家を買おう
改稿済みです。
俺は今不動産屋の前にいる。
なぜかって?
それは遡ること数十分前…。
「すみませーん、グレイ郵便の者です。冒険者ギルドから現金の配達でーす。」
「誰宛ですか?」
門番が問う。
「えーっ…カイン様ですね。」
「カイン…カイン…あぁ!新入りの子供か。サインでいいですか?」
「もちろんです。ここにお願いします。」
「サインありがとうございます。こちらお届け物です。重いので気をつけてください!」
「うおっ!?本当に重いな。」
「では自分はこれで。」
「あ、はい。ご苦労様です。」
門番は荷物を中に運び入れる。
「誰か手の空いてるやつはこれをカインの部屋に運んどいてくれ!」
「あいよー。」
と、いうことがあった。
つまりドラゴンの討伐金が入ってきた。
懸賞金や依頼はなかったものの素材の価格がバカ高く売れたらしく、1000万ビーケほど入ってきた。
中にメモも入れられており・A+魔石…50万・爪…総額10万などと書かれていた。
王を倒したとはいえ一体で1000万はおかしいと思う。
体格も大きかったし、ドラゴンの素材価値はもとから高いのでそのせいで金額が跳ね上がったのだと思う。
まぁその1/8は領主に奪われたけど。
そもそも1/8って適正なのかな?
俺は詳しくないし、今更気にしても仕方ない。
以前、契約書にサインしてしまったし。
ーカランカランカランー
「いらっしゃいませー。」
中は受付が二つあり片方ではすでに客がいる。
「こちらにどうぞ。」
俺は言われた方に行き、椅子に腰掛ける。
「えーっと、お母さんとかお父さんはどこにいるのかな?」
「僕一人です。」
「ごめんね、遊びじゃないんだ。お姉さんたちも商売してるから遊んであげられないの。」
「家を買いに来ました。」
「あのね、遊びじゃないの。だから帰って…「これで。」
俺は大金貨80枚の入った袋をインベントリから取り出し、机の上に置いた。
「かしこまりました!失礼します…【鑑定】……800万ビーケですね。あ、身分証はお持ちでしょうか?」
「これで平気ですか?」
俺は領主にあらかじめ書いておいてもらった身分証を取り出す。
「りょ、領主様のご友人でいらしたのですね。申し訳ありませんでした!!」
友人って…あの領主何を書いたんだ?
以前、執事に俺を子供のように思ってると教えてもらったので領主にはこう言った。
「カルム様、カルム様もご存知の通り魔物の討伐で大金を得ました。ですので家を買いたいと思っております。もしよろしければ身分証となるものを書いていただきたく…。」
「何!?カインよ、もう出ていくのか?まだここに来て数日しか経ってないぞ?」
「そ、それはその通りなのですがわたくしめも早く自立したいと申しますか…一人暮らししたいと申しますか…。」
「仕方あるまい。もともとこの屋敷に住むのは強制ではないからな。身分証だったか?書いてやろう。」
「本当ですか!?ありがとうございます!」
俺はあの時、子供のように扱ってくれるって言ってたけど本当に身分証を書いてもらえるとは。
これからも何かとお世話になろう。
そんな甘いことを考えていた。
「もちろん一人暮らししてからも契約は続くから素材は納めてもらうぞ?それと部屋の掃除にも金がかかるからその分のお金は払ってもらう。」
「……。」
「そうそう、以前私執事のルイが私がお前を子供のように思ってると言ったそうだな?」
「え、あ、はい。」
「確かにその通りだ。私の妻と子供は事故で亡くなっている。だが、何もかも無償でするわけではないぞ?世の中はそんなに甘くない。」
「は、はぁ。」
「確かに少し甘やかしてはいる。これからもある程度のことなら協力しよう。だが、それはお前も私に仕えている間だ。その関係が切れたら赤の他人でしかない。…別にお前を叱ろうとしてるわけじゃない。ただ本音で話そうと思ってな。」
「つまり、カルム様は僕のことを優しく扱いはするがその報酬に誠心誠意働いてもらうということですか?」
「そうだ。ほれ、身分証だ。それと、お前は賢いしいずれは学園に通うだろう?その時も私に仕えていたなら身分証くらい書いてやる。いつでも言ってくれ。」
「ありがとうございます。」
この人もなかなか策士…なのか?
とにかく一筋縄ではいかない人物だと思った。
で、時は戻り今現在。
多分、自分が手厚くしてる人物だから不敬を働くなとでも書いたんだろう。
「いえいえ気にしないでください。それで、物件の要望ですがバハムス学園に近いところがいいです。大きさや値段は問いません。」
バハムス学園とは、ザーベスト王国一の学園だ。
あ、ザーベスト王国はここカルムの治めるガース子爵領のある国だ。
無論、俺もザーベスト王国民だ。
で、バハムス学園はこの領内にあるらしい。
王都ではなくこんな一つの子爵の街にそんな学園があるとはカルムは善政を敷いているのだろう。
「なるほど…カイン様は賢明でいらっしゃるのですね。合格、心から願っています。で、物件ですが当てはまるのはこの三つですね。」
「一つ目はバハムス学園から、少し距離があるけど手頃な大きさで高すぎず安すぎずの値段です。」
「ふむふむ。」
「二つ目はとにかくお高いです。1200万です。」
「却下で。」
この世界では土地に値段がない。
我が国では領主が国から与えられて管理している。
あとは領主の自由で、うちのところではカルムがいくつかは民営の不動産屋などに譲り渡し残りは自らが管理している。
管理者のいなくなった土地はカルム家が管理している。
そのため、土地の料金がない分家の値段がそこまで高くならない。
「三つ目が一番の優良物件です。バハムス学園から徒歩15分、大きさは屋敷と呼べるか呼べないか程、それでいて中古物件のため少しお安くなり予算額ちょいオーバーの820万となります。」
「一度見てきてもいいですか?」
「かしこまりました。地図を用意しますね。」
「いえ、大丈夫です。〈転移〉。」
写真?絵?か分からないが、物件のイラストを見てるのでそれとこの場所を繋いで俺が向こう側に行くのをイメージする。
すると、俺の体が白の魔法陣に包み込まれると同時に視界が移り変わった。
よし、〈空間魔法〉成功!
そして、視界を上に上げると立派な屋敷が見えた。
すげー。
中も見てみるか。
ドアまで歩いて行きドアノブに手をかける。
土地代なしで820万か。
ーガチャー
820万では安すぎるくらいのいい物件だ…な……。
中は外観とは違い、蜘蛛の巣や埃まみれで板も軋んでいた。
「【転移】。」
帰りは魔力削減でマップの転移機能を使う。
「あの、不動産屋さん、物件見てきたんですけど写真と違いすぎませんか?詐欺ですよね?」
「あれ!?消えたと思ったら急に……。失礼、取り乱しました。写真…あぁ!魔導写真のことですよね!」
魔導写真って言うんだ。
なんでも魔導つければいいわけじゃないぞ。
「はい、そうです。」
「すみません、劣化がすすみあの様に…ですので820万とお安くなっております。本来なら1000万並みの物件ですのでお得ですよ?」
だから1000万のやつと写真で見る限り大きさは変わらないのに安かったのか。
『ヘルプ、物を直したり綺麗にする魔法はある?』
『あります。マスターに魔法を教えることも可能です。』
よし!
これで汚い問題は解決、この物件で問題なし。
他の人は一から掃除をしなきゃいけなくて大変だから売れ残ってたんだな。
「この物件を買います。」
「…もう一度おっしゃってもらえませんか?」
「この物件を買います。」
「しょ、正気ですか!?こんなオンボロを!?」
「はい。魔法が使えるのであんまり問題じゃないです。」
「確かに先ほども転移魔法を使っていましたが…。返品不可能ですよ?」
「平気です。領主様に訴えもしません。」
「わかりました。そこまで言うならお売りします。では、契約に移らせてもらいます。」
「あ、少し安くなったりします?」
「……810万はいかがでしょう。」
「俺がこの物件を手放した場合、もう買い手はつかないかもしれませんよ?それに、俺がこのあと掃除する予定もあります。綺麗になったあとのあの屋敷を欲しい人は山程いるんじゃないですか?」
「800…いえ、780万でどうでしょうか。」
「契約成立ですね。」
そうして俺は屋敷を購入した。




