ステータス14:帰省
俺と明梨は駅から実家までの道のりを歩いて移動していた。駅から実家までは徒歩で十数分。歩くとちょっと遠いけど、乗り物を使うほどでもないという微妙な距離だ。
しかし、明梨と一緒に帰省することになるなんて、つい数日前までは夢にも思っていなかった。この件はスクールアノマリーに感謝だな。そう言えば明梨が今回着いて来たのって、スクールアノマリーの監視活動の一環なんだっけ? なんか普通に一緒に帰省してるだけって感じだけど……。
「なあ、明梨は俺の監視のために一緒に帰省してるんだったよな?」
「一応そうだよ」
「なら、俺が何のために実家に帰るのか、聞いておかなくていいのか?」
「それもそうね。何で急に帰ることにしたの?」
そんな適当な。本当にそれでいいのかスクールアノマリー?
「えっと、小っちゃい頃に俺がステータスオープン出来てたかお母さんに聞くため、かな。小学2年生くらいまでの記憶が曖昧だったから、もしかしたらお母さんなら覚えてるかも、と思って」
「ふーん。電話とかメールじゃダメだったの?」
「電話したんだけど、声聞いてたら帰りたくなって。それに会って話した方がいい内容かなって。心配かけちゃうかもだし」
「なるほどねー。確かにステータスオープンできないって知ったら心配するかも? じゃあ、何かわかったら明日の帰りにでも聞かせてよ」
「了解。じゃあ、俺こっちだから。明日は昼前に紗良と迎えに行くから家で待ってて」
「わかった。じゃ、また明日ね」
そう言って俺と明梨は二人の家の中間地点となる交差点で別れた。それから少し歩いて、俺は実家に到着した。俺の実家はいわゆる閑静な住宅街にある普通の一軒家だ。ピンポーン、とチャイムを鳴らすと、ドタドタという音がして妹の紗良が出てきた。
「崇兄、お帰りー!」
「ただいまー」
「お土産は?」
「ちゃんと買ってきたよ、はいこれ」
俺は駅ビルで買ったカスタードケーキを紗良に手渡した。崇兄というのは紗良が上の兄と区別するために付けた俺の呼び名だ。俺の家族は父、母、兄、俺、妹の5人だけど、父は単身赴任で海外へ行っていて、兄も去年から1人暮らしを始めたので、今実家に住んでいるのは母と妹の2人だけだった。紗良は2つ下の妹で今は中学2年生。天真爛漫という言葉がピッタリの快活な女子だった。
「サンキュー」
「お母さんは?」
「いるよ。台所で晩御飯作ってる。崇兄が帰ってくるから豪華にするんだって張り切ってたよ」
「そっか。荷物置いてきたいし、俺は部屋行くわ。夕飯になったら呼びに来て」
「ラジャー!」
そう言うと、紗良はまたドタドタとリビングの方へ走って行った。相変わらず慌ただしい妹だ。その後、2階の自室に行って帰省用の荷物が入ったバッグを置き、ベッドの上で少し横になった途端、旅の疲れが一気に来たのか俺はそのまま眠ってしまった。
「―――かにい! 崇兄ってば! ご飯できたよ! 起きて!」
「……ん? ……紗良? あれ? 俺、寝てたのか……?」
「ぐっすり寝てたよ。具合でも悪いの?」
「いや、ちょっと疲れただけ……だと思う。あんな長く電車乗ったの初めてだったから……」
「ならいいけど。それより、ご飯できたから下行こう?」
そう言って、寝ぼけまなこの俺を紗良はリビングへと引っ張っていった。そう言えば、高校の寮に入った日も送ってくれたお母さんと別れた後、さっきみたいな感じで寮のベッドに横になった途端、急激な眠気に襲われたっけ? あの時は誰も起こしてくれなかったから翌朝になるまで起きなかったけど、今回は紗良のおかげで時間を無駄にせずに済んだな。特に体調悪い感じもないし、大丈夫だろう。
うとうとしながらリビングへ辿り着いた俺だったが、部屋に漂う美味しそうな香りに一瞬で目が覚めた。ダイニングテーブルに目線を移すと、そこには所狭しと俺の好物が並んでいた。母はキッチンに近いいつもの席に座って俺達を待っていた。
「おかえり、崇行」
「ただいま、お母さん。これ全部作ったの?」
「あんた好きだったでしょ? 久しぶりだから作ろうと思って」
「こんなに食べられないよ。でも、ありがと」
「さ、2人とも座って座って。冷めないうちに食べましょう」
母に促されて席についた俺達は、約1ヶ月ぶりの家族3人での食事を楽しんだ。身内がステータスオープンできないことがショックなことだという可能性を考えて、その件は夕食が終わってから母と2人きりで話すことにした。紗良に心配かけたくないし、それにせっかくお母さんが用意してくれた料理をその話題で不味くしちゃうのも悪いと思ったのだ。
そして夕食の後、紗良が風呂に入ったのを見計らって、俺は意を決して母にステータスオープンの話を切り出すことにした。




