表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/4

百鬼天道市

 私は座布団の上で、お茶を飲んでいた。和室の中、ちゃぶ台には書道道具が並んでいる。綺麗に整頓された部屋にいるなんて久しぶりだ。なぜ私はここにいるのだろう。だんだんと、これが夢じゃない、ということに気づいてきた。夢じゃない、という確信を得た瞬間、パニックになる自信がある。

 お幸ちゃんは私を孝明さんに預けて行ってしまった。彼女はいったい何者だったのだろうか。また、今現在、私の目の前にいる孝明さん、この人も何者なのだろう。

「汚くてすみません、来客があるなんて思ってませんでしたから。」

 と、まったく汚くない部屋の中で孝明さんは言った。私はふるふると頭を振る。孝明さんは私の前にお煎餅をおいて、

「綾さん……で、あってますかね?綾さんは、なんでここに?」

 なんで、ですって?こっちが聞きたい。どうして私はここにいるんだ!

「わからないです。神社に来て…気づいたらここに……。」

「なるほど、じゃあ、ここが何なのかもわからないんですね?」

 私は頷く。顔はわからないけど、声的に優しそうではある。信頼しても大丈夫だろうか。

「では、説明します。」

 そう言って、彼は一口お茶を飲んだ。

「ここは、妖怪の町『百鬼町』と言います。貴方が住んでいるのは人間界ですね。ここは、大昔に人間界から逃れた妖怪の子孫が住んでいるんです。」

 妖怪の町。なんとなく想定はしていた。妖怪がたくさんいることや「孝明さんは唯一の人間」という発言から、想像はつく。

 とはいえ、そんな簡単に受け入れられることではない。

「……やっぱり……。私、帰れます…よね……?」

「えーと……」

 その反応はなんだ。まさか、一生ここに……!?

「結論から言うと、帰れます…」

 よかった。わかりやすく安堵する私に、孝明さんは

「…その、一週間後に、帰れます。」

 と気まずそうな声で言った。一週間……?一週間も妖怪の町に?私、生きて帰れるのかな。バイトどうしよう。

 途方に暮れる私の方を向いて、孝明さんは

「大丈夫ですよ。一生帰れないってわけじゃないですから。ここにいる間は僕に任せてください。」

 任せるとはなんだ。衣食住とか?それっていくらかかるんだ。

「あの、私お金持ってなくて。」

「一週間後に返してもらいますから、いいですよ。」

「借りるってことですか…?」

「まあそんな感じですね。利子は取りませんよ。」

 この人、今どんな顔してるんだろう。お面のなかでほくそ笑んでたりしたらめちゃくちゃ怖い。

「一週間後に帰れるって話なんですけど、」

 と孝明さんは話し始めた。

「ここ、百鬼町は一週間に一度、日曜日だけ人間界とつながるんです。日曜日は全員が店を開いて、普段人間界にいる妖怪を歓迎するんです。」

 私は真剣に聞いた。自分の状況はできるだけ把握したい。

 つまり、人間界にも妖怪がいるわけだ。いつもバイトで一緒になる木村さんも、川瀬さんも、妖怪の可能性があるのだろうか。

「日曜日、外の妖怪を招き入れるこの行事を、僕たちは『百鬼天道市』と呼んでいます。」

 なんか新しい名詞が出てきた。百鬼天道市?

「たまに、百鬼天道市の日に迷い込んでくる人間もいますよ。珍しいことです。百年に一度くらいのことです。」

「レアケースなんですね。」

「人が迷い込まないよう、対策されているはずなんですが……。とにかく、あなたが帰れるのは次の日曜日ってことです。」

 しばらくはここで過ごさなきゃいけないわけだ。本当にバイトどうしよう。

「あの、外部と連絡する手段ってないっすかね…?」

「あるにはありますよ。あんまり役には立たないと思いますけどね。」

 そう言って孝明さんは席を立った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ