第44話 二番弟子、素材を有効活用する
「テーラス、お前彼女作る気はないのか?」
次の日の昼休み。
俺はいつものごとく、例の3人とともに昼食を食べていた。
「そりゃまあ……私利私欲に任せて後先考えず作ろうと思えばできるけど、どうしてだ?」
「お前のせいで、異常事態が発生してんだよ。……上級生のカップルの8割が消滅、そして今年の1年の恋人いる率は0%だ。全てはお前という高嶺の花が目当てでな」
「……は?」
おっと、変な声を出してしまった。
1年で1組もカップルが成立してないことはマリカからも聞いていたが……上級生カップルの8割が消滅?
なんだその「好きな芸能人できたんで彼氏と別れます」理論。
皮肉な話ではあるが……俺はそんな理由でカップル解消した奴とだけは、絶対に付き合いたくないぞ。
まあでも、サムたちが暗に言いたいことが分からないわけではない。
「お前らは、俺が彼女を作れば他の女子が俺を諦め、結果として全体の恋人いる率が増えると考えてるんだろ?」
「当たり前じゃん」
「論理的に考えてそうやんけ」
「まあ、恋愛面だけ考えるなら、そうとも言えるな。けど今の1年の一触即発ぶりを見るに、そうするわけにはいかないんだ。……俺と付き合った女子は、ほぼ確実にいじめに遭う」
「……あ」
「……それは考えてなかった」
マリカは今のところ、入学前の俺のエピソードを語ることで、スクールカーストのそれなりの位置を陣取ってるみたいだが……それでも俺と付き合うとなれば、他の女子たちも黙ってはいないだろう。
これが、今の俺が彼女を作れない理由だったりもする。
とまあそんな会話をしつつ、俺は覚悟を決めた。
……そろそろ、昨日の「クトゥグアに触って無事だった男」の処理に向かわなくてはな。
☆ ☆ ☆
俺はゴドウィンに乗り、クトゥグアの落下地点を経由するようなルートでモミー穀物農地までやってきた。
こうしておけば、かなりの確率で男の方からこちらに向かってくると予測しての事だ。
そして案の定……30分くらいして、その男は俺たちの居場所までやってきた。
「やっと見つけたぜレーロン。貴様は1人だけ転生術で逃げ出した上に、俺にこんなクソな呪いをかけやがった! ここで貴様をぶっ殺す!」
……そう。
俺を前世の名で読んでくるコイツは魔族。それも……ワートだった頃の記憶を残すほど高純度のワートの魂を含む魔族だ。
これは、コイツの強さが今までの魔族とは一線を画していることを意味する。
「言いがかりはよせ。そもそも俺が転生したのは、お前から逃げるためじゃない。……より良い容姿の入手の為に、魂を改竄したかったからだ。逃げたみたくなってんのは結果論だ」
そう言うと……魔族は目をひん剥いて、語気を強めてこう言ってきた。
「貴様は……! あれほどチヤホヤされていたにも関わらず、更に外見まで良くしようなどと、そんな理由で転生したと言うのか?」
「逆に真っ当な転生の理由って何だよ。特殊なケースを除いて、ほぼデメリットしか無いんだぞ?」
「俺はなあ……グレフミンの道場で、一番魔法にも気の扱いにも長けていたんだぞ! 最も褒められるべきは……最もチヤホヤされるべきは……俺だったんだ! なのに貴様は、処世術などと言う反則みたいなやり方でのうのうと……!」
……ああ。
俺は今になって、ワートの素行不良が目立った理由の察しがついた。
要するに、満足するほどに褒められなくてグレたのだ。
しかも、なまじ実力だけはあったせいで、皆から危険思想家と恐れられるようになってしまった。
しまいには、実力者全員を自分の手で殺めるという間違った方法で、自尊心を守る方向へと暴走してしまったというわけだ。
……まあ、理由が分かったからって情状酌量の余地があるわけではない。
それに今回はリューナの時とは違い、俺は被害者の関係者と言える立場にある。
だから、容赦はしない。
俺のやり方で、コイツに罪を償わせる。
「ワート。どうせお前みたいなやつは何体もいるだろうから言うだけ無駄だろうが、これだけは言わせてもらうぞ」
俺は一旦そこで言葉を切り、そしてこう続けた。
「チヤホヤされるのが目的なら、チヤホヤされるための術を身につける努力をすべきだったんだ。自分の理想と努力のベクトルがずれていたら……どんなに努力しても、意味は無いんだよ!」
「んだとぉ!?」
やはり俺の言葉は魔族には響かなかったようで、魔族は俺に向かって一直線に迫ってきた。
それを見越して……俺はタイミングを合わせ、クトゥグアを収納から取り出した。
「グアアアアァァァァァァ!」
収納術は時間停止にできるので、クトゥグアは死後硬直が続いた状態になっている。
俺を攻撃するはずがクトゥグアと正面衝突してしまった魔族は悶絶しつつ、クトゥグアの下敷きとなった。
俺がリミッター解除して魔力を手に集中させて尚、一瞬触ると火傷しそうになるほどの代物だ。
高純度のワートの魂を持つ魔族といえど、何十倍のも表面積でクトゥグアに触れていて、無事で済むはずがない。
「アガガガガ、アアアァ……ァァ……」
魔族の叫び声が小さくなってきたところで俺はクトゥグアを蹴り飛ばし、魔族から離した。
それでも尚魔族は動かない。
気絶しているようだな。
それから7分ほど経つと、クトゥグアの死後硬直が終わり、普通に触れるようになった。
俺はクトゥグアを解体し、魔石を取り出す。
そしてその魔石を手に、俺は魔族に近づいた。
……さあ、お前にはこれから、逆に魔族を殲滅するための兵器へと変わってもらおうか。
ついに100000文字に到達しました!ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます
【次回のあらすじ】
前回、あらすじ欄に書いていた「〇〇〇〇をする」ってとこまで今回の話で到達しなかったので、次回はそれをやります!
これからテーラスが作る魔族殲滅用兵器とは何か?お楽しみに!




