19話 炎狼
その夜。生き残った人がいないかの確認を済ませた私たちはまた野宿をしていた。軽く火で炙った肉にパンという定番の食事をとりながらリオンに聞く。
「あの…さ…」
「ん、どうしたの?」
平然とリオンが聞き返す。
「その…お姉ちゃんのことは…もう大丈夫なの?」
言葉を選びながら尋ねる。
「…正直あんまり大丈夫じゃない…」
「…」
返答に詰まる。
「でも…そんなことを言ってる場合じゃないのは分かる」
「…どういうこと?」
予期せぬ答えに困惑して聞き返す。
「テレスはこれからラグライズ以外の街が襲われることは無いと思ってるの?」
「…!」
言われてみればそのとおりだ。ラグライズから最も近くにあるのは私たちの村、オリスタだ。もし魔物が侵攻を始めているのであれば…
「まぁ大丈夫っしょ」
いつも通り根拠のない自信を持っているのはグンマだ。
「あのねぇ…なんで大丈夫なんて言い切れるのよ」
「ま、まぁでも今話しても仕方ないでしょ」
諌めようとする私をマークがたしなめる。
「さ、明日もあるんだし今日はもう寝ようか」
「…それもそうね」
テントに入って眠ろうとする。
その時リオンがなにか考え込んでいることには誰も気が付かなかった…
「結局その子どうするの?」
懐いたのか、ずっとついてきてしまった炎の狼を指さしてリオンが聞く。六腕の魔物との戦闘の翌日、私たちが村に戻ったのは昼過ぎのことだった。今はマークがラグライズについての報告をしているところだ。
「うーん…だいぶ懐いちゃってるんだよねぇ…」
もういっそ飼おうかな…かわいいし。そんなことを考えているとマークが帰ってきた。
「報告済ませてきたよ」
「ん、おつかれ」
私はこういう連絡や報告が苦手なのでやってくれるのは本当にありがたい。
「あのさ」
マークが口を開く。
「ん?どうしたの?」
「ちょっと考えたことがあって…今日の午後は自由行動にしない?」
珍しい。マークは他の人に合わせることが多いのに。
「まぁじゃあそれでいいんじゃない?今から依頼受けるにはちょっと疲れてるし」
「というわけで今日は解散!」
3人がいなくなり、炎の狼を見つめる。そんなに大きくないところを見るとまだ子供なのだろう。橙と白が入り混じっている毛並みはとてもきれいでやっぱりかわいい。
「…うん、やっぱり飼おう」
そう決めて炎の狼を抱き上げる。意外とずっしり重く、すぐにおろして一緒に宿に歩く。
「そうすると名前つけてあげなきゃなぁ…」
なんてことを考えながら宿のベッドで炎の狼と一緒にくつろいでいると、気がついたら外は真っ暗になっていた。
「えっもう夜!?」
驚いているとなんだか騒がしくなってきた。
「ただいまー」
3人が帰ってきた。ユイは村外れの工房で寝泊まりしているから宿には泊まらない。
「あ、テレス。もう帰ってきてたんだ」
「う…うん…」
流石に「この子とくつろいでたら夜になってました」なんて言えずごまかす。
「もう夕食できてるっぽかったから行こうか」
そう言われて炎の狼と一緒に食堂に向かった。
「その子の名前?」
「うん…どうしようかなって」
晩ごはんを食べながら3人に相談してみた。
「そうだなぁ…」
「それならさ」
リオンが口を開いた。
「ブレイズとウルフで、ブルフとかどう?」
「うーん、ちょっと違うかなぁ…」
ブルフ…ブルフ…うん、やっぱり変な感じがする。
「無限の炎とかいいんじゃね?」
「却下。論外」
グンマはもとよりあてにしていない。
「フェストとかどうかな?」
「うーん、なんか違うんだよね…」
なんかもっとこう…いい感じの名前がいいんだけどな…
「漆黒の炎!」
「お前は黙ってろ」
グンマが何か喚いているが無視だ。
「マーク、なんか思いつかない?」
「うーん…そうだなぁ…」
そういってマークは少し考え込んで口を開いた。
「…フェルノとかどう?」
フェルノ…フェルノ…うん、悪くない。
「じゃあフェルノにしよう!」
そういうと炎の狼…もといフェルノが喜んだように見えた。
「じゃあご飯も食べ終わったし、先に部屋に戻っとくね」
「はーい」
「…大丈夫?あいつ親バカに全速力で突っ走ってってるけど」
「それは俺も思った」
「さっき喜んでる!的なこと言ってたけど、表情全く変わってなかったよな?」
「やっぱそうだよね!?」
「「「あいつ…大丈夫かな…」」」
こうして夜は更けていった。
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