【四章】第1話:推奨レベルは単なる「飾り」です
「銀河戦隊」へと生まれ変わった主人公たち。
その圧倒的な力を試すべく、俺たちが向かったのは、かつて全滅の憂き目に遭った因縁の地だった。
「さて、ゼノン。パーティーの魔改造も終わったことだし、さっそく実戦テストといくか。ちなみにデッキ構成としてはこうなった」
俺はコンソールを操作し、現在のデッキレシピを空中に展開した。
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【変更前】
・物理:5枚
・魔法:5枚
・召喚:3枚
・防御:2枚
・回復:2枚
・特殊:2枚
【変更後】
・物理:10枚
・召喚:6枚
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『……マスター。魔法も防御も回復も全部かなぐり捨てて、物理と召喚だけ!? これ、いくらなんでも極端すぎるというか、ただのゴリ押しデッキになってませんか!?』
ゼノンのホログラムが、極端すぎる構成を見て不安そうに明滅する。
「ははは、ゼノン、それは違うぞ。よく見てみろ、この召喚カードには回復・防御・特殊効果をすべて織り込み済みだ」
俺は「銀河戦隊」となった召喚獣たちのカードを指差した。
「知ってのとおり、レッド、ブルー、イエロー達には、場に出すだけで常時回復やダメージカット、防御プラスのパッシブが仕込まれている。さらに、物理武器には大量のデバフを仕込んである」
『あっ……なるほど!』
「つまり、『勇者』の絶対防御と召喚獣のシナジーにより、受けるダメージを最小限に抑え込みながら、デバフを乗せた物理攻撃でチクチクと削り切るスタイルだな。魔法を完全に捨てた分、魔力を物理ステータスに振り直せているし、これで戦い方は劇的に変わるはずだ」
『リソースの再分配による最適化……! 単なる脳筋ではなく、鉄壁の布陣で敵を詰ませる、エンジニアらしい緻密なコントロールデッキですね!』
俺は納得したゼノンを横目にニヤリと笑い、クエストボードを開いた。
選んだのは、かつて俺たちが挑み、そして為す術もなく全滅させられた因縁の場所だ。
【クエスト:魔王城への進軍】
・推奨レベル:25
・現在パーティーレベル:10
『マスター、改めて見てもレベル差が15もありますが……今のこの「要塞デッキ」なら、いける気がしてきました!』
「テストとしては最高だな。行くぞ!」
俺は迷わず出撃ボタンを叩いた。
* * *
戦場は、魔王城の入り口に広がる荒野。
押し寄せる魔王軍の軍勢を前に、俺たちのパーティー――銀河戦士へとトランスフォームした三人組が立っていた。
「さあ、見せてもらおうか。お前たちの新しい力を」
先陣を切ったのは、猛禽類のバイザーを被った『勇者』だ。
魔王軍の先鋒が放った、かつてなら一撃で瀕死になるはずの重い一撃。
しかし――。
『……ノーダメージ!? マスター! 召喚獣たちの防御支援パッシブが重なって、ダメージが完全に「0」に固定されています!』
システムの計算式が完全に瓦解している。
鉄壁の盾を突破できない敵に対し、銀河戦士となった『魔法使い』と『ヒロイン』が放つ物理攻撃には、移動低下や毒、能力低下といった嫌らしいデバフがこれでもかと乗っていた。
敵は動くことも、守ることもできず、ただ一方的に削られていく。
『すごいです……! 推奨レベル25の精鋭たちが、何もできずに溶けていきます……! まさに「詰み」の状態ですね!』
「推奨レベルなんて、俺たちの前じゃ単なる飾りに過ぎないな」
そのまま無傷で魔王城を攻略した俺は、すぐさま次のクエストを選択した。
【クエスト:奈落の底の死闘】
・推奨レベル:50
飛び級などという言葉では生ぬるい、エンドコンテンツ一歩手前への挑戦。
しかし、銀河のパッシブスキルをマージした「要塞」の前には、あらゆる敵の攻撃は無意味だった。
『マ、マスター……。計算機が完全にバグってます。このゲームの「推奨レベル」という概念が、完全に仕事してません……!』
「ハハッ、これで俺たちの論理構築が正しかったことが証明されたな」
システムが悲鳴を上げているのを感じながら、俺たちは次なる戦場を探してクエストボードをスクロールし続けるのだった。
「回復も防御も、召喚獣に丸投げ《アウトソーシング》して自動化すればいい」
これぞエンジニア流のデッキ構築!
次回、この異常な攻略速度を検知した運営AIが、慌てて「地獄」を用意してきます。
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