第42話 二番弟子の課外授業
俺が収納術からオーラレールガンを取り出すと、クラスメイトたちが一斉に驚きの声をあげた。
「……な、なんだあれ! でっかくね?」
「ってかあれ、何に使うんだ? あんなの見たこともねーんだけど」
そう、口々に言うクラスメイトたち。
いい感じだな。別にクラスメイトたちの関心がオーラレールガンに集まったからって何かあるわけでは無いが、得体の知れない恐怖から気を逸らすきっかけくらいにはなってるはずだ。
そう思いつつ、俺はクトゥグアが高度50kmで通過するであろうポイントに
オーラレールガンの照準を合わせる。
今はまだクトゥグアは高度300km辺りにいて、高度50km地点を通過するまでにはかなりの時間があるのだが……それでも敢えて高度50km地点を選んだのには理由がある。
それは、クトゥグアが現在張っている防御魔法を解除するのが、成層圏に突入してからだということだ。
いくらオーラレールガンの威力が高いからと言って、防御魔法展開中のクトゥグアに大きなダメージを与えることはできない。
つまり、高度50kmより高い位置にいるところを狙撃したとて、魔力と気の無駄遣いでしかないのだ。
クトゥグアが照準を合わせたポイントを通過するまで、約4分10秒。
ぶっちゃけ今出来ることは、待つことくらいしかない。
「ゴドウィン、俺は発射10秒前からカウントダウンを始める。そしたらもう、魔力を流し始めてくれ」
「……いいのか? そんなことをしたら、発射前にオーラレールガンが耐えきれなくなって爆散しそうな気がするが」
「それは、昔よくあったミスリル合金製のやつの話だろう? 今回のは、まがいなりにも総オリハルコン製なんだ。1分間魔力を流しっぱなしでも、壊れはしない」
「まあ、テーラスがそう言うなら……」
「それより、タイミングが合わなくて発射失敗する方が大問題だ。慣れてないんだから、それくらい余裕を持って操作した方がいい」
俺はゴドウィンに、そう指示を出した。
フェンリルは魔力が豊富なので、こう言った芸当も可能だ。
魔力の無駄遣いといえば無駄遣いではあるが……リスクヘッジや、俺がタイミング調整を気にせず正確なスナイプにのみ集中できるといった点まで考えると、むしろコスパが良い戦略とさえ言える。
そう考えると、たとえこの時代に過去のオーラレールガンが残存していたとしても、それを探さず1から使い捨て用を作ったのは、正解だったと言えるかもしれないな。
……そろそろ、あと30秒か。
俺はクトゥグアが予想通りの軌道を落ちてきているのを確認しつつ、自身の気の操作を始めた。
準備は万端だ。
「……10……9……8……」
俺のカウントダウンと共に、ゴドウィンがオーラレールガンに魔力を流した。
……流石はフェンリルの全力というだけはあるな。全身の気が、オーラレールガンに向かって吸い寄せられそうになる。
俺はそれを最大限に活用できるよう、流れるように体内の気を移動、加速させていくのみ。
そして──
「はあっ!」
掛け声を出し、俺は右手から最大出力の気功波を放った。
約2秒後、上空で派手な大爆発が起こる。
少し遅れて、まるで大太鼓に耳を直にくっつけて本気で叩いたかのような轟音が、地上に轟いた。
聴覚の優れているフェンリルにはかなり堪えるようで、ゴドウィンは耳に防音魔法をかけてしまっている。
LC共振探知でクトゥグアの様子を探ると、クトゥグアの落下はオーラレールガンでほぼ完全に相殺され、空中で静止しているかのようになっていた。
ここから再び自由落下するとなれば……急いで照準を合わせ直せば、クトゥグアが地上に着く前にもう1発はブチ込めるな。
クトゥグアは致命傷を負っているため、次のまでに防御魔法を展開することは不可能だ。
ただそれでも地上の人々にとって脅威となる程度の力は残っているので、次の1撃、ミスは許されない。
素早く、しかし丁寧に照準を合わせ、数秒待つ。
そして、
「10……9……8………………はあっ!」
2発目の気功波を、オーラレールガンで加速させて放った。
再び大爆発と轟音が起きる。
LC共振探知で様子を探ると……うん。今回ので、完全に仕留めたな。
「お疲れさん。クトゥグア、無事討伐完了だ」
そう言ってゴドウィンの方をぽんぽんと叩き、俺はオーラレールガンを収納術でしまった。
その直後。
「……は、速え……」
「何であんなエゲツない兵器がこの学園に置いてあるんだ? 軍のエリート部隊にも、あんなの置いてないだろ……」
「っていうか、今の気弾よね? 私の父さん、軍でも結構優秀な気の使い手なんだけど……あれ父さんの本気を余裕で超えてるじゃない!」
「つかこの学園で気弾使いって……1人しかいないよな」
振り返ると、クラスメイトたちは口をあんぐりと開けたままそんなことを口々に言っている。
まあ確かに、初めて見る人からすれば、オーラレールガンでの攻撃は圧巻だろうな。
だが……なんか話の雲行きが怪しくなってないか?
一瞬、そう懸念した。
しかし、それは杞憂に終わった。
「はいそこまで! この話題は終了!」
そう声をあげたのは、マリカだった。
「黒の覆面更生員ってのはね、正体を見破られたらその立場を失ってしまうの。あの得体の知れない脅威から身を守ってくれた恩を、仇で返す気じゃないよね?」
そう言って、マリカは小さくグーサインをしてきた。
……これは超ファインプレーだな。
さて、騒動も一応収まったことだし、俺は俺で最後の仕事をするとしようか。
間に合わないと、いろいろとまずいことになりかねないしな。
【次回のあらすじ】
次回、クトゥグアの素材回収!
かなり遠方に落下してしまったようですが、果たして他の人に拾われてしまう前に、テーラスのクトゥグア回収は間に合うのか?
お楽しみに!




