第45話 二番弟子、博士になる
結界を張って結界の内部を魔法で消毒し、俺は即席のクリーンルームを作成した。
これで準備は完了。早速、作業に取り掛かろうか。
収納術からミスリルと不安定結晶Xの余り、そして魔力絶縁性のある素材を取り出し、それらを加工していく。
ミスリルーオリハルコン合金の形状を工夫したり、パーツ毎のミスリルとオリハルコンの配合比率を微調整していくことで、魔力の回路を作成した。
そして、医療用短距離転移魔法を魔族の血管と神経にかけ、魔族の頭部を切開する。
こうしておけば、流血も神経伝達の阻害も一切起きないので、魔族にとっては切られていないも同然で、痛みも一切走らないのだ。
切開した頭部に、先程作成した回路を埋め込み、縫合した。
今回魔族の脳に埋め込んだ回路は、「同族嫌悪」という感情に干渉する回路。
コイツが別の魔族を見つけると、衝動的にソイツを殺したくなる。
そんな、神経の信号変換を行う回路を埋め込んだというわけだ。
一応、これでこの魔族は対魔族殺戮兵器として作動するようにはなった。
だが……これだけでは不十分だ。
このままでは、ワートとしての記憶を持たない魔族なら簡単に殺せはするが、同格の魔族相手だと相打ちになってしまうからな。
俺は更に、2つの手術を行うことにした。
オリハルコンを用いての骨格強化と、魔流補助機構の導入だ。
この魔流補助機構というものは、動力源として魔石を使うのだが……俺は今、これ以上ないほど動力源として最適な魔石を持っている。
そう、クトゥグアの魔石だ。
エイリアンの魔石を動力源として魔流補助が行われれば、他の魔族の追随を許さない強さを誇れるようになるのは火を見るよりも明らかである。
その作業をしていると、待ちくたびれたのか外からゴドウィンが話しかけてきた。
「おいテーラス、さっきからお前、何してるんだ?」
「何って、もちろんサイボーグ化だよ。コイツに、魔族撲滅に1役買ってもらうんだ」
「サイボーグ化……まさかテーラスが、人体実験に手を出す日が来るとはな」
「セオリー通りにやるだけだから、これは人体実験じゃない。どっちかといえば工業だ」
「プッ……。お前、その理論はヘリクツオブザイヤーとれるぞ?」
そんな他愛もない会話を経つつも、順調に手術は進んでいく。
……ヘリクツオブザイヤーか、懐かしいな。
ヘリクツオブザイヤーは、世界中から屁理屈を集め、その秀逸さを競うという前世であった娯楽大会のこと。
俺も何個かトンデモ理論を投稿してみたんだが……結局、一瞬だけランキング10位以内に入れたのが最高戦績だったな。
確かに、これが人体実験ではないというのは、ヘリクツオブザイヤー級の理論かもしれない。
ちなみにこのサイボーグ化手術、セオリー通りってのは確かだが、前世では禁忌扱いされてた術式だ。
この時代でも、方法が一般に知られると即座に犯罪扱いになる術式だろうが……相手が相手なので、躊躇は無い。
懐かしさに浸りながらも作業を続けていると、とうとう改造手術が完了した。
仕上げに回復魔法をかけてやる。
しばらくすると、魔族の意識が戻った。
「……ここは? あなたが博士ですか?」
「ああ。俺はテーラス、お前が活躍できるよう、お前を調整してやった」
「そうなんですか。……ありがとうございます、テーラス博士!」
魔族は俺に向かって一礼した。
ちなみに、「サイボーグが、サイボーグ化手術を行った人間のことを『博士』と呼ぶ」ってのは、前世でもサイボーグ化術式の謎の1つとされてたな。
何か、実験の成功を立証できるものはないか……
そう思い、LC共振探知を発動すると、ちょっと離れたところにシルバーウルフが1匹いるのが見つかった。
「ちょっと、ここで待っていてくれ」
俺は魔族にそう言って、シルバーウルフの居場所に移動した。
魔法で麻痺させ、シルバーウルフを抱えて、魔族の元へ戻る。
そして……俺はシルバーウルフに転生探知偽装をかけ、シルバーウルフからワートの魂の波長を出させた。
すると……
「死ねぇ!」
魔族は即座に気功剣を発動し、シルバーウルフの首を斬り飛ばした。
「同族嫌悪」は、きちんと発動してるな。
「テーラス博士、この身体、なんだか凄く動きやすくなっている気がします。さすがですね、博士!」
「そう言ってもらえると嬉しい。……あと、1つ、心して聞いてほしい事がある」
「なんでしょう、博士?」
「この世界には、今お前が殺したコイツみたいな奴がたくさんいる。そいつらの殲滅を……任せてもいいか?」
「そんな……世界はそんな事に! 是非、私にやらせてください!」
確認すべきことは全部確認できたので、俺は魔族と別れ、ペリアレイ魔法学園に戻る事にした。
やれやれ……これで、格段に楽をできるようになったな。
【次回のあらすじ】
さて、サイボーグの戦績やいかに……?
あと、夏休み前まで飛びます。




