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変化はいつも突然に

 今日も暇だ。住宅街の隅にある、コンビニは、平日のお昼なんかはガラガラである。

はあ。無意味すぎる。

 誰も来ないのにレジに立って、ずっと、ただ時間が過ぎるのを待っている。照りつけるような陽の光が、コンビニの窓からドアから漏れ出している昼下がり。私は今日も1日を無益に過ごしてしまった。


 まともに生きてきたはずなのに、気づいたらこの様だ。大学は中退し、コンビニでバイトしている。高校のころの同級生、近所に住む友達だった子たちは、みんな今は大学で学んでいる。きっと輝かしい未来が待っているのだろう。なのに私はここでバイトして細々と生きている。

 窓から入ってくる西日がまぶしい。夕方になると、少しお客さんが増えてくる。私は無気力に「いらっしゃっせー」と言って、働く。近くにもっと新しいコンビニがあるから、このコンビニにはあまり人がこない。いつかつぶれるのではなかろうか。職場がなくなるのは勘弁していただきたい。

 6時になった。そろそろ交代の時間だ。変わるのは木村さん。厳しいけれども意外と優しいおばさん。たまに飴ちゃんをくれる。

 帰ったらコンビニでもらってきたお弁当を食べて、最近やってるドラマを見て、歯を磨いて寝る。

 その繰り返し。


 今日もバイトに行く。日曜日だが、そんなことは関係ない。今の私には曜日感覚がないのだろう。

 12時にコンビニに入る。お昼時はこんなコンビニでも忙しくなるから、二人体制となる。一緒にレジに立つのは、大学生のお兄さん。大学生とはいえ、私よりも年は上だ。苗字は川瀬さん。失礼だが、下の名前は忘れてしまった。川瀬さんは

「おはようございます。」

 と言った。もう朝は終わりでしょ、と思いつつも、もう慣れてるので

「おはよー、ございます」

 と答える。まだお客さんはあまりいないようで、川瀬さんは暇そうにあくびをした。私は

「ほんっと、お客さん少ないっすねー」

 と言う。川瀬さんは

「本当ですよねぇ」

という。本人に直接聞いたことはないが、川瀬さんはどうやら国公立のいい大学に通っているらしい。が、留年しているのだとか。バイトしてないで、勉強してたほうがいいんじゃないのか、とは思うが、余計なお世話だろうからなにも言うまい。

 二人でレジを頑張って、やがて川瀬さんの退勤の時間になった。川瀬さんは

「おつかれっしたー」

 と言って帰っていった。中は空なのではないか、と心配になるような薄いリュックをしょって、彼はコンビニを出ていった。あとは、一人で退勤まで働くだけだ。


 6時になって、木村さんが来る。木村さんは、

「こんばんは」

 と言った。まだ夜には早いんじゃないか、と思いつつも、人によって感覚は違うだろうと考えて、

「こんばんは」

 と答える。木村さんは着替えてきて、レジにたった。と、思うと、かがんで、私にこう言った。

「これ、落ちてたわ。あなたの?」

 私は立ち上がった木村さんの手の中を見た。そこに入っていたのは、お守りだった。手縫い、という感じのお守りだ。巾着の形の、小さな、青いお守り。白い糸で、「守」と刺繍してある。私のものではない。レジの内側にあったのだから、お客さんのものでもなさそうだ。

「私のじゃないっすねー。川瀬さんのかもしれないっす。明日、聞いてみますね。」

 と言って、私はそのかわいらしいお守りを受け取った。何がはいっているのかはわからないが、小さな重みが掌に感じられた。転がすとチリンチリンと音がする。鈴が入っているのだろう。

 その後、いつも通り仕事し、私は退勤した。そして帰ったらコンビニでもらってきたお弁当を食べて、最近やってるドラマを見て、歯を磨いて寝る。

 その繰り返し。のはずだった。


 ふと夜中に目が覚めた。スマホを見てみると、11時のようだった。暗い部屋の中で、うめく。おなかがすいた!夜中に目が覚めるのは久しぶりだ。なんとなくなにか食べたくなって、冷蔵庫を見てみる。何もない。仕方ないから、近くのコンビニに行こうと思う。自分が働いてるとこじゃなくて、新しくてきれいなとこ。そっちのほうが、品ぞろえがいいから。

 なんとなく、洗面所に行く。昔から、出かける前は鏡を見ていたから、それが癖になっているのだ。

 プリン頭にクマが酷い目。私は洗濯機の上に置いてあったジャージをひっつかんで外に出た。


 外には誰もいない。私はゆっくり歩いてコンビニに向かう。ふと、誰かの声が聞こえたような気がした。私は立ち止まった。右だ。右側から遠く小さく音が聞こえる。

 右に曲がって私は歩く。やっぱり。音が大きくなった。次は左から音が聞こえる……。そうして歩いていくうちに、近所の神社に着いた。やっぱり、音がする。1人の声ではない。ガヤガヤした、何人かの声だ。神社の中、社の中から音がする気がする。

 そう思って、私は鳥居の中に足を踏み入れた。その瞬間。

 パッと周りが眩い金色の光に包まれ、喧騒がぐいっと私を取り囲むように近づいた気がした。私は思わず目を瞑った。

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