好き、好き
「……」
この時…僕はどんな表情をしていただろうか。
多分、赤くも青くも白くも黒くもなく、ただ全くの無表情をしていただろう。
最初、彼女が一体何を言ったか理解するのに少々時間を有した。
信じられなかったのだ…
(…立花さんが…僕の事を…好き…って?…友達とじゃなく…本当に恋人として…?…)
穂香は、僕を見つめていた。
僕の返事を待っているようだ。
穂香と目が合うと、急に顔が赤く熱くなるのが分かる。
(僕は…僕は…)
「立花さ…穂香さん」
意を決し、僕は言う。
「はい…」
「…」
目が合い、心臓が破裂しそうな程ドキドキしてるのが分かる。
「ぼ、僕は…」
言え…言えよっ!後悔したくないだろ!?
したくないなら言うんだ!
心の中で葛藤する中、時間は刻々と過ぎていく。
「…好き……」
やっと言えた…言えた…
自分にも聴こえるか聴こえるかくらい小さい声だったけど、彼女には届いたようで。
「…っ…!」
言葉には出さなかったが、満足そうに、愛らしく、微笑んだ。
「…好き…」
今後はもう少し大きな声で言った。
「…好き」
また少し、大きな声で…
「好き…」
また少し、また少し…
「好き、好き…」
徐々に、発せられる言葉の数が増えていく。
「好き…好き…好き…」
そして、最後に…
「大好きですっ!」
町中に響き渡るくらい大きな声で、言った。
道行く人達が、驚いたようにこちらを凝視したが、不思議と気にならなかった。
「私も…」
涙で濡れた頬を、夕陽が光らしながら穂香は言った。
「私も…大好きです!」
透き通るように美しい声と同時に吹いた春風が、学校の桜並木を、優しく散らした。




