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別離の邂逅

「――なあ、おっちゃん。本当に付いて行っていいのか?」


 子供。まだ義務教育をも終えていないような年齢の少年が問いかける。


「――だからいいって言ってるじゃんか。上の命令には逆らえないのが軍人だってさっきから言ってるだろって」


 そんなのきいてないしーと口を尖らせながらつぶやく。


 そんな少年、コンラート・ベルは目の前に広がる巨大なビルを眺め、面倒ごとに巻き込まれたな、と思案した。

 よくある転生モノの「~を説明するには3日前まで巻き戻す必要がある」みたいなここまでの経緯を存分に説明したいのだが、今は割愛する。


 簡単に言えば、死んだ。

 もうちょっと修飾すれば転生した。


 たぶん今の説明はこれで完結できるだろう。


「まったく、爆発事故に巻き込まれるなんて世も末ぞ」


 10割自分が悪いのだが、なんとなく社会のせいにしてみる。


「何か言った?」

「いいや? 空耳じゃない?おっさん」

「おっさんいうな」


 軽く冗談を交えれば返してくれる。

 素晴らしい人である。


「まあ、こんな未成年に”アレ”の研究を託すとか。確かに世も末だ」

「聞こえてたのかよ」

「この(アウト)にいるのは二人だけなんだから、否が応でも聞こえるだろ」


 ちょっとだけ、羞恥心を感じながらその逃げ先として手元の資料に目を通す。

 『量産機試作実験計画』と題された紙束はご丁寧に簡単な単語で説明されている。


「もうちょっと言葉遣い選んでもらえないかな、遠回しすぎて逆に分かりにくい」

「それは実験監督官に言ってくれ。僕は渡すようにって言われただけなんだから」


 ドッキングエレベーターに素早く接続しながら軽口をたたく。


 パラパラめくりながら事前に聞いていた情報と合致させて脳内イメージを何となく作る。

 未知の……次世代用……多用途機。

 どうせそんな感じの人型決戦兵器を作れって言われるんだろう

 

 なんで人型なんだって?

 それは後で監督官に聞いてみよう。

 機密指定の案件が人型ってことをバラしたとこで、車は宇宙庭園の駐車場に入った。


「おい坊主。着いたぞ、はやくトランクおろすの手伝えよ」

「うーい」


 重力発生装置のおかげで月面でも楽に移動ができる。

 なんでさっきまで宇宙にいたくせに月面にいるんだって?

 答えは簡単、今年が3024年だからだよ。


「これ、もっとけ」


 投げられたのはちっちゃい小箱だった。


「なにこれ」


 べリ、とふたを開けてみると中には8個ほどの個包装の物体が入っていた。

 その一個を取り出してみる。

 形は……円形、ピザのように耳周りが太っている。

 引っ張ってみると思ったより伸縮性がある。


「お前さんなら使う時は大量にあるだろ。5年もここに努めるんじゃ」


 2秒くらい考えて、正体に気付く。


「おいこれって、ゴm……っ!」

「言うな言うな。聞かれたらどうするんだよ、降格処分待ったなしだろ」


 周囲に誰もいないことを確認して勝手にバッグの中にしまい込みやがった。


「じゃあな、一旦お前さんとはここでお別れだ。また5年後、戦場で会おう」

「おう、死ぬなよ司令官」

「冗談言ってくれるぜ、これでも海王星決戦で勝った偉人だぞ?」


 「ガキに言われるんじゃ面目ないけどな」と聞こえない風で呟いた。


「まあたしかにこれで死んだらいい面できねえよな」

「こいつ……! 言ってくれるじゃねえか」


 目の前の180センチはありそうな片脚の無い巨人が敬礼した。

 俺も礼儀に則って左手で敬礼する。


「それでは、小官、コンラート少尉はジャンヌ大将の令を以て邦立科学センターに出向致します」

「貴官の新たな科学的発見を期待して出向を許可する。存分に働いてきなさい」


 旧友は、まるで赤子を触るように優しく握手した。

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