第11話 マリアーン、レズ化する!?
私は、コーヒー3人分と、自分用にロイヤルミルクティーを淹れて、お兄ちゃん達と合流する。そこでは、お兄ちゃんとアレクサがイチャラブを開始し始めていた。熱を帯びたリリアンがいるにも関わらず、アレクサのオッパイをタップタップと持ち上げるように揉んでいた。
「ああああ、勇者様、もっと優しく揉んでください。私、またおかしくなってしまいます……。ああああ、言ってるそばから……」
「ふふ、キミをおかしくさせて良いのは、俺だけだよ。さあ、もっと気持ち良くさせてあげよう。ヘコミとオッパイの両方を刺激してあげよう」
「あああああああ、何、これ、気持ち良い……」
お兄ちゃんは、アレクサを自分の膝の上に座らせて、オッパイを揉んでいた。そして、彼女独特のチャームポイントであるヘコミ部分を舌で攻める。彼女の色っぽい喘ぎ声が部屋中に響き始めていた。
「おい! 本当に何やってるのよ! こっちが苦労して、コーヒーを淹れて来たというのに……。このクソお兄ちゃんが……」
私は、アレクサとお兄ちゃんにコーヒーをぶちまけていた。お兄ちゃんは、テーブルを盾にして私の攻撃を受け切り、アレクサと自身を守る。恐ろしいほどの反射神経と状況判断能力だった。熱いコーヒーは、一滴たりとも彼らにはかかっていない。
「このお! なら、テーブルで潰れると良いわ! 少しは痛い目に遭わないと、女の子の悲しみなんて分からないのよ」
私は流れるように、彼らが盾にしたテーブルにドロップキックをお見舞いする。リリアンは、お兄ちゃんから離れていたので無傷なのは確認できた。後は、アレクサとお兄ちゃんがダメージを負っているかどうかだ。
「やったかしら?」
私の視点からは、2人がテーブルに挟まれているように感じられた。タイミングもバッチリだ。いくら2人が強くても、少しくらいはダメージを負っていて欲しい。私はそう思って、テーブルの向こうへ確認しに行くが、現実は残酷だった。
「ふっ、マリアーン、なかなか良い攻撃だが、俺には通用しないぜ」
「お兄ちゃん、無事だったの……」
アレクサもお兄ちゃんの懐に抱かれる形で無事だった。嫉妬の対象になっていた彼女が、あられもない姿でお兄ちゃんに抱き付いているが、今の私の関心は2人がどうやって攻撃を避けたかという事だった。流れるように連続で攻撃したのに、全て防がれていたのだ。
「俺がどうやって防いだか気になるようだな。まず、あらかじめお前がコーヒーを持って来た時点で、お前の動きと攻撃方法は予測できていた。なので、テーブルを盾にしてコーヒーを防いだ後、木刀で支えを付けておいたのだ。
俺達がダメージを受けないように、わずかに中心をズラしてな。そうする事で、お前の攻撃方向を誘導させて、俺達がダメージを受けないようにしていたのだ。
一応断っておくが、お前がテーブルの陰に隠れている俺を見た時点で、木刀で反撃する事もできた。そうなっていれば、お前は今頃気絶しているだろうな」
「くう、完敗? あの時、私には武器も無かったし、警戒もしていなかった……」
私は、お兄ちゃんのあまりの強さに驚愕していた。昨日までは、自分と同じか、弱いと思っていたのに、いつの間にか、自分の攻撃が通用しないほどに成長していたのだ。自分が男だったら、嫉妬していたかもしれないが、幸いにも性別は違う。
(女の子とイチャラブするのはムカつくけど、それはお兄ちゃんの個性になったようだから仕方ないか。とりあえず、このアレクサという少女の問題を解決すれば、お城で兵士として雇われるレベルなのかもしれない。
そうなれば、国王からの支援は受けられるし、お姫様との結婚も夢じゃないよ。この荒廃しかけた『エルフィン』を、アレクサやリリアンと一緒に復興させれば、位の高い兵士になれるかもしれない。それに、リリアンはお姫様らしいし……)
私はそう考えて、当初の目的が果たせそうな気がしていた。お兄ちゃんがお姫様であるリリアンと結婚すれば、国王の親族になれるし、生活は安定するのだ。魔王と呼ばれる怪物を操る人物も、進撃に失敗してから数年間ほど大人しくしている。
噂では、娘に逃げられて意気消沈しているとか、高齢で死んでしまいそうだという。このまま後継者が現れなければ、娘がいない時点で彼は終わっているのだ。他のモンスターが如何に強くても、それを指揮する頭がなければ、ただの烏合の衆だ。
人間だけの力でも、充分に通用するはずだ。今のお兄ちゃんは強いし、もしかしたら本当に魔王を倒してしまうかもしれない。私は、そのように画策するが、胸の奥がズッキっと傷んでいた。一度は愛したお兄ちゃんを諦めなければならないのだ。
(私、なんでがっかりしているんだろう。お兄ちゃんからのプロポーズに喜んだりして馬鹿みたい……。あんなの、お兄ちゃんにとっては冗談で、リリアンやアレクサといった美女ができるまでの遊びのようなものだったのよ。
私もお兄ちゃんも本気ではなかったわ。そう、ただ恋人ごっこを楽しんでいたいだけの戯言だったのよ。私にも将来の恋人はできるし、お兄ちゃんもリリアンやアレクサがいる。ここらで、兄妹間による恋愛ごっこを終わらせる必要があるのよ)
私は目を瞑り、お兄ちゃんを他の女性と結婚させる決意をしていた。私なんかがお兄ちゃんの輝かしい将来を潰してはいけないのだ。自分の内に大きくなった、お兄ちゃんと結婚して家庭を持ちたいという欲望を打ち壊そうと必死になっていた。
「あの、コーヒーのおかわりを貰えるかしら?」
「はっ、はいいいい!?」
突然、近くから聞こえてくる女性の声に、私は驚いていた。コーヒーなど全てぶち撒けて、残っていないはずだ。このタイミングで、おかわりを要求できる人物などいるはずがない。そう思って、声をかけてきた人物の顔を見てみた。
「リリアンさん、すいません、すぐにコーヒーを淹れ直して来ます。私がぶち撒けたので、コーヒーを飲めなくて怒っているんですよね?」
しかし、そう言って見るリリアンの顔は笑っていた。コーヒーカップを手に持ち、空になったカップを差し出していた。どうやらたった今、飲み終わったばかりに見える。
「ふふ、あなたが淹れてくれたコーヒー、妾はちゃんと飲んだわよ。味が濃くて、なかなか美味しいわ。今度は、砂糖とミルクを入れて味を変えて貰えるかしら? 後、何か、クッキーやケーキとかあると嬉しいんだけど……」
「ええ、コーヒー、3つともダメにしちゃったはずじゃあ……」
「妾を誰だと思っているの? コーヒーとお菓子に目のない、リリアン姫よ。あなたがコーヒーを持って来た時点で、鞭で妾のコーヒーだけを遠距離で受け取ったのよ。妾ほどの鞭の使い手になれば、自分の手足のように使えるからね……」
彼女はそう言って、得意げに自慢の鞭を見せつけてきた。どうやら特殊武器のようであり、普段は鞭だが、状況によって硬い警棒のようになるらしい。それによって、彼女のカップだけを安全に受け取っていたらしい。
「はあ、すごい技術……」
「ふふ、妾も一筋縄ではいかない猛者なのよ。さあ、コーヒーとケーキを持って来てね。ちなみに、あなたのロイヤルミルクティーは、カップが割れてダメになってしまったけどね」
「うわああ、お気に入りのカップが……」
「ほらね、お兄ちゃんの事になると、全然後先の事が見えていないわ。もっと冷静に判断しなければ、あなたのお兄ちゃんにダメージを与える事はできないわ。まずは、冷静に相手の行動を分析する能力を養いなさい。あなたと彼の差は、そこなのよ」
「うう、好きだとか、大切にするという言葉に騙されたように感じる……。私、お兄ちゃんの事を本気で好きになりかけていたのに、アレクサさんとイチャイチャし始めて怒りが込み上げてきたんです。やっぱり、私の事なんて遊びだったんだと……」
私は、リリアンに指摘されて、一気に抑えていた感情が爆発していた。涙が溢れるほどに流れて、止まらなくなっていた。まさか、お兄ちゃんに初恋の感情を抱いて、その思いが無残にも打ち壊されたのだ。悲しみの他にも、いろいろ込み上げてきていた。
「ふう、どうしようもない男ね。こんな可愛い妹を誘惑して、泣かせるなんて……。安心しなさい。妾がいずれは、彼を制裁してあげる」
リリアンはそう言って、私を優しく抱きしめる。そして、流れる涙を舐め始めていた。大切な物を舐め回すように、彼女の舌が私の頰を丁寧に撫で回している。この感覚がこそばゆく、彼女の吐息を感じ始めていた。
「リリアンさん? あの、もう舐めなくても大丈夫なんですけど……」
「ダメよ、妾にもっとその可愛い顔を愛撫させて……」
リリアンは、徐々に優しいお姉さんの顔から、粘着質な女の顔に変化していた。頰からゆっくりと唇の方へ、彼女の舌が移動して来る。もう少しでキスされるという所で、私は気付いていた。リリアンさんは、女の子が好きというレジっ気があるようだ。
「うおおおお、止めてください。私から離れて!」
「ふふ、可愛い♡ キスは初めてかしら? お姉さんがいろいろ教えてあげるね。安心して、妾は本気なのよ」
「全然安心できない……」
リリアンは、私にキスしようと近付いてくる。私は、蛇に睨まれた蛙のように動けなくなっていた。このまま、キスを受け入れて女性を好きになった方が幸せなのだろうか? 抗えない魅力に、私は目を瞑り、キスする体勢を整えていた。
このまま、リリアンと熱いキスを交わしますか?
⓵受け入れる
⓶拒絶する。
⓷『私、男の娘なの』とか言ってみる。
私は⓶を選んだが、いずれの場合も強制的にキスしてくるぞ。
抗う術は、全くないのだ。
クチュクチュという音が頭の中で響き、彼女の虜になりつつあるのがわかる。
自分では、思わなかった女の子を好きという感情が湧き上がって来ていた。
「はん、クチュ、ダメ……」
私は、舌を絡まされて、エスカレートしそうになっていた彼女を止める。両手で彼女から離れるように拒絶し、なんとか間合いを取る。私の顔は、彼女のヨダレでとろけそうになっていた。顔に付いているヨダレを拭い、レズ化しそうになるのを必死で抵抗していた。息が荒く、彼女とのキスが脳内を駆け巡る。
「あーん、もう少しでマリアーンちゃんが妾の物になったはずなのに……。まさか、拒絶されるなんて……。手頃な付き人として最適だと思っていたのに……」
どうやら、彼女の専属の付き人にされる調教技だったようだ。拒否した事でギリギリレズ化は回避されたが、彼女が人の良いお姉さんであるという認識は消えていた。お兄ちゃん同様、彼女も危険な人物だったようだ。私の周りには、こんな奴らしかいないのだろうか?




