ステータス15:母親
ステータスオープンの件の話をするために夕食の片付けをしていた母を呼びに行くと、ちょうど洗い物を終えてタオルで手を拭いているところだった。紗良は風呂長いし、話をするなら今が絶好のタイミングだな。
「お母さん、ちょっといい? 実は今回帰って来たのはお母さんに聞きたいことがあったからなんだ。紗良にはあんまり聞かせたくない話だから、今のうちにと思って」
「そんなに改まって何?」
「ちょっと長くなりそうだから、リビングで話そう」
母はお茶を入れてテーブルまで持ってきてくれた。俺の大好きな濃い目の緑茶だ。お茶を一口啜ってから俺は話を始めた。
「驚かないで聞いて欲しいんだけど、実は俺、ステータスオープンができないみたいなんだ」
「……! ステータスオープンができないなんて、そんなことあるの?」
「本当だよ。ステータスオープン」
俺は右手を前にかざして例の台詞を言った。しかし、当然のように何も起こらなかった。
「嘘……こんなことって……何か病気とか? お医者さんには診てもらったの?」
「いや、それはまだ。一応、そういう病気はあるみたいだから、もしかしたらそれなのかもしれないけど。お医者さんには今度ちゃんと診てもらうから、心配しないで」
「絶対、お医者さんに診てもらうのよ!」
「分かった分かった。それで、お母さんに聞きたいことって言うのは俺が昔、ステータスオープン出来てたかどうかについて、なんだ。俺がステータスオープンしてたところを実際に見たことってないかな?」
「自分では覚えてないの?」
「いや、全然記憶になくて。でも、小さい頃もしかしたら出来てたのかも、お母さんなら覚えてるかもって思って」
手に顎を乗せて記憶を探るように少しの間、黙り込む母。そのまま十数秒が経って、ようやく母は口を開いた。
「……ない……わね。でもおかしいわ。お兄ちゃんにも紗良にも教えたのに、崇行にだけステータスオープンを教えなかったなんて、そんなことないと思うんだけど……」
「ステータスオープンは親から子供に教えるものなの?」
「それはそうよ。言葉が話せるようになったらまず教えるわ。だって、子供のステータスを確認しておきたいと思うのは親として当たり前だもの」
子供にステータスオープンを教えるのは当たり前なのか。でも、お母さんはなぜか俺にその当たり前をしなかった。兄にも紗良にも教えた記憶はあるって言ってたし、都合よく俺の時のことだけ忘れてるっていうのは考え難いだろう。理由は分からないけど俺には教えなかった、これが事実だ。
これ以上突っ込んで聞いても変に思われるだけだし、この件にお母さんを巻き込みたくもないし、質問はこの辺にしておこう。
「まあ、お母さんも歳だしド忘れってこともあるかもね」
「ちょっと崇行。お母さんまだボケてなんてないんだから!」
「ハハッ、何にしても覚えてないならいいんだ。話はこれだけだよ」
「分かったけど、お医者さんには絶対に、絶対に診てもらうのよ。それで何かわかったら連絡してちょうだい」
お母さんも心配性だな。やっぱり話したのは間違いだったかな? でも帰るって決めた時はステータスオープンできないことが心配かけるようなことだとは思ってなかったしな。
「了解、ちゃんと連絡する。でも、今のところ何か不便してるわけでもないし、そんなに心配しないでよ」
「親は子供を心配するものなの。あんたも親になったら分かるわよ」
「はいはい。じゃあ、そろそろ俺も風呂入って寝るわ。夕食の時にも言ったけど、明日の昼、紗良と明梨と外で食べて、そのまま高校に帰るから」
「慌ただしい日程ね。今度帰ってくるときは、もっとゆっくりしていきなさいよ」
「はーい。じゃあおやすみ」
「おやすみなさい」
紗良が長風呂から上がるのを待って風呂に入り、俺は自室へと戻った。しかし、お母さんも見たことないってことは突然ステータスオープンできなくなったわけじゃなくて、昔からできなかったって言うのが濃厚だよな。しかも、綺麗に避けるように俺にだけステータスオープンを教えていなかった。偶然にしては出来過ぎてる気がするけど……まあ、何にせよこれでスクールアノマリーに話す内容は見つかったわけだ。これを手土産に月曜日の放課後に部室に行こう。
明日は明梨と紗良と外食。やるべきことはやったし、後は楽しむだけ楽しんで高校へ戻るだけだ。




