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第3話 湖の恵みと初めての晩餐

第3話 湖の恵みと初めての晩餐

洞窟の拠点化をある程度終えた僕は、次なる生命線である「水」と「食料」の確保に乗り出すことにした。

結界内にあるという湖は、拠点にした洞窟から森の縁を沿って歩いて十分ほどの場所にあった。

木々を抜けると、視界が一気に開ける。

「うわぁ……綺麗だな」

思わず感嘆の声を漏らしてしまった。直径数百メートルはあるだろうか。その湖は、底まで透けて見えるほど圧倒的な透明度を誇っていた。水面は鏡のように周囲の深い緑と青空を反射し、時折、風が吹き抜けるとキラキラと宝石のように輝く。

水際に近づき、手で水をすくってみる。驚くほど冷たくて心地よい。

しかし、いくら綺麗に見えても、ここは異世界だ。未知の細菌や寄生虫、毒素が含まれている可能性は否定できない。

「安全確認も魔法でいけるかな」

僕は水面に向けて手をかざし、『万能創造』の応用として、物質の成分を解析アナライズするイメージを強く持った。地球の知識である化学分析のプロセスを魔力で代行させるのだ。

数秒後、頭の中にふっと情報が流れ込んでくる。

(不純物極小。大腸菌・寄生虫などの有害生物なし。重金属・毒素反応なし。極めて純度の高い軟水)

「よし、そのまま飲めるレベルの超名水だ」

僕は両手で水をすくい、思い切り喉に流し込んだ。

「……っ! 冷たくて美味い!」

ミネラルウォーターよりもまろやかで、体中に染み渡るような清涼感がある。魔力を含んでいるのか、一口飲んだだけで疲労がスッと抜け落ちていくような感覚すらあった。

水源が確保できたところで、次は水を拠点まで運ぶ手段だ。

いちいち湖まで汲みに来るのもスローライフの醍醐味かもしれないが、生活用水としては不便だ。

僕は湖畔の砂や石を集め、『万能創造』で巨大な水瓶ウォータージャグを作成した。容量は五十リットルほど。さらに、内部には魔力を込めた「自動浄化・保冷」の機能を持つ魔法陣のような回路を組み込んだ。これに水を汲んでおけば、いつでも冷たくて綺麗な水が飲める。

「次は食料だな」

水瓶を傍らに置き、湖の浅瀬に目を凝らす。

すると、澄み切った水の中に、体長三十センチほどの銀色に輝く魚が何匹も泳いでいるのが見えた。地球のマスや鮎に似ているが、ヒレの形が少し長く、優雅に水中で揺らめいている。

魚がいるなら、釣るか、捕まえるかだ。

僕は近くの木から細くてしなやかな枝を切り出し、またしても『万能創造』を発動させる。木の繊維を編み込んで強靭な釣り糸を作り、小石を削って鋭い釣り針を生成する。即席の釣り竿の完成だ。餌は、森の入り口で見つけた小さな虫を使った。

湖畔の岩場に腰を下ろし、釣り糸を垂らす。

ポチャッ……。

静寂の中、水面を揺らす音だけが響く。

心地よい風が吹き抜け、遠くで鳥のような鳴き声が聞こえる。

焦る必要は何もない。時間はたっぷりある。スマートフォンもなければ、煩わしいメッセージアプリの通知もない。「親父がまたキレてお袋が家を出た」だの、「叔父さんの相続で揉めてるからハンコをくれ」だの、あの忌まわしい着信音に怯えることもない。

ただ、目の前の浮きが沈むのをぼんやりと待つ。

この無駄な時間こそが、究極の贅沢なのだと僕は実感していた。

十分ほど経った頃、ツンツンと浮きが引き込まれた。

「おっ」

グンッ! と強い引きが手に伝わる。僕はタイミングを合わせて竿をしゃくり上げた。

水しぶきを上げて宙を舞ったのは、丸々と太った美しい銀色の魚だった。

「よし、大漁大漁」

その後も一時間ほど釣り糸を垂らし、合計で五匹の魚を釣り上げることができた。一人で食べるには十分すぎる量だ。

さらに森を少し探索し、地球のリンゴに似た赤い果実と、香草のような葉をいくつか採取した。もちろん、事前に魔法で毒がないことは確認済みだ。

両手に食材と水瓶を抱え、僕は意気揚揚と洞窟の拠点へと帰還した。

時刻は夕暮れ時。西の空がオレンジと紫のグラデーションに染まり、海面が黄金色に輝いている。

洞窟の入り口付近に、石を組んで即席のかまどを作った。

薪は森で拾い集めた枯れ木だ。着火剤などはないが、僕には魔法がある。

指先に魔力を集中させ、小さな火種ファイアを生み出して枯れ葉に落とす。パチパチと音を立てて炎が上がり、あっという間に安定した焚き火が完成した。

魚の内臓をサバイバルナイフで素早く処理し、木の枝に刺して火のそばに立てかける。

香草を散らし、少し待つと、食欲をそそる香ばしい匂いが辺りに漂い始めた。皮がパリッと焼け、脂が滴り落ちて焚き火がジュワッと音を立てる。

「いただきます」

熱々の魚にかぶりつく。

「……美味い!」

味付けは一切していないのに、魚そのものの旨味と塩気が絶妙だった。身はふっくらとしていて、香草の爽やかな香りが生臭さを完全に消している。地球の高級レストランで食べるような上品な味わいだった。

果実も囓ってみたが、こちらはリンゴと梨を掛け合わせたような瑞々しい甘さがあり、食後のデザートとして完璧だった。

腹が満たされると、急激な眠気が襲ってきた。

焚き火の火を土で消し、洞窟の奥へと入る。魔光石の優しい光に照らされた空間は、外の暗闇とは無縁の安心感に満ちていた。

自分で作ったボタニカルベッドに身を投じる。

沈み込むような柔らかさと、植物の香りが全身を包み込む。

「初日にしては、上出来すぎるな……」

目を閉じると、今日一日の作業の心地よい疲労感が体を巡る。

明日からは、もっと本格的な拠点づくりを始めよう。かまどだけでなく、調理器具や食器、それに家具なんかも揃えたい。海で塩を精製したり、森の奥を探索して新しい素材を見つけたりするのもいい。

やりたいことは無限にある。そして、それを邪魔する者はここには誰もいないのだ。

僕は、生まれて初めて心からの安らぎを感じながら、深い眠りへと落ちていった。

【ステータス】

名前:なし

年齢:18(肉体年齢)

職業:開拓者

レベル:3

HP:180/180

MP:∞/∞

スキル:

万能創造クリエイトLv.3

魔力無限インフィニティ

空間転移テレポートLv.1

・全ステータス補正(大)

・地球の知識

解析アナライズLv.1

【所持拠点】無名の洞窟(仮拠点・整備済)

ここまでお読みいただきありがとうございます!少しでも面白いと感じたら、画面下から【ブックマーク】と【☆☆☆☆☆】の評価をいただけると、執筆の大きなモチベーションになります!

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