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レール  作者: 藍本 彩夢


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大好きな人

 あたしの前にどこまでも続いているレール…

 親が用意しているレール…

 この上をきっちりと歩いていないと強制修正をされる。

 それは行動だけでなく考え方全てに至るまで…他の人達はこうなのだからあなたもそうしないと、あの子はこうやって上手くいったのだからあなたもこうしないと…みんなと同じじゃないと…あたしはそう思わないから違う道に少しずつずれていってるつもりなのに、いつの間にかあたしは親の敷いたレールの上に戻される。争いたくないから黙っていたら、いつしかそれはあたしを囲み高い壁となっていた。そこから出たい…その壁を壊したら、そこにあたしの心落ち着ける場所が‥心を解放していい場所があった。


 何気なく見ていたTVに前によく遊びに行った都市の街が映し出された。

 きょうは その街がとても懐かしくどうしても行きたいと思ってしまった。

 たくさんの思い出があるその街は友達との思い出の地であり、あたしの遊び場でもあった。学校の近くのその都市は今でも特別なのかもしれない‥

 しばらく行ってないけどたまには行こうかなと思った。確か近いうちに少し長いお休みがもらえた‥とはいっても有給休暇の消化だけど…早目に友達に連絡してみようかな‥

 あたしは大手ホテルグループの地元にある支店で働いている 泉(いずみ) 詩月(しづき)

 一応チーフを任されている。たまに都市の同じグループのホテルに出張する事も多い。でもその場合はお仕事だから街を楽しめない。このお休みは楽しもうと思っている。

 地元にもお友達はいる。けど‥小さい頃から一緒だった三人は都市にいる。そのうちの一人 榊(さかき) 真莉亜(まりあ)に連絡した。

 「今度の週末 そっちに泊まりで遊びに行こうと思っているんだけど、予定空いてる?」

 「うん 大丈夫 実はあたしから連絡しようと思っていたんだ。あたしね‥彼氏できたの!だから詩月に会ってもらおうと思って‥ディナー食べよう…」

 「え〜彼氏‥?絶対 会いたい!!ディナーも楽しみ!」

 「じゃあ いつも通り駅待ち合わせ?」

 「ホテルに予約したからそのホテルで待ち合わせでいい?」

 「いいよ。ホテルはどこ?勤めているホテルグループかな‥」

 「それは顔がバレて気を使うから、ライバルホテルの視察も兼ねて別のホテル‥Luna地区のビジョンホテルのラウンジ17時でいい?」

 「わかった‥大丈夫よ。週末が楽しみ‥待ってるね。」

 「じゃあね‥週末に‥」

 そんな連絡をした次の日都市にいる後二人からメールがきた。四人で二日目のランチの約束をした。

 約束の日‥あたしはホテルに早目に入り荷物だけ預け、暫くぶりの自由な散策を楽しんだ。

 緑の中を歩き美術館に入り静かな時を過ごす。ゆっくりと時が流れているような空間を歩いている‥絵がわかる訳じゃないけど、わぁーきれい‥わぁーすごい‥この絵 好きだなぁなんて思っているだけで心が緩んでいく。次へ向かって歩いていけると思うようになる。それがあたしのチャージかな‥満タンとはいかないけど、それでも充実感はハンパない。今は囲われていた境界線はない‥自由だ‥だからこれで十分ね。

 チェックインを済ませラウンジで待つ事にした。

 時間通りに真莉亜は来た。久し振りに会ったあたし達はハグをした。

 「真莉亜 幸せそうだねー 愛されてるねー 真莉亜を見るだけで彼氏さんがいい人なのがわかる‥」

 「ありがと。詩月はますますビシッとしてるね。」

 「仕事柄かしらね。これでもいつもよりは全体的に緩やかにしたつもり…真莉亜の彼氏さんに会うんだからまさか遊びに行く時の格好って訳にもいかないじゃない。」

 「そうなのね。仕事の時はどんな感じ?」

 「仕事の時はここのスタッフさんと同じ‥」

 「フフフ‥」

 真莉亜は笑うと続けて言った。

 「仕事モードの時の詩月ってカッコ良さそうね。」

 「うん?」

 「だって あんな感じの制服着てホテルのいろいろな部署を見て回るのでしょう‥」

 「ええ それが仕事だから‥」

 「一度 見てみたいな‥」

 真莉亜が言う。

 「機会があったらどうぞ‥でもちょっと恥ずかしいかな‥やっぱり そんな事がないように望みます。」

 あたしは言った。

 ふたりの間で笑いが起こる。

「そろそろ レストランへ行きましょう。この近くなの。」

真莉亜が言った。

 「真莉亜 彼氏さん待たなくていいの?」

 「うん。レストランで待ち合わせしてるから‥個室がとってあるから先に行っててって言われてるの。」

 「そうなんだ。じゃ行こう。」

 お喋りをしながら5分位 歩くとそのレストランに着いた。

 お部屋に案内され、先にコーヒーを頼み飲みながら真莉亜の彼氏さんを待った。会議が長引いてしまったらしい。

 少しして後方のドアがノックされた。

 「どうぞ‥」

 真莉亜が返すとドアが開き

 「申し訳ない遅れてしまって…会議が長引いて本当に申し訳なかった。」

 彼の顔を見る暇もなく彼氏さんは頭を下げてくれる。

 (ちゃんと謝罪してくれるんだ…えらいな)

 とあたしは思った。

 「いいえ‥お気になさらないで下さい。」

 あたしが言うと

 「ありがとうございます。」

 その人はもう一度頭を下げそう言った。そして真莉亜の隣りで顔を上げた。

 「この人が‥」

 真莉亜が紹介しようとした。それを遮るように

 「大和先輩!」

 「詩月ちゃん!」

 顔を見合わせたその人は知っている人だった。

 「えっもしかして真莉亜の彼氏さんて大和先輩…!?」

 「うん。親友って詩月ちゃん‥」

 「そうです。良かったーホッとした。真莉亜 大和先輩となら幸せになれるよ‥オメデト…先輩 真莉亜をよろしく‥」

 あたしはペコッと頭を下げる。

 「任せろ!」

 先輩が強く答える。

 「真莉亜がキョトンとしちゃっているよ。先輩 説明してあげて‥」

 「詩月ちゃんは同じ部の後輩なんだ。同じ部の後輩とは言っても学生時代はすれ違っているから顔を合わせた事はない。たまたま俺達が行ったファミレスで部の親睦会をやっていて、知ってる後輩達に声をかけて混ぜて貰ったんだ。そしたら詩月ちゃん達と気が合ってその後も、間の後輩抜きでご飯食べたり遊んだりしていたんだ。」

 大和先輩が言う。

 「茜と翔先輩はそこから親しくなってカップルになって今に至っているのよ。」

 あたしが言った。

 「え〜その頃の話し聞きたーい。」

 真莉亜が言う。

 「わかった。まず食事を持ってきてもらって食べながら話そうぜ。」

 大和先輩が言った。部屋の電話から食事を持ってきてもらうようにお願いした。

 「ちょっと電話してくる‥」

 大和先輩が部屋の外で電話をする。

 「なるべく早目に部屋まで来いよ。俺の彼女を早く紹介したいからな‥それに早く来た方がお前の為だと思うぞ‥」

 電話の相手にそう言って切って部屋へ戻った。

 夕飯が終わって食後のデザートが始まった位にドアがノックされた。

 大和先輩がドアを開けに行った。

 「待ってたぞ‥」

 大和先輩が言う。そしてそのまま その人を招き入れた気配がする。そして大和先輩は真莉亜の隣りに行き、真莉亜を紹介する。

 「この娘が俺の彼女だ。これから先ずっと隣りにいてもらいたいと思っている。」

 「そうか‥おめでとう‥良かったな。」

 その声に下を向いていたあたしは顔を上げる。あたしはこの声の主を知っている‥顔を上げたあたしを大和先輩が見ていた。

 「大和…先輩…」

 思わず口をついて出た言葉‥先輩に確認したい‥そう思った。

 「詩月‥」

 名前を呼ばれて動きが止まる。

 「詩月ちゃん‥どうした?顔を見せてやってくれないか‥弘樹に‥」

 そう促されて、あたしはゆっくりとヒロ先輩を見る。

 「ヒロ先輩‥」

 「詩月‥」

 ヒロ先輩があたしを抱きしめる。

 温もりがあたしを包む‥涙が溢れた。

 「やっと会えた‥また会えた‥もう二度と離さない‥逃がさない‥これから先はずっと一緒だ。詩月‥好きだ…」

 あたしを抱きしめている先輩の腕に力が入る。 

 あたしはただ泣いていた。それを見ていた真莉亜が言う。

 「この人が‥詩月がずっと言っていた人なのね。」

 あたしは頷く。

 「ずっと ずっと大好きな人なの。」

 あたしは抱きしめられたまま 涙声でそう言っていた‥

 「詩月‥」

 ヒロ先輩が あたしにキスをした。

 「おい 弘樹 それは二人になってからやってくれ。」

 大和先輩が言う。

 「あっごめん悪い‥」

 ヒロ先輩はそう言ってあたしから離れた。

 あたしは恥ずかしくて下を向いて涙を拭った。

 「詩月ちゃん‥弘樹はフリーだから安心して‥」

 大和先輩が言う。

 「詩月もフリーよ。」

 真莉亜が言う。

 「じゃあ 弘樹。このまま地元に帰さないようにすれば‥」

 大和先輩が言う。

 「もちろん そのつもり‥」

 ヒロ先輩が答える。

 「それは無理です。」

 あたしが言う。

 「何故‥?」

 ヒロ先輩が聞く。

 「住む所がないです‥」

 「別々に暮らすつもりは無いよ‥」

 「でも 仕事あるし…」

 「色々話し合う事がありそうだな。」

 



 

 




 


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