8 身分証明書獲得ついでに依頼受け
俺達は国王に勧められるままに冒険者ギルドへと向かう。以前コニーが案内してくれたから街に出ても迷うことはなかった。
商業区の入口付近に目的の冒険者ギルドがあったので早速入ることになったのだが、かなり空気が悪い。
雰囲気というかなんというか、入ってきたものを値踏みするかのように眺める者だらけである、ある者は興味なさげに、ある者は奇異の眼差しで眺めてくる。
そしてこういう場所、こういう異世界特有の絡みというのがあるわけで
「よぉ兄ちゃん見ねぇ顔だな、俺達今金に困っててさぁ、有り金とそこの嬢ちゃん置いて出て行ってくんね?」
「ギャハハ、お前ひでぇなぁ。でも言えてる、金と女置いていきなぁ」
というよくありそうなというか、定番の絡みをギルド入口でされた。
面倒だなぁと横目にナイアを見ればすごくニヤニヤしている、周りの冒険者らしき者達は変わらず値踏みするように見ている。
「何よそ見してんだオラァ、話聞いてんのかよ!」
と言いながらモブAが殴ってくる、だがあまりにも遅い。
スキルを使わなくても容易く避けることが出来るだろうがあえて避けずにその腕を掴みその勢いのまま背負い投げのようにギルド入口に向けて投げ飛ばした。
もうひとりのモブBが切りかかろうとした。
そこにスッと音もなくナイアが近づき
「脱衣!!」
と叫ぶと男の鎧が弾け飛び、生まれたままの姿となった。
そんな男へと追い打ちを掛けることを忘れないのがナイアである。
「あらあら、そんな貧相なモノぶら下げて恥ずかしくないのかしら?フフッ」
と言って鼻で笑っている、こいつ絶対今即席で魔法作りやがったな。
ナイアの発現を聞いてからモブBは状況を理解したのか顔を真っ赤にし『キャァァァァァアアアア!!』などと叫びだした。
「なんだ?、貧相なりにぶら下げてるのに生娘みたいな声上げて恥ずかしがるんだな?」
と言ってやるとギルド内が爆笑に包まれた。
そして投げ飛ばされたモブAはというと
「やってくれたなぁ!!、『我が剣は炎の化身、燃え盛る力の根源』!!」
こいつは完全に頭に血が登っている様だが、何やら叫ぶと持っている剣が炎に包まれる。
これがエンチャントの魔法かと考えながら眺めているとやはりというか斬りかかってきた。
「俺の剣の前に爆ぜろ!!」
「そぉい!!」
斬りかかってくるのに合わせて裏拳を振り抜くとモブAが持っていた剣が砕け散る。
男は何が起こったのか理解できずに俺に蹴り飛ばされ再びギルドの外まで吹っ飛ばされた。
だがなにかまずいことをしたようで『おい、今の奴よぉ・・・』『ああ、間違いねぇな・・・』などと冒険者達が囁いている。
そして騒ぎを聞きつけたのかギルドカウンターの奥から身長2メートルはあろうかという大男が出てきた。
「うるっせぇぞ!!、俺のギルドで何騒いでやがるヒヨっ子供が!!」
「「「「!?」」」」
その声に反応して冒険者達はサッと目を背ける、そしてその目の前に立っている俺とナイア、全裸の冒険者と外で伸びている冒険者が残った。
「またてめぇらか!!、いくらAランク冒険者だからと言ってもこんだけ騒ぎを起こすなら登録抹消すんぞオラァ!!」
そう叫びながら俺たちの元へと近づいてきた、かと思うと突然その太い腕を振り上げ、俺に叩きつけてきた。
「ふん!!」
「おわっ!?」
思わず受け止めると『ズシィィィィン!!』と地響きがした。
「これでお前らも勘弁してやる、ところで、俺のギルドに何の用だ?」
「痛っつ~、一応王からギルドに登録して来いって言われてんだが?、連絡されてねぇか?、いや今の対応だとされてねぇな。あの野郎・・・」
「あぁ?、国王から登録して来いだァ?、ちょっと鑑定させてもらうぞ」
そう言いながら眼鏡のようなものをかけて俺を鑑定する大男。
数秒後真っ青な顔がそこにはあった。
「こ、こいつぁ失礼した、いや、失礼致しました。どうぞこちらへ、ささこんな奴ら放置でいいですから」
突然大男の態度がガラリと変わると周りの冒険者の雰囲気も変わるが気にせずについていった。
冒険者ギルドの建物は3階立てになっており、俺達は3階の書斎のような場所に通された。
大男はそのまま書斎の席に着くと対面へと促すのでそのまま従ったところで大男が口を開いた。
「先程は失礼した、俺はここの冒険者ギルドのギルドマスターでゴライア・ガンテツってんだよろしく頼む」
「俺は義仲 昴だ、こっちは俺の奴隷でナイアという」
「よろしく~」
「さて挨拶を済ませたとこでまずは先ほどの非礼の侘びだな、すまんな、あいつらは自分たちの強さをひけらかす馬鹿共でなぁ。お前が投げ飛ばした奴はエルドリア・シュナイゼルって奴で別名『炎断のシュナイゼル』、お嬢ちゃんが裸にひん剥いた男はクリフ・トーラス、別名『堅牢のトーラス』っつう名前で通ってる。どちらもAランク冒険者なんだが素行に問題があってなぁ、まぁ今回のことで大分お大人しくなるだろうさ」
「はぁ、まぁ俺らは降りかかる火の粉を払っただけだからな、あいつらに興味がない」
もうアイツ等は俺の中ではモブAとモブB程度にしか思ってないのだから。
「はっはっは!、Aランク冒険者を火の粉と言っちまうのかよ。流石はスエイズの勇者様か?」
「そうか、鑑定で俺の素性はわかるわけか」
「そういうことだ、だがそっちの嬢ちゃんの名前や素性がわからねぇ、鑑定してるのに全部意味不明の文字の羅列だ、おかげでかなり怪しいんだが・・・」
「・・・ナイアお前魔法で鑑定妨害してんだろ」
「あら、バレちった。でもいいの?」
「お前ならどうにでもなるんだろ?」
「ん~、それもそうだね。はい、鑑定していいよ~」
「妨害なんてしないでくれよな?、どれどれ・・・」
ついでに俺も鑑定してみるか
ナイア(嘘)
大魔法師(嘘)
Lv.125(嘘)
スキル
炎魔法 氷結魔法 紫電魔法 地殻魔法 結界魔法 魔術妨害 魔蔵 瞬身 詠唱破棄 (全て嘘)
・・・・・。
いや確かにどうにでもなるって今行ったけどさ、嘘まみれもいいとこなんだが。
「おぉ、これは魔法師殿でしたかこれは失礼致しました。ですがギルドなどには情報はなかったはず・・・」
「えぇ、山奥で研究をしていたもので。つい最近国王に呼び出され、奴隷と身分を偽って勇者様のお側でお守りしているのです(嘘)」
「そうなのですか、成る程。」
納得していいのか?、それでいいのかギルドマスター・・・
だがどうやらナイアのことはバレてないらしいのでそのまま行く事にしよう。
「で、俺らの目的なんだが、ギルドに登録して置きたくてな。王からも登録しとけば何かと便利だと言われたんだ。」
「確かにそのほうが動きやすいでしょうな、依頼を受けるのにも鑑定できなければ身分がわからないなんてのは不便ですから。ではこちらの紙にサインと血印をお願いします。」
そう言われ紙にサインする、今更だが日本語でいいのだろうか?と疑問に思ったが気にしないことにしよう。
ナイアも書き終わり血印を押した。
血印をした瞬間、その紙が輝き一枚のカードへと変わる。
そのカードがギルドカードとなるようだ。
「そちらのカードはなくさない様お願いします。一応俺ら冒険者の身分証明書みたいなもんなんで、で、本来は最低ランクのFランクから初めてもらうのですが先程Aランクの二人をあしらってたんで、俺の権限でお二方Aランクからの開始になりますんでそのつもりで」
「わかった、ナイアもそれでいいな?」
「構わないわ、奴隷でAランクなのはどうかとも思うけど」
「そこは気にすんなよ・・・」
ひとまず目標は達成した訳だが
「そんでお二方、頼みがあるんだが・・・」
「早速面倒事か?」
「いや、二人がお灸を据えた二人が受注するはずだった依頼、受けてもらえないだろうか?」
「そんなのあいつらに・・・いや無理か、片方は羞恥心で、もう片方は武器を俺が叩き割ったもんな・・・」
「そういうことだ、まぁ大した依頼じゃないさ、場所が場所なだけでな」
「そうなのか?、まぁ報酬さえもえらえれば俺らは構わねぇよ」
「では頼む、とりあえず今日はこれで終わりだ。明日また来てくれ、その時に依頼内容と報酬の話をさせてくれ」
話が終わり冒険者ギルドから帰った、その時に冒険者が『アイツ等ギルマスと話してたな』『アイツ等があの二人を・・・』などという話が聞こえたが放置することにした。
国王に登録したことを伝えて部屋でそのまま休んでゆっくりと眠気に引き込まれるように俺達は体を休ませて明日に備えた。