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どうしてこうなった。

 ……どうしよう。

 どうすればいい?


 「いっぱいありすぎだろ!?品ぞろえ豊富かよ!?お客様のご希望に必ずお答えしますってか!?いい店だなおい!!」

 「ありがとうございます」


 俺は今宝石を使った装飾品を専門的に取り扱った店に来ている。

 貴重品を取り扱っているだけあって、入り口から警備が尋常じゃなかった。

 お金をちゃんと持っているかまで確認させられた。


 更に言うと、この店は一人に対して担当の店員が一人着くようになっているらしく、店に入ったとたんに店員が物凄いスピードで近づいてきて、「ご来店ありがとうございます。お客様の担当をさせていただくマリアナと申します。何かご希望はございますでしょうか?」とか言ってきたのだ。

 なんだこの店?

 この世界の宝石店は全部こうなのか?


 ちなみに、俺は黄色かもしくは金色っぽい色の宝石を見せてほしいって言ったら、その色の装飾品の元に案内された。

 しかし予想外だった……まさか俺が言った装飾品だけでも三百品以上あるとは思わなかった……。

 どおりで店がデカい訳だ……これ盗みに入られたらとんでもない損害になりそうだな。

 ま、俺には関係ない事ではあるが。


 ドゴォォォオン!!!!!!


 「キャッ!!」

 「おっと……大丈夫ですか?」


 いきなり店内に爆音が鳴り、隣にいた店員がよろめいたので支える。


 「あ、ありがとうございます」

 「それはいいんだが……今のは入り口からか?……」


 俺が今いる場所は入り口からかなり離れた場所に居るため、状況を確認することが出来ない。


 「あんたはここに居てくれ。ちょっと見てくる」

 「わ、私も行きます!この店を束ねる者としての責任がありますから」

 「……あんた店長だったのか」

 「正確には、宝石類を専門に扱う『マリアナ商会』の商会長です」

 「マジかよ……」


 俺の担当になってくれた人は組織のトップだった。


 「でも、それじゃあアンタは守られるべきなんじゃないのか?」

 「フフッ、甘く見られては困ります。私は一代でマリアナ商会を大商会と言われるほどに成長させたのです。自分の商品を守るために、戦いの術は持っています」

 「ほぉ……えっ?すごくね?」


 たった一代でここまで店を大きくするとかとんでもねぇな。

 もしかして結構有名な商会だったのか?

 店が大きいからここでいいかって理由で入っただけだったんだけど。


 「まぁいいや。俺にはアンタのやり方に口出しする権利なんてないからな。アンタのやりたいようにやればいいんじゃないか?」

 「フフッ、そうさせて貰います」


 俺たちは姿勢を低くしながら店の入り口の方まで移動する。


 「おら急げお前ら!!あんまり長くは持たねぇぞ!!」

 「わぁってら!!こっちは商品を詰める!そっちは警備員を無力化しやがれ!!」

 「それくらい余裕だ!!」


 五人程の男たちがごちゃごちゃ騒いでいる。

 入り口の警備員は……


 「やられてるな入り口の二人……生きている確率は低そうだ」

 「……もとBランクの冒険者だったのですが、残念です」

 「随分手練れを雇ってたんだな。となるとあの強盗共はそれ以上か」

 「そのようです」


 全く、どうしてこんなことになったのか。

 俺はプレゼントを買いに来ただけなのに……


 「あの武器について何か知ってるか?俺は見たことが無いんだが」

 「独特な形ですね……すみません。残念ながら聞いたこともないです」

 「謝らなくていいよ。俺も知らないし……使っているところを見れたら良かったんだが」


 つまり対策は不可能……と。

 一見、剣の様な見た目をしているが、持ちての部分と刃の部分の間にリボルバーの様な物が付いている。

 と言っても、中に何かを入れるのではなく、筒のようなものが束になって付いている感じだが。


 「ま、難しい事を考えなくても俺一人で制圧出来そうだ。アンタはどうする?」

 「過剰な自信は身を滅ぼしますよ?相手はBランクの冒険者二人を先ほどの短い時間で倒す実力者です」

 「自信じゃなくて確信さ。派手にやっていいんだったら、一瞬で終わらせよう。その代わり店が寒くなるがね。店を傷つけないでくれって言うのであれば、大人しめに終わらせよう」

 「……本当に出来るのですか?」

 「あぁ」


 店長……商会長は考える。


 「……分かりました。どのみち、あなたに頼るほか無さそうです。何故か外は謎の煙に包まれているので、騎士や衛兵に期待も出来ませんし」

 「いいね。この状況で何が最適なのかを理解している」

 「では……」


 商会長は目をつぶった後、何かを覚悟したような顔になる。


 「折角です。やるならカッコよくいきましょう」

 「?」


 一体何をする気だろう?

 何を考えているのか、店長はいきなり立ち上がり、店の真ん中に向かって走った。


 「は!?」


 驚愕のあまり一瞬固まるが、あの人を死なせる気もないので、こそこそと後ろの方に回る。

 一体何を考えているのか……


 「聞け!!罪人共!!私の名は『マリアナ・アゲット』!!このマリアナ商会の会長である!!」


 いきなり名乗りを上げだした。

 何やってんだあの人は……


 「私は強欲だ……私はどこまで進もうとも、満足することは無いだろう。どれだけの大金を得ようとも、どれだけ大きな店を持とうとも、どれだけ沢山の人の上に立とうとも……私は更に上を目指し、その歩みが、生涯止まることは無いだろう!!!……故に、貴様ら程度、私の障害にはなりえない!!いや違うッ!!!私は強欲だ!!だからこそ!!この出来事さえも糧として!!!更なる高みを目指すだろう!!!!我が軌跡を汚そうとする罪人共よ……貴様ら程度で、我が歩みが止まる事などないと知れッ!!!!」


 何か始まった。

 でも……


 「なぁにごちゃごちゃ言ってやがる!!!今更何が出来るってんだ!!!お前らッ!!やっちまえ!!!!」

 「「「「おうッ!!!」」」」


 一人の男が指示を出し、四人の男が商会長に突っ込んでくる。


 「私は逃げも隠れもしないぞ!!!最後に笑うのは、私と決まっているのだ!!!行け!我が守護者よ!!!お前の力を見せてやれッ!!!」


 こういうノリは、嫌いじゃないね。

 いや、むしろ大好きだ。


 「了解した(イエス)我が主(マイ・ロード)


 俺は全身に氷の甲冑を作り出し、威圧感全開で飛び上がり、商会長の前に着地する。

 手には氷で作ったグレートソードを持っている。

 ちなみに、氷は気泡を多く含んでいるので、外から見ると白く見えて、中の俺の姿は見えない。


 「なんか出てきたぞ!!!」

 「怯むな!!まずはこいつを片付ける!!」

 「こんな前進鎧だ!!機動力はない!!この人数差ならいける!!」

 「それはどうかな?」


 俺は既に強盗共の前に居る。

 俺は一気にグレートソードを横薙ぎにする。


 お?躱されちゃった。

 全員が瞬時に後ろに飛びのいた。


 「おい!!あの全身鎧野郎、異常に速いぞ!!!」


 当たり前だ。

 俺は氷を動かす能力でこの鎧を動かしているのだ。

 これが無かったら重くてまともに動くことも出来ない。

 まぁ動きにくいのは変わらないけど。

 商会長が我が守護者よ!!とか言ってたからこういうビジュアルの方がいいかなって思ってやったんだけど。


 「くらえ」


 俺は氷の剣を周囲の作り、それを高速で飛ばす。

 飛ばしているのはあまり大きくない剣だ。


 「こんな物ッ!!」


 かかった。


 「冷てぇ!?」


 よけずに剣ではじいた一人が、いきなり冷たくなった自分の武器を落とす。

 そして、その武器は床に落ちて粉々になった。


 「は!?」


 段々面倒くさくなってきたので、そろそろ終わらせよう。

 俺は店の床を凍らせる。

 もちろんすべてではない。

 敵がいる前方のみだ。


 「ぐおぁっ!?」

 「クッソ、滑るぞ!!」

 「ッ!立てねぇ!」


 偉そうにしていた後ろの方の男も立てなくなっている。


 「終わりだ」


 滑って倒れた奴らは、床に触れている場所から凍っていく。

 何か叫んでいるが、まぁ気にする必要はないだろう。


 全ての強盗が完全に凍ったのを確認してから鎧と凍った床を元に戻す。

 そこらへんで浮いている剣もちゃんと消した。


 「さて、店には傷一ついていない……どうだ?アンタのご希望に沿えたかな?」

 「……予想外です。あなたがこれほどの実力者だったとは……」

 「いったろ?俺一人で出来るってな」

 「そうですね……どうです?私の元に来ませんか?」

 「警備員としてか?悪いが、そこそこいい収入源を持っているんでね」

 「いえ、そうではなく。私の隣に立ちませんか?夫として」

 「夫ねぇ……夫!?」


 一体何がどうなった!?


 「いえ、ちゃんと理由はあるのですよ?先ほどあなたが答えてくれた時……私の今までの人生で、あの瞬間が一番輝いて感じたのです。……その時に思ったのです。この方がずっと傍にいてくれたらと……」

 「…………」

 「どうでしょうか?悪い話ではないと思います。今なら三食昼寝私付きですよ?私と結ばれれば、一生贅沢な暮らしが出来る財産も約束されますよ?」

 「……大変魅力的な提案だと思う。正直アンタは俺の好みだし、三食昼寝私付きという……主に私付きという言葉に非常に惹かれるが……断る」

 「……え?」

 「……さっきの、短い時間。正直に言って、アンタと居るのは楽しかった。これからをアンタと共にするのも、きっと楽しい物になるだろう」

 「だったら……」

 「でも……納得できないんだよ。その日にあったばかりの人が相手って言うのが」


 後、家族という存在に恐怖を感じるっていうのがあるが……というかこれが主な理由だが。


 「……すまないな」

 「……私の、あなたを思うこの気持ちは、決して一時の気の迷いなどではありません」


 商会長の目には涙が溜まっている。

 今にも零れ落ちそうなほどに……


 「私は……沢山の人に結婚を申し込まれました。でも、その全てを断ってきた。確かに、大きな利益になる話もありました。……でも、私は強欲です。……私は、結ばれる相手は自分が選んだ人じゃないといやなんです。…………お名前を、教えていただけますか?」


 そう言えば、自己紹介をしていなかった。

 この人は名前も知らない人に求婚したのか……なかなか豪快な人だ。


 「……ソルだ。冒険者をやっている」

 「……ありがとうございます。ソル様……私はあきらめません。必ず、あなたを手に入れてみせます」

 「そうか」

 「…………」


 商会長は、俺をまっすぐ見つめている。

 少しした後、目を閉じて涙を拭った。


 「……お礼を言っていませんでした。本日は、この商会を守っていただき、本当にありがとうございました。お礼と言っては何ですが、この店にある商品の一つを差し上げたいと思います」

 「え?……い、いいのか?」

 「はい!本当は、このような事をするつもりは無かったのですが……ソル様は特別です」

 「お、おう……じゃあ……」


 俺は一つのネックレスを手に取る。

 サイズはプリンセスタイプと呼ばれる大きさの物だ。

 ルナの目の色と同じ色の大き目の宝石が付いているので、さっき見つけたときから気になっていたのだ。


 「そちらでよろしいのですか?当店にはもっと高価な品もございますが」

 「露骨に貢ごうとしないでくれよ。そういうのは慣れてないんだ……これじゃないとダメなんだよ」

 「……かしこまりました。では、その商品はソル様に差し上げましょう」

 「……ありがとう」

 「お礼を言わなければならないのはこちらです。ソル様は命の恩人でありますから」


 俺は選んだネックレスを箱に入れてもらう。

 それを受け取って、俺は店の外に向かった。

 そこには沢山の衛兵が集まっており、ここの店員らしき人が衛兵の人と話していたりする。

 強盗は凍ったまま引きずられている。


 「ソル様」

 「なんだ?」


 後ろから声をかけられ、俺は振り向く。


 「ッ!?」


 振り向いたとたん、俺は首に手を回され……そのままキスをされた。口に。

 待って、メッチャ長い!!てか力つよ!?全然外れないよ!?


 辺りが静かに感じる……まるで時が止まったかのように……

 あっ、違う!!本当に静かになってるんだこれ!!メッチャ視線を感じるもん!!

 そうだよね!この人かなり有名らしいからね!そんな人がこんなわけわからん奴といきなり店の前でキスしたら注目されるよね!!


 「……ふぅ、ごちそうさまでした」


 何がごちそうさまなんだ。


 「一応、初めてだったりするんだが……」

 「それは奇遇ですね!!私も初めてのキスです!!」

 「随分情熱的な初めてでしたね……」

 「結婚します?」

 「もうやめて……」


 俺のライフはもうゼロよ……


 「それでは、またのご来店をお待ちしております。愛していますよ、未来の旦那様♪」

 「う、うわぁぁああああああ!!!!!!!」


 俺はその場から逃げ出した。

 だってマリアナさん……目が笑ってなかったもん……

 狙った獲物は逃がさないって顔してた……今まで感じたどの恐怖とも違う何かを感じた。

 でも……


 「……甘かったな」


 初めてのキスは、とても甘かったです。

なんだこれ……

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