7話 助太刀
6話の続きです。
(終わった…)
そう思い、目をつぶって衝撃と死を覚悟する。が、その瞬間は来なかった。恐る恐る目を開けてみると、半球状の透明な膜が私たちを取り囲むように張られていた。沢山の羽がその外側に散らばっている。
「間に合った……」
柔らかいつぶやくような声が後ろから聞こえて来た。振り向くと白髪赤目の小柄な少年が手を前に突き出して立っている。私の仲間で極度の引きこもり、ユイだ。依頼を共に受けることもなかなか無く、ずっと家で何かの研究をしている。
「ありがと、助かった」
「みんな……大丈夫?」
「うん、マークが怪我をしてるけどグンマが治療してるからもうすぐ治るはず」
礼を言うが、敵が消えたわけでは無い。相変わらず状況は悪いままだ。遅れて襲ってきた恐怖で震える足をなんとか立たせ、詠唱をしようとする。が、上手く言葉を紡げない。リオンの方が安定して攻撃準備ができるから少し羨ましい。若干の震えはあっても、新しく薬品を作り始めている。すっとユイが私たちの前に移動し、手で何かの印を結んだ。
「ちょっと待ってて……」
世界の狭間より生まれし隙間
空を分かちその内を描け
ユイが詠唱を始める。得意の結界術の詠唱だ。結界の内部の存在に自由なルールを強制する結界魔法だと前に話していた。
見上げるとカラスが次の羽を飛ばそうと構えている。ユイは結界の中におらず、しかもカラスはユイの方を睨んでいる。間違いなく狙われているだろう。
「ユイ! 上!!」
慌てて叫ぶが、ユイは詠唱を止めない。カラスからすぐに羽が打ち出され、ユイに向かって飛んでいく。詠唱は間に合わない。走っても間に合う距離じゃない。刹那、世界がゆっくりに見えた。
キンッ!!
刹那、金属音と共に羽が全て弾き飛ばされた。ひらりひらりと羽が落ちてくる。ユイの前に、1m程の細身の人型の金属質なナニカが、拳を振りきった姿で浮いている。左右対称かつ無機質で、鎧のような見た目だ。
その身は有 その身は無
禊を受けその髄を顕せ
《双縛結界 附帯不動》
ユイの詠唱が終わると同時に、一瞬視界が暗転し、酔ったような感覚に襲われる。だがすぐに何事も無かったかのように視界は戻り、酔ったような感覚も跡形もなく消え去る。あたりを見回すと私たち5人をまとめて取り囲むように、半球の形にどこから現れたのか、鎖が巻きついている。
一瞬の停止の後、カラスが再び羽を打ち出した。が、即座にそれらは鎖で囲まれた中に入るとすぐさまその場で停止する。
「附帯不動……魔力少ないと…動けない……」
附帯不動、ユイオリジナルの結界魔法。結界内部では魔力量の多さによって動きが制限され、羽にこめられた程度の魔力量では一切の行動が不可能となる。カラスの攻撃はこれで完封だ。諦めたようで上空を旋回し始めた。
「烏はとりあえず無力化できたかな……それよりユイ、それ何?」
リオンがユイの目の前に浮いているナニカを指差し、聞く。
「ゴーレム……ボクの……」
「どこにいたの?いきなり現れたように見えたけど」
「…最初から……持ってた……」
そういえばユイは魔道具の研究もしていた。その中で手に入れたのだろう。作ったのか見つけたのかは知らないが。
そんなことを考えながら気を入れ直す。亀がまだ残っているからだ。
「グンマ、マークの様子は!?」
「あとちょっと!!」
グンマに尋ねる。その返事を聞いたリオンが手早く指示を出す。
「テレス、最大火力出せる?」
「時間はかかるけど、出せるよ」
「じゃあ頼んだ。ユイ、それまで時間稼ぎ行くよ。あと今作ってる薬品なんだけど……」
リオンの軽い説明を聞く。そしてユイに確認する。
「ユイ、そのゴーレムってさ…」
「…それなら…大丈夫…」
それを聞いてリオンが指示を出す。作戦開始だ。
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