俺が知ってるのと違った
次の日、俺は約束通りギルドに来ている。
昨日はあの後、下で大騒ぎになってしまったので、急いでその場を離れて、街の人気のないところから普通に戻った。
その後、ルナと一緒に静かな所で自腹で食事をしてよさげな宿に泊まった。
あれだ、昨夜はお楽しみでしたってやつである。
「あのさ、何?君たち付き合い始めたの?イライラするから人の部屋でイチャイチャしないでくれよ」
「うるさい、邪魔をするな」
「なんでさ!!……いや、ここ私の部屋なんだけど!!」
うるさいギルドマスターだ。
「それで?俺たちがやるべき仕事はもう決まってるのか?」
「……うん、決まってるよ。これがその依頼書だ」
俺はギルドマスターに二枚の依頼書を渡される。
「二つ?これを全部クリアしたらどうなるんだ?」
「二人のランクが上がる」
「これだけで?」
「最初は上がりやすいんだよ」
「ふ~ん」
それぞれ、討伐依頼、採取依頼となっている。
「君たちのランクはFだろう?FからEにあがる条件は討伐、採取、街の人のお手伝いっていう条件があるんだよ。逆に言えばこれだけだ」
「へぇ~」
俺たちの場合、既に街の人のお手伝いはクリアしていたからこの二つって事か。
「討伐の方は大丈夫だと思うけど、採取の方がちょっと心配かな?まぁいい経験になると思うよ」
「わかった。この二つの依頼をクリアすればいいんだな?」
「うん、それじゃあよろしくね」
俺たちはギルドマスターの部屋を出た。
そのまま勝手にギルド内を歩いて、いつもの受付に向かう。
「よう受付さん。この依頼を頼むよ」
「おはようございます。ソル様、ルナ様。ギルドマスターからの依頼ですね」
そう言って受付さんは俺から依頼書を受け取ってよくわからない手続きをしている。
「はい、これで手続きは完了しました。この二つの依頼には達成期限などはございません。あまり焦らずに、どうかお気をつけて」
「ありがとう、行ってくるよ」
俺たちはギルドを出る……前に。
「ルナ、食事でもしていこうか。昨日はあまり食べられなかっただろう?」
「そ、そうですね……美味しかったですが、量は……」
まぁいい場所なだけあって料理もうまかったが高かったからな……
宿代を考えて食事をしてしまったから、ルナがお腹いっぱいになる量を食べさせてやることは出来なかったのだ。
もう手持ちが底をつきそうだ。
銀貨が数枚しか残っていない……金貨40枚が……
「ま、ここでならいくらでも食べていいからな」
「そういえばここでは無料なんでしたっけ」
「あぁ、それじゃあ行こうか」
「はい!ご主人様!」
ご主人様呼びは、これからも変わらなそうだ。
ちなみに、ルナに着けていた氷の首輪はすでに取ってある。
もう必要ないからな。
そんなものが無くても、お互いの居場所は分かるからな。
俺たちは適当な席に座る。
「すみませーん!注文おねがいしまーす!」
「はーい!」
俺がそういうと、カウンターの奥から女の人が出てくる。
一応言っておくと、依頼の受付のカウンターとは別のカウンターである。
依頼を受ける場所とは反対側にある。
「この朝のおすすめセットを下さい」
「かしこまりましたー!そちらのおねえさんは?」
「この目メニューに書いてあるもの全部下さい」
「……へ?」
「全部下さい」
「驚くのも無理はないが、うちの連れは嘘でも何でもなく食べられるよ。一気に持ってこなくていいから、出来た者から順番に持ってきてくれ」
「か、かしこまりました!」
女の人は急いで裏に戻っていった。
その後、ルナはとんでもないスピードで出されたメニューを食べつくし、いつの間にか野次馬が集まるほどの騒ぎになってしまった。
ルナはちゃんと食べきった。
約束通り、料金はただでした。
食事を終えた俺たちは、街を出て近くの森に向かっている。
「えっと、先に討伐依頼の方からやってしまおうか。採取にどれくらい時間がかかるか分からないし」
「そうですね。討伐対象は……ゴブリン、ですか」
「緑色のちっちゃい奴?」
「そうです。どうやらこの近くにいるようですね。右耳をはぎ取ってくればいいそうですよ」
「そうか……」
「?ご主人様、あまり元気がありませんね。どうかしましたか?」
むしろ元気になれっていう方が無理である。
「俺さ、ゴブリンと戦った事あるんだよ」
「そうなんですか?まぁ確かに比較的おおい種の魔物ではありますが……」
「メチャメチャ強かったんだ……」
「え?」
そう、この世界のゴブリンは決してザコなどではないのだ。
俺からすれば、どうしてゴブリン討伐の依頼がFランクの依頼扱いなのか謎である。
初めて出会ったのは……あの何か月もさまよった森の中である。
あの時のゴブリンとの戦いは、この世界で初めて死を覚悟したほどの死闘だった。
攻撃が一切当たらないし、異常に連帯がうまいしで、かなりの長期戦になった思い出がある。
「あの戦いは酷かった……」
「あの、ご主人様?それはあの森だけだと思いますよ?」
「……そうなのか?」
「はい。あの森って、生息している魔物が異常に強いんですよ。それはゴブリンも例外ではありません。特に、あの森のゴブリンは、その異常に強い森の魔物たちの中でも最上位に君臨するほどの力を持っています。私たちドラゴンでさえ、あの森にいるゴブリンとは戦いを避けるほどなのです」
「……そうなの?」
「そうです。あの森に居るゴブリン以外は、まさにザコですよ。連帯もたいしてとれていませんし、そもそも実力が無いに等しいです。このあたりに居るゴブリンとあの森のゴブリンは別物と考えていいと思いますよ」
「……そうなのか」
あの森のゴブリンが特別なのか……でも……
やっぱり怖い。
あの戦いを嫌でも思い出してしまう。
「……まぁ、やるしかないか」
「頑張りましょう!ご主人様!」
森に入って、しばらく歩くと、思ったよりも直ぐにゴブリンと遭遇した。
「……思ってたより小さい。しかも……なんか迫力不足というか、威圧感がないというか……」
あんなに怯えていたのが馬鹿みたいに思えてくるほどだ。
「えいッ」
俺は氷を飛ばす。
ゴブリンは串刺しになった。
まず、一体絶命。
仲間のゴブリンたちが一斉に襲い掛かってきた。
とてつもなく遅い。
俺は氷の槍を飛ばしてすべてのゴブリンを串刺しにした。
「……弱い」
「私の言った通りだったでしょう?」
「あぁ……やっぱりあの森のゴブリンが特別なんだな」
ゴブリンはゴブリンでも、いろいろいるんだなぁ……
「右耳右耳……数は五個以上だったけか」
五匹のゴブリンが居たので、これで一つ達成である。
「もう仕事の半分おわったな……じゃあ次に行こうか」
「はい!次は……薬草の採取10束と書いてあります。これは楽勝ですね!私は薬草を匂いでかぎ分けることが出来るので!」
「へぇ、そりゃあ頼もしいな。ちなみに、薬草ってどんな特徴があるんだ?」
「根元が真っ白な葉っぱです。よく似たもので、若干黄色がかっているものがありますが、それは毒草です。あと、根元が真っ白でも、薬草よりも葉っぱが長いものがありますが、これは何の効力もない雑草です。これを見て薬草か判断するのはちょっと難しいので、慣れるしかないと思います」
「そうなのか……色と大きさね」
色の方は何とかなりそうだが、葉っぱの大きさが難しそうだ。
……そうだ!
「とりあえず薬草を探すか」
「はい!薬草は基本的に植物のある場所ならどこでも生えているので、この森にも探せばあると思います。頑張りましょう!!」
俺たちは薬草探しを開始した。




