気分だ。




