第40話 二番弟子、重要な材料の回収に成功する
徐々に徐々に振動は激しくなり、ドスンドスンという音は大きくなる。
間違い無い。
こいつは、ヒュージミミックだ。
そして、この階層に出現するミミックということは……中身は、大量の不安定結晶Xで間違いないな。
「……こんな階層に、我に恐れをなさぬ魔物がいるというのか?」
ゴドウィンが、不思議そうにそう聞いてきた。
「ああ。今やってきている魔物、ヒュージミミックには、そもそも本能という概念が無いからな。格上も格下も判別しない、ただただ無差別に迷宮内の人を襲う機械みたいなものだ」
「なるほどな」
「ところで、だ。ゴドウィン、ヒュージミミックが現れたら、1つやってほしいことがある」
「何だ?」
「極限まで威力を落とした魔法を、ヒュージミミックに対して連射してほしい。吸収阻害はオフで、だ」
「吸収阻害をオフ? ……なるほどな、そういうことか」
俺がゴドウィンに伝えたのは、ヒュージミミックを倒すための作戦──ではない。
どっちかと言えば、倒した後の素材の性質の調整に関わる作戦だ。
ヒュージミミックは、ただ単純に攻撃魔法を放ったとしてもそれを吸収してしまう。
はじめは完全に吸収されるわけではなく、いくらかはちゃんとダメージとして通るのだが……同一の術者が回数を重ねて攻撃すると、だんだんとそれに慣れて吸収効率が上がり、しまいにはその術者からの攻撃を完全に吸収仕切るようになってしまうのだ。
だから通常は、攻撃魔法に魔法吸収阻害の効果を重ねがげして、ヒュージミミックに攻撃する。
……あくまで通常は、な。
今回のように、素材の性質を調整する場合は別だ。
ヒュージミミックのもう一つ重要な性質として、魔法攻撃への適応能力は、素材となった後にも引き継がれるというのがある。
だから、「特定の人物の魔力を効率よく吸収する素材」を獲りたい場合は、その人物に阻害の重ねがけなしで何度もヒュージミミックに攻撃してもらい、ヒュージミミックの適応能力を限界まで引き上げてから倒すのだ。
この時のポイントは、吸収させる魔法の威力は極限まで落とすこと。
ヒュージミミックの吸収能力は、あくまでも攻撃を受けた回数のみに左右されるからな。
わざわざ、敵に必要以上塩を送る理由は無いということだ。
今回、素材調整をしてヒュージミミックを倒すのにはちゃんと理由がある。
オーラレールガンを使う際、加速機構に魔力を流すのはゴドウィンに担当してもらうつもりだが……生物の魔力を直接金属に流すと、どうしてもロスが出てしまうのだ。
そこで、ヒュージミミックの素材を、フェンリルの魔力から金属に流す魔力へとロスレス変換する媒体にしようと思うのだ。
ゴドウィンは、その意図をさっと読み取ってくれた。
それじゃあ、戦おうか。
☆ ☆ ☆
ひときわでかい振動で、俺とゴドウィンは空中に投げ上げられる。
真下を見ると、そこにはヒュージミミックの巨体があった。
それめがけて、ゴドウィンは高速で魔法を乱射し始めた。
……よし、こっちもやることやっていくか。
俺は気功剣に、闇属性魔法を付与する。
そう、透過撃だ。
俺はヒュージミミックを、至る所から実体をなくした剣で貫いていく。
これは、ミミック自体にダメージを与えているわけではない。
今からまともにダメージを与えてしまうと、ゴドウィンが素材調整を終える前に倒してしまうからな。
こうしてヒュージミミックの中身を気功剣越しに探ることで、内臓している不安定結晶Xの量を推定できるのだ。
……うん、豊作だな。
そうこうしているうちにも、ゴドウィンが200発の攻撃魔法を撃ち終える。
「仕上げだ!」
俺はヒュージミミックに、吸収阻害魔法を重ねがけした気炎撃を立て続けに3回喰らわせる。
すると……その数秒後、まるで鍵のかかった宝箱が開くかのようにガチャリと音がして、ミミックが大きく口を開いた。
──討伐完了だな。
俺は、中身の不安定結晶Xごとヒュージミミックを収納術でしまった。
さて、後残りはアダマンタイトを集め……いや、違うな。
俺は自然と笑みを浮かべ、地上に戻ることにした。
【次回のあらすじ】
いよいよオーラレールガン完成!
そして、テーラスは再び、黒の覆面更生員として動くことに──?




