18 元冒険者でした
「おーいっ。リリアちゃんが来たぞぉー」
道具屋のおじさんが大きな声で向こうの出入り口に向かって叫ぶ。
「はいはい」
バタバタと早い足音が聞こえてきた。出入り口からこれまた小太りのおばさんがエプロン姿で出てきた。
この世界にもエプロンってあるんだ。何故かリリアの母親はつけてなかったしな、無いかと思った。
「あらあらあら、まあまあまあリリアちゃん? リリアちゃんよね。あら〜こんなに可愛いくなっちゃって……」
ズンズンと歩み寄り抱きついてこようとする。思わず後ずさる。
「は、はい。どうもご無沙汰――」
「ああ〜っ! こんなに可愛いくなっちゃってまぁ」
ぎゅっーと抱きしめられる。腕の力が凄く、太さもあるため、ホールドされて動けない。
脱出できないし、苦しい……母親ともアイシアとも違う物理的包容力。
ぴくぴくと痙攣を始める俺を見て、バトソンさんは止めに入る。
「奥さんっ! リリアちゃんが……」
青ざめて苦しんでいる俺を見てパッと腕を解く。
「あらあらごめんなさいっ。大丈夫?」
「は、はい、大丈夫……です」
マジな話、本当に息が出来なかった。
「おいっ。じゃあ飯か?」
「そうね、ちょっと温め直してくるわ」
会話を聞くに待っててくれてたらしい。優しい人達だ、俺は運がいい。親切な人達ばかりだ。
「すみません、私達が遅れたばかりに……」
申し訳なさそうに謝ると背中をバンッと叩かれる。
「いいのよっ。気にしなくて。さ、ご飯にしましょ」
母親といい、アイシアといい、この人といい、こちらの女性は積極的かつ力強い人が多いのかな? 比率的に。
――案内された部屋にはご馳走が並ぶ。ふわりといい匂いが漂っている。リリアの母親のところではこんなに料理の匂いはしなかった。
というか温かい食べ物が少なかったような気がする。
「さあさ、お腹空いたでしょ。たーんとお食べ」
「ほれ座りな、リリアちゃん。おめーさんもな」
「……すみません、お世話になります」
「お行儀がいい子に育ったんだね」
「おう! あのおてんば娘が育てたにしちゃあ、立派に育ったじゃねえか」
まるでリリアの母親を知っているような口ぶり。
「あの母の事、ご存知なんですか?」
「おうとも。話した事無かったか? おめーの母ちゃんは元冒険者だ。よくウチに買い出しに来ては山に登って迷宮に潜ってたっけなぁ」
あの人、元は冒険者だったんだ。どうりでガサツだが姉御肌感があったんだ。
でも、そしたらどうしてあんなひ弱そうな旦那と結婚したんだ? 気にはなったが、聞くのも野暮だと思ったので、聞かない事にした。
きっと色々あったんだろう、人生何があるかわかったもんじゃないし。




