第20話「俺の名前の口座」
一月七日、午後七時。
高橋家のリビングのテーブルに、三つのものが並んでいた。
一つ目。取引ノート。三冊。表紙には、全部「取引ノート 高橋蓮」。
二つ目。くまやの給与明細。七枚。店長の、意外ときれいな手書きの字。
三つ目。約束書。ルーズリーフ一枚。三回清書したやつ。
そして、その向こう側に、三人の人間が座っていた。
腕を組んだ母さん。
新聞を持っていない父さん。
なぜか、ポテトチップスの袋を持っている姉ちゃん。
「……姉ちゃん、それ、何」
「観覧用」
「観覧すんな」
「するでしょ。こんな面白いもの」
姉ちゃんは、袋をばりっと開けた。家族会議の空気が、少しだけゆるんだ。少しだけ。
俺は、テーブルの横に立って、深呼吸をした。
練習は、一週間した。おでこのたんこぶも、もう消えた。
「――お願いがあります」
◇ ◇ ◇
一回目の家族会議の時、俺は、一言もしゃべれなかった。
しゃべる資格がなかった。ろうそくの消えたケーキの前で、ただ、うつむいていることしかできなかった。
だから、今日は、全部しゃべると決めていた。
「俺は、春に、姉ちゃんの名前で、株をやりました。嘘をついて、印鑑を勝手に使って、全部なくしました」
母さんの肩が、ぴくっと動いた。
「でも、株を嫌いには、なれませんでした。嫌いになったのは、ずるをした自分のほうでした」
「…………」
「だから、今度は、ずるをしないでやりたいです。十八歳まで、待ちません。親の同意をもらって、自分の名前の口座で、ちゃんとやりたいです」
俺は、約束書を、両手で母さんの前に置いた。
「ルールは、これです」
母さんは、約束書を手に取った。眉間に、しわが一本。二本。三本。
一、使うお金は、自分のバイト代だけ。
二、毎月の結果(もうけも、損も)を、家族に見せる。
三、一つの会社に、全部のお金を入れない。
四、借金は、絶対にしない。
五、学校の成績を、落とさない。
母さんは、ゆっくり、全部読んだ。それから、約束書をテーブルに置いて、たった一言、言った。
「ダメ」
〇・五秒だった。
春の朝、「株はダメよ」と言った時と、まったく同じ速さだった。
◇ ◇ ◇
「お母さん、ちょっと」
姉ちゃんが、ポテトチップスを一枚くわえたまま、口をはさんだ。
「せめて、ノートくらい見てあげたら」
「見なくてもわかるわよ。こんなもの、書こうと思えば、いくらでも書けるんだから」
「三冊だよ?」
姉ちゃんは、取引ノートの一冊目を手に取って、ぱらぱらとめくった。
「ほら。七月から、一日も抜けてない。字は汚いけど」
「汚いは余計だろ」
「赤ペンで直されてるし。これ、誰の字?」
「バイト先の店長」
「店長に、株の宿題出されてんの? あんた、ラーメン屋で何してんの?」
「……ネギ切ってる」
姉ちゃんが、ぶふっと吹き出した。ポテトチップスのかけらが、約束書の上に飛んだ。俺は、無言でそれを払った。三回清書したんだぞ、それ。
それから、姉ちゃんは、給与明細を一枚、母さんの前にすべらせた。
「お母さん。蓮、半年、一回も休んでないんだよ。テスト前に店長に追い返された日以外」
「…………」
「私、知ってるもん。毎月、私の部屋に、封筒持ってくるから」
母さんは、明細を見た。それから、ノートを見た。最後に、俺の手を見た。
ネギを切りすぎて、指の先が少しかたくなった手。絆創膏が、一枚。今朝、ネギじゃなくて、自分の指を切った。
母さんの目が、少しだけ揺れた。
でも、首は縦に振られなかった。
「……それでも、ダメ」
今度は、〇・五秒じゃなかった。三秒くらい、かかった。
「蓮。お母さんはね、株が怖いの。大叔父さんが家をなくした時、私、まだ中学生だったけど、覚えてるのよ。お正月に、親戚のみんなが、大叔父さんの前でだけ、急に静かになったの」
母さんは、テーブルの上で、自分の手をぎゅっと握った。
「あの人は、今はニコニコしてる。でも、ニコニコできるようになるまで、何十年もかかったの。蓮に、そんな顔をしてほしくないのよ」
誰も、何も言えなかった。
姉ちゃんでさえ、ポテトチップスの袋を、そっと置いた。
◇ ◇ ◇
その時だった。
「――母さん」
父さんが、口を開いた。
高橋家の序列で、冷蔵庫のプリンより下の父さんが。新聞の株価のページを、一秒でめくる父さんが。
「蓮は、隠れてやろうと思えば、できたんだ」
母さんが、父さんを見た。
「十八になれば、親の同意はいらない。あと五か月だ。黙って待って、黙って作れば、俺たちは何も知らないままだった」
父さんは、テーブルの上の約束書を、指でとんとんと叩いた。
「それを、わざわざ、俺たちの前で、頭を下げに来た。……前とは、違うだろう」
母さんは、何も言わなかった。
父さんは、胸ポケットからボールペンを一本取り出した。
「蓮。同意書は」
「……っ、あります!」
俺は、ファイルの一番後ろに入れていた紙を、慌てて取り出した。証券会社のホームページから印刷した、親権者の同意書だ。
父さんの前に、置く。
――親権者氏名。
――親権者署名。
春の夜に、スマホの画面で見た、あの二つの欄。
父さんは、ボールペンのキャップを外した。
そして、書き始めた。
「高」の一画目。
上のところが、ちょっとだけ、右に傾いている。
あの字だ。学校の書類で、何十回も見てきた、クセのある、父さんの字。
春の夜、俺がボールペンを持って、まねしようとした字。一画目を書こうとして、手が止まった字。
それが、今、目の前で、父さんの手から、一画ずつ生まれていく。
高。橋。
父さんの手は、ゆっくりだった。一画一画、まるで何かを確かめるみたいに。
――あの夜、書かなくてよかった。
心の底から、そう思った。
もしあの時、俺がこの字をまねしていたら。今、目の前にあるこの字は、ただの「まねされた字」の、本物のほうになっていた。
でも、そうはならなかった。
この紙の上にあるのは、世界で一枚だけの、本物の父さんの字だ。
最後の一画を書き終えて、父さんは、ボールペンにキャップをした。カチッ、という音が、リビングに響いた。
「……父さん」
「なんだ」
「なんで、株価のページ、いつも一秒でめくってたの」
父さんは、少しだけ黙った。
それから、ほんの少しだけ、口のはしを上げた。
「……見たら、やりたくなるからだ」
え。
「えっ」
姉ちゃんと俺の声が、きれいにそろった。
父さんは、それ以上、何も言わなかった。ボールペンを胸ポケットにしまって、いつもの無口な父さんに戻った。
でも、俺は、見逃さなかった。
同意書を俺のほうに押し戻す時、父さんの指が、一瞬だけ、「親権者署名」の自分の字を、そっとなでたのを。
◇ ◇ ◇
母さんは、長いこと、同意書を見つめていた。
父さんの字を。俺の約束書を。三冊のノートを。
それから、大きな、大きな、ため息をついた。
「……蓮」
「はい」
「約束、一個追加」
母さんは、俺の手からボールペンを取ると、約束書の一番下に、自分の字で書き足した。
――六、毎月の結果は、お母さんにも、ちゃんと見せること。(ごまかしたら、即解約)
「二番と、かぶってるけど」
「かぶってていいの。大事なことだから、二回書くの」
千夏みたいなことを言う。この世には、二回言う人が多すぎる。
母さんは、ボールペンを置いた。それから、俺の顔を見ないまま、小さな声で言った。
「……大叔父さんみたいには、ならないでね」
「ならない」
「本当に?」
「ならない。……約束書、もう一行、増やそうか」
母さんは、やっと、ちょっとだけ笑った。目は、少し赤かった。
「いらない。その代わり、書いたことは、全部守りなさい」
「はい」
隣で、姉ちゃんが、ポテトチップスの袋を、くしゃっと丸めた。
「はい、閉会〜。あー、疲れた。観覧料、ポテチ一袋じゃ割に合わないわ」
「勝手に観覧したんだろ」
「蓮」
姉ちゃんは、俺の頭を、ばしっと一回だけ叩いた。痛くはなかった。
「よかったじゃん」
それだけ言って、二階に上がっていった。
◇ ◇ ◇
ここで、ちょっとだけ、ちゃんと説明しておく。
未成年が株の口座を作るには、「親権者の同意」が必要だ。
証券会社によって細かいところは違うけど、だいたい、親の同意書と、親の本人確認の書類と、親子だとわかる書類を出す。証券会社のほうでも、親に確認の連絡をする。
つまり、春の俺がやったみたいに、こっそりは作れない。というか、こっそり作っちゃいけない。
家族全員の、目の前で作るものだ。
……と、今の俺は、胸を張って言える。半年前の俺には、言えなかった。
◇ ◇ ◇
申し込みから、二週間。
一月の、終わりのある日。
学校から帰ると、ちょうど家の前に、赤いバイクが止まっていた。
「おっ、手紙の兄ちゃん!」
佐藤さんだった。
春からずっと、俺の「郵便回収係」を手伝ってくれていた、日本一いい郵便屋さん。姉ちゃんの名前の封筒を、母さんの前で俺に渡してくれた人。
今思えば、あの時の佐藤さんは、知らないうちに、俺の共犯者にされていた。
ごめん、佐藤さん。
佐藤さんは、封筒の束の中から、白い封筒を一枚、ひょいっと抜き取った。
そして、宛名を見て、目をまん丸にした。
「……おっ、ついに兄ちゃん宛てか!」
俺は、封筒を受け取った。
――高橋蓮様
印刷された、三つの字。
いや、「様」を入れたら、四つ。
高橋、美咲、じゃない。高橋、蓮。俺の名前だ。
春に、何十回も見た、あの白い封筒と、まったく同じ形。同じ証券会社のマーク。でも、宛名だけが違う。
宛名だけが違うのに、封筒の重さが、全然違った。
「よかったなあ、兄ちゃん!」
佐藤さんは、俺の背中をばんばん叩いた。
「長かったなあ! ずっと待ってたもんなあ、彼女からの手紙!」
「…………」
「いやあ、春からずっと、毎日走って帰ってきてたもんな。最初は、お姉ちゃん宛てのを代わりに受け取ってたけど、ついに本人宛てだ! 大事にしろよ!」
佐藤さんは、目のはしをちょっと光らせながら、親指を立てた。
……違う。佐藤さん、違うんだ。
これ、証券会社からなんだ。彼女なんて、いないんだ。いたこともないんだ。
でも、佐藤さんのうれしそうな顔を見ていたら、どうしても言えなかった。
「……はい。大事にします」
「おう!」
佐藤さんは、赤いバイクで、満足そうに去っていった。
たぶん、佐藤さんの中では、俺は今、春から遠距離恋愛を続けて、ついに彼女から初めて手紙をもらった、けなげな高校生になっている。
いつか、ちゃんと本当のことを言おう。
……いつか、ちゃんと、彼女ができたら。その時に、まとめて報告しよう。
いつになるかは、わからない。
◇ ◇ ◇
封筒は、自分の部屋で、はさみを使って、ていねいに開けた。
春は、手でびりびりに破いていた。中身を一秒でも早く見たかったから。
今日は、はさみを使った。
中には、口座開設のお知らせが入っていた。
――高橋蓮様 口座開設の手続きが完了いたしました。
口座名義人の欄にも、俺の名前。
俺は、封筒を、取引ノートの四冊目の、一番最初のページにはさんだ。ばあちゃんのポチ袋が、通帳にはさまっているみたいに。
◇ ◇ ◇
二月の、最初の月曜日。
朝の九時、少し前。
俺は、自分の部屋の机にいた。今日は、学校の創立記念日で休みだ。この日を選んだのには、理由がある。トイレの個室で、こそこそ注文するのは、もうやめにしたかったからだ。
机の上には、取引ノート四冊目。
一ページ目には、こう書いてある。
――銘柄:ミライ製菓
――買う理由:子どもの頃からずっと食べてきて、今でも一番好きなお菓子の会社。新しいポップコーンの売れ行きが、半年たっても落ちていない。
――買う数:一株
――ここまで下がったら売る:3,200円(店長と相談して決めた)
一株。
そう。一株だ。
説明しよう。
株は、ふつう、百株ずつでしか売り買いできない。これを「単元」という。春の俺が、ミライ製菓を百株、二十八万円で買ったのは、そういうことだ。
でも、最近は、一株からでも買える仕組みがある。「単元未満株」というやつだ。百株のセットの、ばら売りみたいなものだ。たこ焼きを、一個から売ってくれる屋台だと思ってほしい。
ミライ製菓の株価は、今、一株、三千六百円くらい。
つまり、俺の初めての取引は、三千六百円だ。
春に、八十万円を一回のボタンで動かした男の、再スタートが、三千六百円。くまやのバイト、だいたい三時間半ぶんだ。
……うん。笑ってくれていい。
自分でも、ちょっと笑っている。
◇ ◇ ◇
八時五十九分。
アプリを開いて、ミライ製菓の画面を出す。
「一株」と入力する。
注文のボタンの上に、親指を乗せる。
――震えた。
え。
親指が、震えている。ぷるぷる、ぷるぷる。まるで、母さんがお弁当に入れる前の卵焼きみたいに。
おかしい。
春、八十万円全部をネクストフロンティアに入れた時、俺の指は、まったく震えなかった。あの時の俺は、何も怖くなかった。
なのに、今、三千六百円で、指が震えている。
三千六百円。三時間半のネギ。
このお金が、どうやってできたか、俺は知っている。夏の厨房の暑さも、割ったどんぶりの音も、店長の寒いダジャレも、全部知っている。
だから、怖い。
――そうか。
怖いのが、正しいんだ。
春の俺が震えなかったのは、勇気があったからじゃない。あのお金の重さを、わかっていなかったからだ。
俺は、ノートの一行目を、もう一回だけ読んだ。
買う理由。ちゃんと、書いてある。一行で。
「……よし」
ボタンを押した。
ぽちっ。
三千六百円の、ぽちっ。
春の八十万円の時より、ずっとずっと大きな、ぽちっ、だった。
◇ ◇ ◇
九時。市場が開いた。
画面が、切り替わる。
――約定しました。ミライ製菓 1株 3,598円
「…………っ!」
声にならない声が出た。
約定した。俺の名前で。俺のお金で。俺の口座で。
ミライ製菓の、一株。会社の、何千万分の一の、ほんのひとかけら。でも、今日から、そのひとかけらは、正真正銘、高橋蓮のものだ。
三十秒後。
――評価損益:+12円
「プラス十二円!!」
俺は、椅子から立ち上がっていた。
「十二円! 十二円増えた! うまい棒一本ぶん!」
一分後。
――評価損益:−8円
「マイナス八円!? なんで!? さっきまで十二円だったのに!」
二分後。
――評価損益:+25円
「にじゅうごえん!!!」
完全に、春のトイレの個室の俺だった。いや、それ以上だった。部屋の中を、意味もなくぐるぐる歩き回った。ベッドに倒れこんで、また起き上がって、また画面を見た。
「ちょっと、蓮!」
ドアが、ばんっと開いた。もちろんノックはない。今日は三回に一回じゃないほうだ。
姉ちゃんだった。寝起きの、ぼさぼさの頭。
「朝からうるさい! 何が二十五円なの!」
「ミライ製菓が! 一株が! 二十五円!」
「……一株?」
姉ちゃんは、俺のスマホの画面をのぞきこんだ。三秒、黙った。
それから、腹を抱えて笑い出した。
「あんた、それ、三千六百円でしょ!? 三千六百円で、そんなに騒いでんの!?」
「三千六百円は、三時間半のネギなんだよ!」
「意味わかんない!」
姉ちゃんは、笑いすぎて、ドアにもたれかかった。涙まで出ていた。
それから、急に笑うのをやめて、俺の机の上のノートを見た。
――銘柄:ミライ製菓
――買う理由:子どもの頃からずっと食べてきて……
姉ちゃんは、何も言わなかった。
ただ、俺の頭を、くしゃっと一回だけ、なでた。
「……ちゃんと、あんたの名前じゃん」
それだけ言って、部屋を出ていった。
今度は、ドアを静かに閉めていった。
俺は、閉まったドアに向かって、小さく頭を下げた。
それから、ノートを開いて、その日のページに書いた。
――2月○日 ミライ製菓 1株 3,598円で買い。
――今日の結果:+25円(9時2分時点)。うまい棒、二本分。
――感想:指が震えた。たぶん、これでいい。
◇ ◇ ◇
その夜。くまや。
閉店間際の店内には、常連のおじいさんが一人だけ。いつもの席で、いつものラーメンを、ゆっくりすすっている。
俺は、エプロンを外して、カウンターに座っていた。今日はバイトじゃない。報告に来たのだ。
「――で、プラス二十五円まで行って、そこから下がって、最後は、プラス四円でした」
店長は、腕を組んで、黙って聞いていた。
春の話をした時も、店長は笑わなかった。今日も、笑わなかった。
「最初は、ボタン押す時、指が震えて」
「…………」
「春の、八十万円の時は、全然震えなかったのに。三千六百円で、震えて。……かっこ悪いですよね」
店長は、何も言わなかった。
黙って、厨房に入っていった。
湯気の向こうで、麺をゆでる音。スープを注ぐ音。
しばらくして、店長は、俺の前に、ラーメンを一杯置いた。
「頼んでないです」
「まかないだ」
「今日、バイトじゃ……」
どんぶりの中を見て、俺は言葉を止めた。
チャーシューが、いつもより、一枚多かった。
いつもは三枚。今日は、四枚。
店長は、それについて、何も言わなかった。俺も、何も聞かなかった。
ただ、一枚多いチャーシューを、一番最後まで取っておいて、最後に、ゆっくり食べた。
世界一うまかった。たぶん、プラス四円の味がした。
「……ごちそうさまでした」
「おう」
常連のおじいさんが、お勘定を置いて、のれんをくぐって帰っていった。
店の中には、俺と店長だけになった。
店長は、のれんを外して、店の中にしまった。看板の電気を消した。カウンターの上の、スープの寸胴鍋の火を止めた。
しん、と、店の中が静かになった。
いつもなら、ここで、店長は「気をつけて帰れよ」と言う。それから、何かひとつ寒いダジャレを言って、俺がそれを無視して、帰る。
でも、今日の店長は、ダジャレを言わなかった。
頭の白いタオルを外して、カウンターの上で、ゆっくり四つにたたんだ。それから、まっすぐ俺を見た。
春に、「勝ってる時の顔、してるな」と言った時の目と、同じ目だった。でも、あの時より、ずっと、ずっと真剣だった。
「蓮」
「……はい」
「お前に、会わせたい人がいる」
(第20話 終わり)
第20話を読んでいただき、ありがとうございます!
これにて、第1部、完結です!
ポップコーンをぶちまけた男が、姉の名前を借り、すべてを失い、ネギを切り続けて、ついに自分の名前の口座にたどり着きました。父さんの本物の字、「高橋蓮様」の封筒、そしてたった1株。80万円の時は震えなかった指が、3,600円で震えた。作者は、そこが一番好きです。
ちなみに佐藤さんは、今も蓮に遠距離の彼女がいると信じています。
さて、店長が「会わせたい人」とは、いったい誰なのか――。
次回、第21話「ジャージと半額シール」。第2部、開幕です。
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