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「ノルン様」
二十歳になったノルンは、幼い少女から女性になっていた。
デニスは、彼女に言った。
「今度、ノルン様に仕える騎士団長が参ります」
「……デニスさんは、騎士団長ではなかったですか?」
「今はそうですが、もう若い者にも任せなければなりませんし、活きのいい若者が入ってきました。信頼できる人間です」
そう言われて、自分が今まで黙っていてほしいと言った事を言われてしまうのでは、と不安そうな表情をすると、察したデニスが言う。
「ノルン様の事は、黙っておきます。ですから、ご心配なく」
「……本当、ですか?」
「ええ。約束します」
そう言って、大きな無骨な手でノルンの頭を撫で、言った。
「皆、ノルン様の味方です。あの日の事は、私とグレイテルさん、ノルン様の三人の秘密です」
その言葉を聞いて、胸が少し、温かくなったような気がした。
必ずしも、一人で秘密を抱えているわけではない。
当事者は自分だとしても、味方がいる。
少し、心強かった。
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